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安倍政権の100日(9月26日発足。12月末日で100日になる)

2006年12月19日(火曜日)

発足当時にこの欄で感想を書いたが、今年末に100日を迎える安倍政権について多少の評価をしてみたい。安倍政権は発足当時、国民の大きな期待感のもとで高い支持率(63% 9月28日朝日新聞朝刊)を得たが、その後、2ヶ月半で支持率は59%(12月12日朝日新聞朝刊)に低下した。

その大きな原因は、復党問題である。参議院の幹部の強い要請もあって、小泉政権時に郵政民営化法案に反対して除名されたが、9月の衆院選で自力で議席を確保した議員の復党が実現された。しかし国民の間ではその評価は分かれており、安倍総理の明確な指導力が発揮されたようには見えず、支持率の引き下げにつながったとされる。

国民の期待に対して政権がどのように応えているかについて、国民の認識(パーセプション)を表すもので、それなりに重要な指標であるが、政権が何を実行しつつあるかをメディアがどう伝えるかによって大きく左右される。今回は基本的な事実に基づいてコメントしてみたい。

安倍政権は最初の100日間で外交については顕著な成果をあげ、また内政については基本的な方向を打ち出しつつあるといえる。

外交については、政権発足直後に中国と韓国を訪問し首脳会談を実現したことは画期的な成果であった。小泉政権時代は靖国参拝が障害となって首脳会談は実現できなかったが、安倍首相はきわめて短期間に必要な調整を行い日中・日韓を訪問した。それだけでなく北朝鮮が核実験をしたために、核実験を憂慮する日中韓の共通の連帯感を確認するという予想外のおまけもついた。

これらはとりあえず成功といえるが、これを外交と国際戦略上の新しい時代の実質的な成果として結実させるためには、日本の外交戦略の企画と執行体制をどう強化し国際関係での実務的な信頼関係をどう確立するかといった実質的な体制固めが課題になる。12月15日に成立した防衛省法案はその一角をなすものだが、安全保障会議の機能強化や国際的な連携と信頼の確立など課題は多い。ともあれ、政権の初仕事としては外交面では一定の成果をあげたと評価できるだろう。

内政については、安倍政権は教育改革、憲法改正、経済改革と経済成長の推進などをかかげて発足したが、教育改革については12月15日に改正教育基本法を成立させたことは重要な一歩といえるだろう。改正教育基本法については国会でもまた市民レベルでも多大な議論を費やした。市民レベルではタウンミーティングでやらせ問題がメディアで大きくとりあげられ政権への不信がかきたてられたため問題の本質が見失われる傾向があった。旧教育基本法は1947年に制定されたもので義務教育の充実が主な柱であったが、現代の教育行政が抱える課題ははるかに大きく、改正基本法では、大学教育をはじめ、幼児教育・家庭教育・生涯教育など現代の広範囲な課題にわたって基本的考え方を示しており、また愛国心についても明示するなど政府としての必要な取り組みを明示しているものである。教育の憲法ともいわれる法体制がこうした形で整備されたことは評価されるべきである。

経済改革の目玉として安倍政権が掲げたテーマのひとつが、道路特定財源の一般財源化であった。特定財源の8割を占めるのが揮発油税であるが、安倍総理は経済財政諮問会議で揮発油税も含め一般会計化することを検討せよと指示した。これは大田経済財政相の強い進言によるものとされるが、このことが道路族や道路に携わる産業界など各方面から強い反発を呼んだ結果、今国会ではその点を具体的に明示せず、一般財源化を検討するとして一応決着をつけた。形式的には道路財源制度が作られてから約50年間手がつけられなかった一般財源化問題の道筋をつけたという意味で評価できるが、実質的には問題の本質を先送りした玉虫色の決着でもあり、改革の成果としては評価が分かれるところだろう。

安倍政権の経済戦略の最大の特徴は、「上げ潮」戦略とも言われる経済成長優先戦略である。経済成長を推進するため企業に対しては減価償却や技術革新を促進する税制や、イノベーション促進のプログラム策定など様々な政策が着手されることになった。折しも最近の企業業績の好調により、税収が大幅に増えて2006年度の税収は当初見込みよりも数兆円多い53兆円に達すると見込まれるため、国債発行を大幅に減額することが可能となり、財政のプライマリーバランスの達成を前倒しする可能性が出てくるなど、上げ潮戦略に顕著(tangible)な手がかりが見え始めた。小泉政権以来の経済成長というフォローの風の幸運があるにせよ、安倍政権の強調する成長優先政策は順調な滑り出しを見せていると言える。

以上を総合すると、安倍政権の100日は支持率の低下現象が言われる中で、現実には当初に掲げてた基本戦略をそれなりに着実に実行しつつある姿が浮かび上がってくる。小泉政権時代のように小泉首相という希有の政治家の特異なリーダーシップによる一般国民への明確なメッセージが伝えにくいというきらいがあるものの、現実には一定の成果をあげつつあると評価してよいだろう。

問題は、政権の掲げる基本戦略を確実にかつ効果的に実行し、その成果をあげていく執行体制が充分に機能するかどうかがこれからの課題であるように思われる。ひとつは、官邸の補佐官制度である。複数の補佐官が経済活性化についてそれぞれの担当分野を持っているが、それぞれ政治家なのでそれなりの成果をあげる必要があり、戦略が全体として整合的に進むかどうか課題がありそうだ。経済財政諮問会議は本来、効果的経済戦略の司令塔としての役割を果たすことが期待されるが、そうした役割が効果的に果たされるか否かは、会議の舵取りをする大田経済財政相に安倍総理の強力かつ完全な後ろ盾が保証されるか否かにかかっているように思う。また、外交面では、小池百合子補佐官が担当する「国家安全保障会議」(日本版NSC)が世界主要国の国家安全保障機関と対等な実力を持って機密情報を共有しながら機能するように実力を蓄積できるかどうかも大きな課題である。

100日以降の安倍政権のこれからの推移を注意深く見守っていきたいと思う。