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サービス・イノベーション研究についての中間報告

2006年4月21日(金曜日)

かねてより、この欄で、富士通総研経済研究所で我々が進めているサービス・イノベーションについて報告をしている。前回は、サービスのもっとも本質的な行為は、主体と主体との情報伝達にあるのではないかという考え方を提示した。今回は、そのように考えると、実は、主体行動を「ものづくり」とか「サービス」とかに分けること自体にあまり意味は無く、ものづくりにおいても主体間の情報の伝達は、もっとも重要な活動であるので、それをサービスということも可能であり、逆にあえてものづくりとサービスを区別する必要もないのではないかという見方を提示したい。

そうした考え方を根底に置きながらやや具体的にサービスのあり方とそのイノベーションについて考えてみると、たとえば、以下のようなことが言えるのではないかと思う。

1.プロダクト・イノベーションとプロセス・イノベーションという伝統的区分について

日本では伝統的にものづくりにおいてプロセス・イノベーションは得意だがプロダクト・イノベーションは不得手である、あるいは、プロダクト・イノベーションは欧米諸国が進んでおり、それを学ぶべきである、といった議論が行われてきたが、ものづくりにおける「情報伝達とイノベーションのあり方」という本質に立ち返ってみると、プロダクト・イノベーションとプロセス・イノベーションを区別することは、あまり意味が無い。

重要なことは、主体間であるいは組織間で情報がどのように伝達されるか、その情報の伝達がいかに効率的効果的に改善されるかということがイノベーションであるということであるという定義である。そうすると、ものづくりとサービスの区分、あるいはプロダクト・イノベーションとプロセス・イノベーションといった区分を超える。もっと本質的な行為のイノベーションを解明することが何よりも重要であることが見えてくる。

2.消費と消費者行動について

サービスは、それを求める消費者の需要があって具現化する。消費者の欲求が変わればサービスのあり方も変わらざるを得ない。従って、サービス研究の重要な課題は、消費者が何を求めているかを知ること、すなわち、消費者の「ウォンツ」を探り出すことである。

ここで、消費者のニーズとウォンツを区別して考える必要がある。ニーズは具体的な製品やサービスについての需要であるが、ウォンツは、具体的な製品やサービスでとらえられない、あるいは表現しきれない消費者の思いや願望などを差す。言い換えれば、ニーズが顕在的需要であるのに対し、ウォンツは潜在的需要であるということが出来る。

サービスのイノベーションを規定する重要な根源は、消費者が具体的なかたちで表現することが出来ないこの「ウォンツ」を具体的な商品に翻訳して事業化することにある。サービスのイノベーションを左右する重要なファクターは、従って、事業家が人々のウォンツをどのようにとらえどのように商品化するかということである。

3.Eコマースの効用について

アマゾンなどeコマースの商店では、人々の購買行動を分析し、協調フィルタリングという手法によって個別の顧客に商品を薦める機能を持っている。eコマースでは、小売店が消費者行動に関するデータを容易に蓄積し分析することが出来るため、消費者のウォンツを探り、それをその次の商品開発に役立てることができる。また、顧客の消費に対する評価や不満を掲示板に書いてもらい、その定性的な情報をテキストマイニングで分析し、顧客自身も気づかないようなウォンツを発見し、それを具体的な商品設計に応用することも出来る。

ITを活用したeコマースという商取引のあり方は、このようにより豊富な情報を活用して人々のウォンツを探り出し、それを新しい商品開発につなげるサービス・イノベーションとして一つの例を提供している。

我々は、サービス・イノベーションについてこのような概念構成をすすめ、事例研究を蓄積し、分析をより深めることによって、より有効な理論仮説を構築して行きたいと思う。

そうした研究を積み重ねて7月6日に、富士通総研で専門家によるワークショップを開きさらにより本質的で、よりワーカブルな理念構成を進めたいと思っている。