KTIV(川崎・多摩川イノベーションバレー)構想について
2006年6月6日(火曜日)
今回は、「川崎・多摩川イノベーションバレー(KTIV)」について考えてみたい。
川崎・多摩川の沿岸には、様々な企業、研究所等の研究開発拠点が集積しており、それらの相乗効果を活かし、次世代のイノベーションのグローバル拠点にしようとする試みがある。この地域は、味の素、キャノン、富士通等、最近はハイテク企業の拠点となっているが、かつては重化学工業が盛んで、戦後数十年間は工業輸出立国日本を支える京浜工業地帯と言われていた。重化学工業を中心としてそれを支える膨大な中小企業群があった。それが輸出立国を支える産業構造として、たくましく成長した。
しかし、近年、川崎市では、日本が高齢成熟化国になりつつあること、また、日本が輸出立国ではなくなり、世界の工場が中国へシフトして輸出を支える基盤が小さくなるというメガトレンドの下で、このままでは川崎市の産業は衰退せざるを得ない。他方、高齢成熟国になりつつある日本では、健康へのニーズがきわめて大きくなってきている。
川崎市は、これまでに蓄積した中小企業の生産能力を、これからの社会が求める「生活ニーズ」へつなげられないかと考えた。そこで、「福祉産業」に注目したのである。福祉は通常の考えでは、産業とは対極に位置するものである。もともと、恵まれない人々に対して生活を支えるサービスを提供するものが福祉と考えられてきた。川崎の阿部市長は、それを逆転の発想で、ビジネスないし産業として考えてはどうかという見方を提起したのである。
なぜ福祉が産業になり得るのだろうか。福祉の重要な要素は、例えば健康づくり支援である。医療、介護等のコンテンツがある。優れた福祉サービスを支えるためには、優れたテクノロジーを利用した治療、介護サービス、また介護器具(車椅子等)の開発、あるいは家の中の安全システムが必要になってくる。さらに、食品やスポーツなども関わってくる。そして、これらは実はすべて商品になるのである。川崎に競争力のある商品開発と生産の集積があれば、今後世界中が高齢化社会を迎える中で、世界に供給する拠点になる。産業という形で支援できるKTIVを構築し、集積の拠点にしよう、というのである。
KTIVには、すでに味の素が400億円規模の拠点を抱えており、キャノンは、基礎研究を進めているなど、たくさんの集積がある。また、富士通は、最強の健康データシステムのノウハウを持っており、また開発している。そういう集積の中で、画期的な高度医療施設をこの度KTIVに誘致しようとする動きである。その高度医療拠点が前回のメッセージで述べたTeamNETであり、東京ベイメディカル構想である。
東京ベイメディカル構想というのは、東京湾を中心とした構想であり、構想当初はお台場で展開することを意識していたが、場所が入手困難があり、最近は川崎の殿町に焦点が移っている。
東京の地図を広げ、東京湾を見てみると、地図上では、羽田空港が、東京湾の先端に位置している。羽田空港に拠点ができたとしても、東京ベイ構想を軸としているといえる。この地域の強みは、全国各地からアクセスしやすいという点にある。各都道府県の空港から羽田空港まで1、2時間でアクセスできる。日本の中心になるし、交通の中心である。重粒子線治療を受け、手術をしないで治癒したい人々は大勢いる。そういう人々がアクセスしやすい。また、やがて、羽田空港から川崎市へ橋を架ける計画もすすんでいる。飛行機を降りて、15分程度でKTIVに到着し、治療を受けることができる。また、アジア拠点にもアクセスしやすく、今後、空港に新しい滑走路も出来ることになっている。
KTIVが、世界的な高齢成熟社会へのメガトレンドを踏まえた、優れた健康増進開発拠点になれば、世界で有力なセンターとして発展する可能性があるし、これが多くの健康を求める人々に救いをもたらすと期待できる。
産業でもあり人々の幸せを促進するこの構想が早期に実現することを祈りたい。
