富士通総研

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東京地域チーム医療推進協議会(TeamNET)

2006年6月6日(火曜日)

今回は、「東京地域チーム医療推進協議会」、いわゆる「Team NET」の紹介をしたいと思う。
これは、一般市民の保健・医療・福祉の増進、医療分野を対象とした情報化社会の発展と科学技術の振興を図り、公益の増進に寄与することを目的として提唱された共同体型のコンソーシアムである。2002年6月に、電子カルテ情報の共有スキームを研究する「東京ベイ・メディカルフロンティア研究会」をベースに、2004年に、経営主体の相違を超えて、患者、市民の視点で地域チーム医療を推進する組織とし、NPO法人として発足したものである。

財団法人癌研究会有明病院の院長である武藤徹一郎氏を理事長とし、理事会のメンバーには、開原成允氏(学校法人国際医療福祉大学大学院長、副学長、東京大学名誉教授)、高島章氏(富士通株式会社、取締役副会長)、阿曽沼元博氏(学校法人国際医療福祉大学、国際医療福祉総合研究所教授)、松山幸弘氏(医療法人社団誠仁会、専務理事)らが参加しており、独立行政法人、大学病院、医療法人、民間企業など、関東全域の主要な大学がこのネットワークに関わっている。

この協議会の要点は2つある。まず1つ目は、「広域チーム医療」という考え方である。これは、国立病院や私立病院、診療所、健康施設、保健所など、多くの人々が医療・健康に関して利用する様々な施設が地域に多く存在しているが、それらを、人々が使いやすいようにワン・ストップでサービスが受けられるようなネットワークを形成するというものである。

カルテ情報の共有、ある1箇所で診療してもらった情報を、データバンクで管理して、どこか他の施設でも共通で利用できるようにすれば、必要なときに必要な情報を取り出すことが出来る。また、地域の様々な医療機関や施設が協力することで、人々が進んだ総合的医療サービスを受けることができるが、それらはいずれも、シームレスで、情報ネットワークによって可能になる。また、構想とシステムを支援する多くの病院、さらにそれを支援する企業などの理解と参加が重要である。

2つ目は、高度医療施設の共同利用構想である。この構想の柱は、がん治療である。がん治療の施設は、主に、重粒子線による治療と免疫細胞治療であるが、この2つを兼ね備えたものを共同で効率的に利用するというものである。

重粒子線医療とは、放射線医療の一種である。ガン治療には、薬物療法として予防薬を飲む方法と、手術で幹部を切除する方法、切除はしないで放射線で治療するなどの方法がある。重粒子線は、放射線が体に入ると、皮膚や皮下組織がやられる従来の放射線治療とは異なり正常な細胞が破壊されるということがなく、体内に入射した重粒子線は、ある深さまではあまりエネルギーを与えずに速い速度でかけぬけ、ターゲットにのみ、ピンポイントで爆発的な効果を発するのである。いわば、見えないメスで切り取ったような感じである。これが、がん治療において、外科手術に匹敵する治療法であるということで、外科医の権威の方々が支援することになった。これは非常に画期的なことであり、そうした施設を共同利用するという、重要な構想である。

重粒子線医療による治療費は、1人1件あたり約300万円と安くはない。しかし、外科手術による治療では、手術後は半年から1年間くらいの療養を要する。それを考えると、1度の治療で、金額は多少かかるが、手術の結果として楽であると言える。重粒子線医療が受けられる施設は、現在日本に数箇所あり、放射線医学総合研究所(放医研)、群馬大学、国立がんセンター等がある。TeamNETは、これを民間の力でやろうとするものである。

事業化として具体的な計画づくりが着手され、資金調達等の検討も行われている。施設の建設には重粒子線関連で150億円、細胞治療関連で50~60億円かかるが、重粒子線治療施設については、年間1000人の患者があれば、10年程度で償却ができるだろう。もともとは、東京湾のお台場に施設を作ろうという努力が進められてきたが、土地利用の条件が合わず、他の地域を探していたところ、最近川崎の殿町が候補に上がってきたとのことであり、かつてのいすゞ自動車工場の空き地のある羽田空港の川向いの神奈川県川崎市殿町に設置するという動きが持ち上がっている。これが「川崎・多摩川イノベーションバレー(KTIV)」の形成に結びついている。

例えば、放医研は非常に優秀な機関であるが、研究施設であるため、土日の診療はなされておらず、費用も莫大にかかっている。民間ではこのような運営は無理である。民間でやる施設は、例えば朝の9時から夜中までやるなどあくまで顧客本位のビジネスモデルで稼働率を高めようとしている。

重粒子線治療の技術は日本発であるが、米国・中国も興味を持って開発を進めている。あと数年で諸外国においてもこのような施設ができる可能性があるが、そうなる前に、早く日本で先端的なものが作れないかと思っている。

この施設が川崎のKTIVに立地されるとどうなるか、次回のメッセージで触れてみたい。