「パシフィック・ヘルス・サミット2007」報告
2007年6月29日(金曜日)
6月12日から14日までシアトルで「パシフィック・ヘルス・サミット」が開催された。私はこのサミットに当初から企画面でも関わってきたので、今年も参加をした。会議は今年で3回目だが、年を追うごとに参加者も増え、情報共有をする仲間も増えてますます盛況になっている。
去年までは会議のテーマは癌の克服や医療情報技術などを中心に多様なテーマが議論されてきたが、今年は伝染病(pandemics)に焦点を絞ってさまざまな角度から議論が行われた。癌の研究や医療情報技術の研究は、医療の進歩のために極めて重要な意義を持つものだが、研究の進展には時間もかかり、息長く腰を据えて進める種類の問題である。
これに対して、伝染病は鳥インフルエンザなどに象徴されるように、急激に広い範囲に被害が及び、多くの人命が失われるだけでなく、経済的な打撃も極めて大きい。この1~2年内に、世界中で鳥インフルエンザなどの伝染病の猛威が荒れ狂ったこともあり、この世界会議で、緊急な課題として伝染病対策を取り上げたわけである。会議を通じて浮かび上がってきた主要点は少なくても三つある。
第一は、国際協力の重要性である。伝染病は国境を問わず急速に伝播するが、情報の伝達や防疫体制の弱いところで被害が増殖する傾向がある。世界中には、経済発展が遅れているために伝染病対策に手が回らない地域がたくさん残されており、そうした弱い部分(fragile)を世界各国やWTOなどの協力で補強する必要があるということである。
第二に、ワクチンの供給である。伝染病対策には決定的な解決策はないが、被害の拡大を抑えるためには、ワクチンが一定の効力を持つ。しかし、ワクチンの製造と提供能力とワクチンを必要とする地域や人々との間には、大きなミスマッチがあり、ワクチンを必要としている人々にワクチンが適切に行き渡るような仕組みと協力関係の構築が必要である。
第三に、情報共有と研究開発である。伝染病対策の第一歩は、伝染病の発生状況や伝播の状況を的確に迅速に掌握することである。状況の報告体制(reporting system)は、国や地域によって大きく異なる。これをしっかり整備する必要がある。また、新しい伝染病の性質を解明し、その予防のためにあるいは治療のために、有効なワクチンやその他の薬剤あるいは治療法の研究が急務である。
以上のような点が重要な課題として浮かび上がったが、それらに共通していえることは、国際協力と国際的信頼の重要性である。今回の「パシフィック・ヘルス・サミット」には、ビルゲイツ財団の他に多くの財団や企業が協賛をし、富士通も協賛企業のひとつとして加わったが、人類共通の敵に立ち向かう上で、国際協力がいかに重要であるかを再認識した会議であった。
