富士通総研

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人口減少下の地域活性化策

2006年11月14日(火曜日)

日本経済は、緩やかながら新たな成長時代ともいうべき長期の景気回復を続けているが、地域的には大きな格差が見られる。東京など大都市部は経済活動が活発で、愛知などトヨタのような有力企業があるところでは厳しい人手不足にさえなっている。これに比べ、北海道や東北、北陸、山陰、四国、南九州などの地域では、経済活動も停滞気味であり、労働市場では求人倍率も低く、所得水準も低い。こうした格差の背景には、昨年から始まった人口減少傾向が大きな影を落とし始めているといえる。これらの地域では経済活動が低迷しているだけでなく、仕事を求めて若い男性が東京や名古屋などに移動するため結婚も減少し、子供も産まれないという悪循環すら生じている。

今年、富士通総研は創立20周年をむかえた。それを記念して、富士通総研は地域の団体と共催で記念講演会などを行っている。

11月2日は、札幌で北海道観光ボランティア連絡協議会を協賛してシンポジウムが開催された。

私は、富士通総研経済研究所理事長・北海道顧問と して基調講演をさせていただき、シンポジウムの後、札幌市から1時間ほど南下した海岸にある伊達市を訪ねることにした。伊達市は人口減少社会の中で、市と市民の工夫で、魅力ある町づくりをすすめ、地域活性化のモデルともいえる実績を示しつつある街である。今回は伊達市の工夫とその意味について紹介することにしたい。

伊達市は、北海道の中で比較的気候が温暖で降雪も少なく、高齢者が住みやすい街として知られている。近年、市長と市役所、信用金庫、商工会議所、そして一般市民の工夫と努力で生活者にとって魅力ある町づくりをすすめており、北海道のみならず全国的に関心の高まっている街である。人口は約3万7,000人、市街地区に多くの人口が集中しており、周辺の広大な丘陵部に農家が点在する田園都市である。近年、生活者にとって魅力ある街ということで、流出人口を上回る流入人口があり、過去3年間で1,000人純増し、この数年のデフレのもとでも住宅地の地価上昇率が全国でも1位もしくは2位を続けてきた。

この数年間、伊達市は生活産業と生活サービスを整えるための勉強を続けており、平成14年1月に官民協働組織「伊達ウェルシーランド(Wealthy Land)構想プロジェクト研究会」を発足させ、さまざまなプロジェクトの研究を行って来た。さらには、平成16年5月に研究会を解散、「豊かなまち創出協議会」を再編し、構想の事業化に向けて活動している。

「豊かなまち創出協議会」では、4つの事業を推進している。

1. 安心ハウス

補助金のない民間版のケアつき住宅で、2006年の春に2棟が建ち、これまでに7割ほどの入居者になり現在 も増加中である。これは厳しい財源難で公的資金による高齢者施設建設が次第に困難になる中で、民間の工夫と活力を利用した未来型の高齢者ケア住宅である。

2. ライフモビリティーサービス

タクシー料金、もしくは乗り合いの場合にはそれよりはるかに安い料金で、自家用車に準ずるサービスを提供する仕組みであり、これは私が小泉総理の顧問であった時に政府に提案し国土交通省が実証実験をし、伊達市がより本格的に推進しているものである。伊達市は当初2台の乗り合い自動車を使って実証したが、市民のニーズが高いことがわかり、地元のタクシー会社が10数台の車を使って事業として本格化した。(伊達商工会議所が事業主体。運行は地元タクシー会社2社に委託。11月15日から稼働。名称「愛のりタクシー」)現在は60歳以上のお年寄りに限定したサービスを提供しており、このサービスがあるために、お年寄りが以前よりも喜んで街に出るようになったという。

3. 優良田園住宅

市街区に隣接する農地を優良な住宅地に整備し、人々に提供しようとする計画であり、国土交通省の特例に則った企画だが、伊達市は外部からの居住者が増えることが見込まれるので、現在90棟ほどの具体的なプロジェクトが進行している。(現在区画申請中、着工は来年春頃から。53区画前後の販売を予定。)

4. 市民への生活情報の提供

安心ハウス、ライフモビリティ、優良田園住宅を始め、商店街やその他さまざまな生活サービスを便利な形で編集してWEBや地域のケーブルテレビなどのメディアを通じて市民に対して密度の高い情報を提供する活動である。そのためのコンテンツ製作、アップデート作業のための株式会社が設立され、若いスタッフが熱意を持って働いている。市のコミュニティはこの 事業を黒字にするための様々な応援があり、今年から黒字化することになり、その活動には拍車がかかった。

以上のような、生活者のための様々な事業は相互補完的であり、相乗効果をもって、伊達市の魅力を高めることに貢献している。その成果が様々な形で人々の周知するところとなり、一人でも多くの人が伊達市を訪れ、その魅力に触れる機会になることだろう。

人口減少が深刻なメガトレンドとして影を落とす日本各地の地域経済にとって、公の財源に頼らず、市民の工夫と努力が実った伊達市のような経験は、多くの自治体や地域にとって、希望に満ちた参考例になるに違いない。伊達市の実験が益々成功し、全国に波及していくことを願ってやまない。