安倍政権の発足その後
2007年2月23日(金曜日)
安倍政権発足から6ヶ月たった。その間に世の中も変化し、いくつか重要な政策も実施されてきているのでこの時点でレビューをしておきたいと思う。
安倍政権が発足して初めての予算編成が行われている。順当に行けば、3月の初め成立すると見込まれている。安倍政権にとって初めての予算通過になる。
2007年度の一般会計総額の予算は82.9兆円だが、その特長は、財政再建型の予算といえる。2006年は景気が良く、景気回復が5年目に入って経済活動が活発になり、税収は53.5兆円に増えた。昨年度の税収の45.9兆円に比較すると、7.6兆も増えた。にもかかわらず、予算額の増加は0.6兆円にとどまった。
新規国債発行額は25兆4,320億円になり、4兆5,410億円削減した。この削減幅は過去最大である。また、2011年にプライマリーバランスを黒字化する目標は小泉政権の時から掲げているが、政府の楽観シナリオでは、このまま成長が加速し、5年後には1年間で3.9%の成長も可能とみている。その場合には、消費税率を上げなくてもプライマリーバランスの黒字化が可能になる。悲観ケースでは、消費税率のアップが必要だ。しかし、いずれにしても2011年に達成することを目標として財政再建型の予算が編成されたといえる。
安倍内閣はいくつかの特徴的な政策で独自色を強調している。教育改革、憲法改正、防衛庁の防衛省昇格、再チャレンジ支援、地域再生、科学技術などである。それらについてそれぞれに予算をつけているが、額そのものは控え目だ。例えば、教育改革では学力調査に66億円、学校評価に8億円程度である。社会保障は自然増で6,000億円を認めているが、一方雇用保険国庫負担は1,800億円削減しており、予算額はできるだけ押さえている。
他方、外交、防衛、憲法改正は基本戦略であり、安倍政権が力を入れている柱だ。中国、韓国と新しい友好関係をすばやく築き上げるなど、これらの面ではこれまで安倍政権はすでにいつくかの主要な成果をあげている。
しかし、国民の支持率、人気はじりじりと下がり続けている。内閣発足当時は71%(日経新聞調査)だったが、1月には39.1%(FNN調査)に下がっている。その背景には、不祥事が立て続けに起きたことがあるようだ。本間正明税調会長による公務員宿舎不正入居問題が発覚、すぐに辞任したが、不適切な人に重要なポストを与えたと首相の任命責任が問われた。また、佐田玄一郎国務大臣は、不正経費問題により辞任している。辞任はしていないが柳澤伯夫厚生労働大臣は、「女性は産む機械」と発言したことで、世論から強い批判を受けている。これらの問題が、参議院選挙を控えている政界では尾を引き続けているといえる。
さらに気になるのは、久間章生防衛大臣が「イラク戦争は間違いだった」と発言したことである。同盟関係によって生命線を維持、世界秩序を守ろうとしている日本国の防衛省の立場として、このような発言をしたことは、日米の同盟関係に不協和音となるおそれがある。2月20~22日にチェイニー副大統領が訪日した際、久間章生防衛大臣とは面談しなかったのも、もっぱらこのことが原因とされている。久間章生防衛大臣の発言は、このままでは今後安倍政権の将来にとってひとつの不安要素につながる懸念がある。
また、官邸の総理任命補佐官の担当分野が重複したりバッティングしたりしているなど、やや混迷していることも問題である。官僚の直接の影響を排除するという方針はいいとしても、逆に官僚を適切に活用し、あるいはコントロールしていない。それは政権の実行力を弱めることにもなる。
予算が成立すると、政界は7月の参議院選挙にシフトした態勢に入る。民主党は選挙をめざして、小沢一郎代表が、彼のかつての持論である自由主義、自己責任型の政策ではなく、旧社会党のような平等主義、政府関与型の政策を 提示している。例えば、農業や子育て支援などにおいての補助金を多額にばらまく、いわば「ばらまき」型の政策を唱えている。そのことが、自民党が選挙基盤を揺るがすのではないかとおびやかされている。選挙の季節になると、選挙民の人気を取るために、本来進めるべき骨太の主張が弱まるおそれがある。7月の参議院選挙では、6年前の小泉政権時に大量に増えた議席の維持は、もちろん容易ではない。多少議席を失うことになっても、衆議院では与党が圧倒的多数を確保しているので、大局観に立って基本戦略を貫くことが重要である。選挙対策に過度に目を奪われることなく大局観から大きな政治をしてもらいたい。
