富士通総研

  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. 島田前理事長メッセージ >
  4. 2006年7月 >
  5. 第1回サービス・イノベーション・ワークショップを終えて

第1回サービス・イノベーション・ワークショップを終えて

2006年7月11日(火曜日)

7月6日に富士通総研でサービス・イノベーションのワークショップが行われた。このワークショップは、これまで当研究所のサービス・イノベーション研究チームが、3ヶ月ほど研究を進めてきた成果を、外部の専門家の方々の前で発表し、コメントや批判をいただいて、さらに次の発展に繋げようという趣旨である。亀岡秋男先生(北陸先端科学技術大学院大)をはじめ、研究部門、企業、富士通関係者、外部の専門家等、合計約50人をお招きした。我々は、このような形式のワークショップを数カ月おきに適宜開催して、外部の方々の批判や提案を吸収しながら研究を進め、研究の質を高めていこうと考えている。

今回のワークショップでは、5つの研究発表を行った。一つ目は、安部忠彦研究主幹による発表であり、研究全体の枠組みとエビデンス・ベースド・サービスについての仮説提示であった。2つ目は、長島直樹上席主任研究員による「娯楽サービスの科学」であり、ディズニー・リゾートの事例をもとに、シニア層の娯楽分野への関心とコンテンツ創出についての研究であった。3つ目は、浜屋敏主任研究員による「共同イノベーション・プラットフォームとしてのCGM」であり、CGMがイノベーション発生・発展のプラットフォームとなりえることについての提示であった。4つ目は、木村達也主任研究員による「物流・商流におけるイノベーション」であり、ケーススタディに基づいて、サービス・プロダクトはICT等設備のシステム化によって、サービス・デリバリーは組織のシステム化によってイノベーションが促進されるという分析をケーススタディから示した。5つ目は、峰滝和典主任研究員・吉田倫子上級研究員による共同研究「情報技術革新の進展が生み出すサービス・イノベーション」であり、ブログやSNSが、社員間のコミュニケーションを活発化させ、異なるドメインの知識の融合によるイノベーションについて発表を行った。

これらの研究発表を通じ、参加者の皆様から大変有益なコメントをいただいたので、その要点を摘記してみたい。

コメントには大きく分けて3つのまとまった意見があったように思う。

(1)サービス・イノベーションの根本概念ないしは共通理念をどう考えるか

  • 「5つの研究は一見相互に関連が無いばらばらな研究発表に見えるが、各研究者が、おのおのの研究の違いがどこにあるかを明確に意識するとよい」(大学教授)

というコメントがあったが、違いを意識することを通じて真の共通概念は何かを探る糸口になるとも考えられる。また、

  • 「サービス・イノベーションに関する多様な研究を総合するには、メタ知識とそれにふさわしい方法論が必要」(研究所所長)
  • 「一見ばらばらな研究でもサービス・イノベーションという共通テーマを意識し続けることには価値がある。とりわけ、経済学だけでなく、人間科学や、サービスの価値を明示する会計手法などの開発に繋がる可能性がある」(電機企業専門家)
  • 「サービス・イノベーションという広く多様な研究領域の研究者が総合的に交流する場が必要」(研究所所長)

といった、意見があり、サービス研究を支える広く深く基本的な知識体系の構築の必要性が異口同音に強調されたように思う。

(2)情報の粘着性について

  • 「5つの研究の中で、割合面白い共通のサブ概念として、情報の粘着性概念があった。」
  • 「粘着性のある情報と組織の設計等適切に組み合わせることで、組織の生産性を上げることができる」という分析は、供給側の組織内での情報交換の議論であるが、情報の粘着性を情報の提供側と受け入れ側との間で考察する視野も必要」(企業専門家)

このようなコメントがあったが、CGMでは、情報の受け手側での定型化されていないやや粘着性のある情報の遣り取りが注目される。
情報の受け手側でのより粘着性の高い情報の吸収については、教育・医療サービスやコンサルティングサービスなどがより深い例を提供できるように思う。

(3)サービス・イノベーションのような基礎研究は、実際の情報ビジネスではどう使えるか

  • 「5つの研究のような研究の成果を実際のビジネスにどう生かせるかというと、そこには、まだ大きな距離がある」(IT会社役員)

このコメントについては、確かにサービス・イノベーション研究が追求する基礎的概念や知識体系の構築は、そのままで日々のビジネスや営業に役立つわけではない。むしろ、日々の営業やビジネスに携わる人々が、そうした基礎研究で追求しようとしている重要な概念や理論体系があることを認識する重要さにおいて、激動の時代に生きる企業人の進化力や適応力という意味で価値があるのではないかと思う。