シアトルでのPacific Health Summitに参加して
2006年6月30日(金曜日)
6月20日から22日までの3日間、シアトルでパシフィック・ヘルスサミット(太平洋健康会議)が開かれた。これはビル・ゲイツ財団が中心になって、フレッド・ハッシンソン・キャンサー・リサーチ・センター(FRED HUTCHINSON CANCER RESEARCH CENTER)や、マイクロソフト、インテル、コカ・コーラ、富士通等、財団や企業の専門家が集まって開催された、今後ますます大きな問題になると考えられているガンの早期発見・早期治療の技術や制度、取り組み方を開発しようという国際的な会議である。
私は、去年の初回の企画時から相談を受け、2005年6月の第1回大会に参加した。これからの世界人類が直面する最大の課題に取り組んでいこうという意義が非常にあると感じたので、富士通にも是非参加してもらうよう、秋草会長を初め、いろいろな方々に相談し、世界的なIT会社であるマイクロソフト、IBMやインテル等の企業と肩を並べ、富士通の参加が実現した。
なぜ世界的にIT企業が医療問題に取り組んでいるのだろうか。 世界の医療はポスト・ゲノム段階に入ったといわれている。セレーラ・ジェノミックス社が、クリントン政権時にゲノム解読をはじめ、10年前に解読を終えた。一人の人間の32億ペア(塩基)の解読が終わり、今はそれらを効率化し利用する段階になっている。その32億ペアの解読をするためには、1,000億円オーダーの費用がかかっている。ところが、その後の情報技術の発展はすさまじいものであり、あと数年もすれば、一人あたり1,000ドル程度でその人の持っている情報の解読をすることができるようになるという。1,000ドルで出来るとなると、国民全体の解読も実現できそうである。ゲノムの解読が完了すると、人が生涯でかかる病気の可能性も6割くらいは分かるようになるとされる。ポスト・ゲノムの時代の医療がどうなるかもふまえて、ビル・ゲイツ財団が世界に声をかけて始めた意義も理解できる。
第二年目のシアトル会議に先立ち、4月に東京会議を行った(それについては2006年4月14日のメッセージで紹介した)。これは、本会議の間に各地・各グループで開催されるもののひとつである。この東京会議は、富士通が主に支え、HIT(健康管理情報)を中心に議論が行われた。アメリカでは、フレッド・ハッシンソン・キャンサー・リサーチ・センターの会長であり理事長でもあるリー・ハートウェル(ノーベル賞受賞者)が、サブ・グループにおいて、ガンのバイオマーカーの研究を進めている。他にもいくつかサブ・テーマの研究が行われている。
このような蓄積をふまえて、シアトル会議では、5つのプレナリー・セッションと、ブレイクアウト・セッションならびにグループ・セッションに分かれて議論を行った。
初日である21日の全体会議では、”How do we pay for a healthier tomorrow?”、”How do we prepare for (and survive) the next killer pandemic?”というテーマで議論が行われた。ブレイクアウト・セッションでは、早期発見のための複合指標を国際的にどうやってつくるか(Early Health Index)、肥満にどう対応するか、等のテーマについて話し合われた。また、例えば、途上国では依然として伝染病が猛威を振るっており、インフルエンザでも年間数千人が亡くなっている。HIVでの死者が多いことは言うまでもない。これらに対するワクチンの問題は、重大である。当社の根津専務は、”Pandemic Preparedness and Health Information Technology and Policy Workgroup Breakout Sessionの議長を務めた。
22日の全体会議は、科学と政策をどう融合させるか(Vaccines—How to bridge science and policy?)というテーマでの議論が行われ、また、Breakout Sessionでは、”Lost in translation”、”Age Tsumami”、”East Meets West”などのテーマの下、医療科学の発展をどうやって実用に向けてゆくか、高齢化にどうやって対応するか、という問題が話し合われた。私は、”East Meets West”のディスカッションリーダとしてこのテーマの問題提起をした。
昨年は、第1回目の初顔合わせということもあり、まずお互いを知り合うことがメインだったが、二年目では世界中で分科会も行われてきており、お互いに気心もわかってきたので、相互理解も進み、率直でより深い議論ができたように思う。
この会議は、2008年まで続くが、年を追って着実に進歩があるという期待感がある。テーマも絞られた専門家の集まりであり、人数も200人程度という適当な数なので、実質的で建設的な議論が出来ると感じる。FRIとしては、日本に関係する人々(外国人も含め)インフォーマルな人的ネットワークを形成し、成果を高めようと考えている。また、インフォーマルな議論の進捗についても、機会があればホーム・ページで報告したいと思っている。
