富士通総研

  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. 島田前理事長メッセージ >
  4. 2006年9月 >
  5. 変化する国際社会の中での富士通の役割

変化する国際社会の中での富士通の役割

2006年9月27日(水曜日)

9月22日に、富士通の沼津・富士フォーラムで、富士通の新任役員のみなさんと「変化する国際社会の中で富士通は、どのように対応していったらいいのか」についてディスカッションする機会があった。そのディスカッションの中に有益なポイントがいくつかあったので、この場を借りて紹介したいと思う。  ディスカッションは、まず私の問題提起から始まった。私は、以下のような点を問題提起した。

1.富士通のような大きな企業にとって、これからの成長の余地は、ほとんど全て海外市場に求める以外にない

日本経済は、既に長期的な人口減少局面に入っており、一定の生産性向上は見込まれるとしても、日本経済全体の市場規模が大きく拡大することは見込めないし、縮小していくことも考えられる。これに対して、企業が存続していくためには成長が不可欠であり、富士通のような大企業が成長するためには、必然的にその成長の余地は、海外に求めざるを得ない。その意味で、富士通の国際戦略を、国内戦略と分けて考えることは意味がなく、グローバル戦略そのものが富士通全体の将来の存続の鍵を握ることになる。

2.内外の主要企業の国際展開について

日本の主要企業も、また先進諸国の主要企業も、同様な立場に置かれており、近年急速に海外活動の比重が高まっている。例えば、トヨタ自動車の外部顧客売上高の海外が占める比率は、63.2%、旭硝子の地域別売上高で海外が占める割合は、43.9%、東芝は、46.7%、であり、韓国のサムソンは実に80.3%の売り上げが海外である。ものづくり企業の海外戦略の基本は、QPD(クオリティ&プライス&デリバリー)である。これが優れていれば、国際競争力を持ち、世界市場に浸透することが出来る。これに対して富士通のようなソリューション提供が重要な柱になっている企業は、ものづくり企業の、QPDを越える戦略が必要である。

システムやソリューションは、多くの場合、社会の制度、政府の政策、企業の戦略と深く関わっており、市場に浸透するためには、制度改革、政策形成、戦略構築について、初めの段階から、深く浸透してアイデアを提供できる地位を確保することが、不可欠である。

そうした浸透を外国から参入した企業が行うことは、容易ではなく、実践的には、そうした分野に人脈やノウハウを持っている現地企業や、現地の人材と、戦略的なアライアンスを組んで浸透することが適切である。富士通も英国においは、そうした背景を持つICLへの資本参加や子会社化を通じ、政府関連の受注に成功した経緯があり、これからは、世界各国でそうした戦略を機動的に進める必要がある。

3.戦略推進を担う人材

適切なアライアンスを組み事業を推進する上で、鍵を握るのは、人材である。富士通の国際展開を進める上で、進出先の国々の政策形成や企業戦略の構築にまで深く関われる能力のある人材を富士通で形成する必要があり、また、進出先の国々で産業界の中枢で活躍できる資質のある人材を採用し、あるいはそうした人材とアライアンスを組む必要がある。  日本IBMの基礎を築いた椎名武雄氏は、日本の経済界の中枢で指導的役割を果たした。その事が日本IBMの日本市場での地位を確固たるものにする上で極めて重要であった事は明らかである。このように、進出先の国々での産業界で中枢の役割を果たせるような人材を富士通がどのように採用することができるかが課題である。

4.企業の社会的認知と評価について

ソリューション提供型の会社にとっては、その製品が目に見えないものであるだけに、会社の社会的認知度や、名声、信用が、営業を展開するうえで重要な役割を果たす。富士通のように、世界で4.7兆円の売り上げ、15.8万人もの従業員をかかえる企業にとっては、とりわけ、世界各国での認知度や品格の評価が、重要である。そのためには、目先のビジネス問題だけでなく、世界各国や世界全体で、人々が抱えている問題に対して、その解決のために努力をする、あるいは貢献をする企業であるというイメージの構築が、戦略的重要性を帯びる。

こうしたこれらの問題提起に対して、新任役員のみなさんは、高い関心を示し、とりわけ世界各国の事業展開の担当役員は、自分のおかれた状況を踏まえながら、何ができるか、何をしなくてはならないかについて活発な討議を行った。富士通は、近年の紆余曲折を経て、今年から本格的に世界展開の戦略的推進に取り掛かっており、それを支える人々とこうした論点について建設的意見交換ができたことは有益であった。