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中央青山問題とその意味について

2006年5月19日(金曜日)

中央青山監査法人が、金融庁から、7月1日から2ヶ月間の業務停止命令を受けた。中央青山は日本の四大監査法人の一つであり、約2300社ほどの法定監査先を抱えている。2ヶ月間の業務停止は、中央青山の顧客企業にとって、その間、監査業務の空白が生まれる恐れが大きい。

企業監査は、毎月の監査業務を積み重ねて1年間の企業活動の監査をすることになっている。2ヶ月の空白は、監査業務が正常に行われない状況を意味し、投資家から見れば、そうした空白期間を含んだ監査結果には十分な信頼性を置き難いという難点がある。したがって、金融庁のこの措置は、中央青山の監査を受けている多くの企業の監査の信頼性が損なわれかねないという点で、日本の資本市場に大きな影響をもたらす。

金融庁の業務停止命令が発表されてから、東京証券取引所での多くの企業の株価が一週間にわたって下がり続けているが、その原因は単一ではないにせよ、中央青山事件が多くの個人投資家にマイナスの心理的影響をもたらしていることは否定できないようである。

今日の日本経済は、資本市場の整備という意味で、極めて大きな転換点を迎えており、今回の事件は、その転換の意味を考える上で重要な示唆を含んでいる。転換とは、日本経済の歴史的発展にそった、間接金融から直接金融への企業金融のあり方の転換である。

銀行を仲介者とした間接金融の時代には、企業は、銀行に対して十分な情報開示をすればよく、一般投資家に対しては、それほど詳細な情報開示をする必要はなかった。しかし、日本経済が先進経済として成熟化するにともない、金融のベースが、投資家から企業への直接金融に移りつつあり、そうした状況下では、企業は、投資家に対して十分な情報開示し、透明性を高め、説明責任を果たす必要がある。2006年5月1日から施行された会社法体系の基本的趣旨は、企業の透明性担保と説明責任の義務付けにある。

そうした大きな流れの中で、企業監査のあり方は透明性と説明責任を担保する上で、ますます大きな役割を占める。この事件は、不正な監査による信用の毀損が、いかに深刻な状況を資本市場にもたらすかを如実にあらわしたものである。

さらに言うならば、日本は、高齢化が急速に進展し、その結果、家計貯蓄率の低下が目立っている。潤沢な家計貯蓄は、これまでの日本経済の発展を支えた最大の源泉であり、さらに昨今の政府の財政赤字をも支えた最大の資源であった。それが、縮小するということは、日本はやがてそれを補う大量の資本を、海外からの供給に仰がなければならない状況が来ることを示している。

そこで求められる資本とは、短期の投機的資本ではなく、長期の直接投資の資本である。長期的視野にたった直接投資の資本は、M&Aの形で導入されることが多いが、M&Aのメリットは、日本経済の資源をより有効に活用できる優れた経営が、企業の資源を取得するということである。日本人経営者であっても外国人の経営者であっても、それが優れた経営であれば、資源の有効活用が促進されるという点で歓迎されるべきことである。そうした資源の有効活用を促進するためにも、資本市場は、透明で信頼性に富み、円滑に運営されなくてはならない。

今回の中央青山不祥事は、私どもにとって大きな教訓を投げかけていると言える。高齢社会を迎えた日本が、限られた資源を最大限有効活用してゆくために、どのようにして効率的で信頼できる資本市場を構築し、どのようにして透明で説明責任のある経営のあり方を確保するか、我々は今、重大な学習の過程にある。