富士通総研

ふるさと納税論

2007年5月22日(火曜日)

ふるさと納税という考え方が政府部内で提起され、各界で論議を呼んでいる。去る5月1日、地方税を統括する立場にある菅義偉総務大臣がパリの出張先で記者会見し、ふるさと納税という税制を創設してもいいのではないかと問題提起をしたのが発端だが、続いて安倍総理大臣がふるさとを大切に思うことはよいことだと述べ、積極的に考えることが望ましいとの立場を示し、塩崎官房長官もその検討は望ましいとし、中川自民党幹事長は寄付税制を含めて地域間の税源格差を縮小する努力は大切との認識を示し、ふるさと納税制をめぐる論議が各方面で関心を呼ぶことになった。

税制の専門家の間では、税理論上この考えは税制に馴染まないという見方が多い。なぜなら、地方税は基本的には応益原則に基づいており、地方政府の行政サービスに対する住民の対価の支払いとされているからである。ふるさと納税は行政サービスに対する直接の対価の支払いではないから、地方税の原則には馴染まないということである。財務省や自民党税調のメンバーの間でも、ふるさと納税は税制の根本に関わることなので、慎重な検討が必要だという意見が強い。

一方、人口減少が続き、地域間の経済格差、そして税源(課税ベース)格差が拡大する傾向がある中で、人口減少や過疎化に悩む地方の税源を増やす何らかの手立てや知恵が必要だという見方に共感する人々も少なくない。ヤフーが早速行った世論調査では、多くの人々がふるさと納税に関心があると答えているが、ふるさととして、第一に自分が育ったところ、第二に将来住みたいところ、第三に親が住んでいるところ、を挙げている。

菅総務大臣は6月から専門家による研究会を立ち上げ、ふるさと納税をどう実現していくかを研究していくとしている。この問題は、伝統的な理論には馴染まないが、これからの社会が直面する重要な課題に答えるために、伝統的な理論の枠組みを越える新たな知恵を生み出すことができるかどうかという重要な問題提起を含んでいる。そうした問題は、税理論に限らず、経済のあり方や企業のあり方など多くの分野で見出される。例えば、市場競争と福祉の関係について、あるいは、企業行動と社会倫理の関係についてなど、伝統的な思考や理論を越える多くの課題に我々は直面している。

ふるさと納税問題をめぐっては、賛否両論が交錯しているが、私たちに求められているのは、高齢化と成熟化の中で資源配分が偏りつつある日本列島で、人々のより高次元の満足をいかに実現するかという柔軟な知恵であるように思う。