マイクロソフト・ガバメントリーダーズフォーラム アジア2007,北京に参加して
2007年4月24日(火曜日)
4月18日から19日にかけて、北京にてマイクロソフト・ガバメントリーダーズフォーラム アジア2007が開催された。私はゲストスピーカーとしてこのフォーラムに招かれたが、色々な意味で大変良い勉強になったので、ここで感想を述べたいと思う。
マイクロソフト社は世界各地でコンピュータソフトをはじめ各種のソリューションを販売し、高いマーケットシェアを達成している。そうした実績を上げるために、世界各地の顧客に深く浸透し、一緒に問題解決をするという戦略を展開している。このITシステムやソリューションのマーケットでは、政府部門が極めて大きな意味を持っている。政府部門自体が大きな顧客であると同時に、政府が作り出す制度や、推進する政策がITマーケットのあり方そのものを大きく規定するからである。
マイクロソフト社は世界各国の市場に浸透するために、従来から各国政府のリーダー達や専門家をアメリカに招いて、ネットワーク作りに注力してきた。しかし数年前から、リーダー達をアメリカに招くよりもむしろ、各国あるいは主要な地域にマイクロソフト社の幹部とスタッフが出かける形で、現地や関連地域のリーダーや専門家を糾合して情報の共有を図ることがより効果的だと考えるようになり、3年前にシンガポール、昨年はインド、そして今年は中国でガバメントリーダーズフォーラム アジアを開くことになったのである。
マイクロソフト社は14年前に初めて中国の首都・北京に研究所を開設したが、今日ではマイクロソフト社の世界における最も有力な研究所に発展している。そこでは基礎研究から最先端の製品開発まで幅広い研究開発が行われ、次々と新しい成果が生み出されている。この研究所は中国の若い研究者に大変人気があり、優れた中国の頭脳が結集している。その意味でマイクロソフト社は中国の人的資源をフルに活用していると同時に、中国の科学技術立国戦略に大きく貢献しているのである。
この会議にはビル・ゲイツ会長はじめ主要な幹部が長時間参加をしたが、ビル・ゲイツ会長が力説したのは、地球上の“次の50億人”にどのようにITの恩恵を行き渡らせるかということである。地球上の65億人のうち、15億人にはITがほぼ行き渡っているが、マイクロソフト社はその市場で9割のシェアを達成している。ということは、この既成のIT市場はマイクロソフト社にとっては既に飽和しているということでもあり、マイクロソフト社が提供するソフトやシステムはある意味で公共財的な基礎インフラの役割を果たしているといえる。
しかしこの市場を超えた50億人にはITの恩恵はまだほとんど届いていない。すなわち“次の50億人”はデジタル・ディバイドの向こう側に取り残された人々である。この50億人にITの恩恵を行き渡らせたいというのがビル・ゲイツ会長の願いであるが、この50億人はこれまでの15億人と違って、生活水準が低いだけでなく、食料も足りず、健康水準も低く、多くの人々が伝染病の危険にも晒され、生存そのものの困難に直面している。また教育も行き届かず、文字が読めず、計算も出来ない人々が多い。
この人々にITの恩恵を届けるには、まず、伝染病や飢餓の恐怖から彼らを救い、教育を授けることが大前提となる。ビル・ゲイツ会長は“次の50億人”のためにまず健康を、そして教育を提供し、その上でITの恩恵を届けたいと熱弁を振るった。今年52歳になるビル・ゲイツ会長は、使命感に満ちて、あたかも18歳の少年が自分の夢と使命を語っているように若々しく見えた。マイクロソフト社はこのビル・ゲイツ会長の基本的な理念と理想に従い、その思いを実現するために世界のリーダー達と情報を共有し、ともに戦略を練り、問題解決のためにともに進もうとしている。そのことがとりわけ印象的だった。
中国政府のリーダー達は異口同音に中国はまだ発展途上段階にあるが、人材資源は極めて豊富であり、その膨大な人材を教育することで、世界の最もイノベーティブなリーダー国になると強調していた。マイクロソフト社が中国のそうした基本戦略を支える重要な存在として中国の経済社会に深々と根を下ろして企業戦略を展開している有様はグローバル企業のあり方としてまことに見事なモデルを示してくれているように見えた。
わが富士通も本体の売り上げ2.9兆円、従業員3.7万人、世界の富士通グループ全体では売り上げ約4.8兆円、従業員16.1万人の世界最大級の企業である。様々な形で富士通も世界市場に浸透しようと努力しているが、マイクロソフト社のこうした戦略も他山の石として大いに勉強すべきであると思う。
