富士通総研

  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. 島田前理事長メッセージ >
  4. 2006年4月 >
  5. 太平洋健康サミットの東京会議について

太平洋健康サミットの東京会議について

2006年4月14日(金曜日)

4月11日から12日と2日間にわたり、パシフィック・ヘルス・サミット(太平洋健康会議)の東京会議が、帝国ホテルで行われた。

パシフィック・ヘルス・サミットは、ビル・ゲイツ財団が中心となり、米国・韓国・日本などの志ある企業、各国政府、また医療・医療政策関係者などの支援と参加を得て、4年計画で行うものであり、太平洋地域におけるガンなど深刻な病の早期発見と早期治療の新しい方法論を確立しようという国際プロジェクトである。プロジェクトは、2005年に始まり、3年間ビル・ゲイツ財団の本拠であるシアトルで世界会議を行い、最終年には、中国の北京で会議を行い、目的を達成しようという企画である。

4年の間に幾度か開催される本会議の間に、様々な実務的なテーマを興味のある専門家や関係者たちが研究し、その成果をシアトルの本会議に反映させようと、いくつかのワーキング・グループが作業しているが、特にアジアの重要な拠点である東京でワーキング・グループの会議を開催したのが今回の東京会議である。

ワーキング・グループは、「医療・情報・政策」というテーマの下に、パシフィック・ヘルス・サミットの協賛団体である富士通が、主たる役割を果たして組織し、実施したものであり、会議の冒頭では、富士通の秋草会長がウェルカムスピーチをし、富士通総研経済研究所理事長である私が冒頭の基調報告を行い、以降2日間にわたって5つのセッションで議論を行った。

秋草会長は、今日の医療の世界では、一方で、DNAの解析やMRIなど医療機器の高度な発達により、極めて効率的な体質の分析や医療診断が行われる技術が確立しているが、他方、その技術によって一般の人々や患者がメリットを受けているかとなると、そこには大きな距離があると言わざるをえず、この会議のような場でそうした距離を埋める努力が期待される、と極めて適切かつ力強い激励のスピーチを行った。

5つのセッションに共通するテーマは、情報化時代の技術をいかに開発して進歩させ、いかに活用するか、というものであった。病気の人々の治療や予防、そして健康づくりなどを効率的に促進するための個人の健康履歴(パーソナル・ヘルス・レコード)や、治療の内容などの情報を掲載した電子的な診療情報(エレクトロニック・メディカル・レコード)の開発と活用があげられる。

技術の進歩には目覚しいものがあり、そうした情報の蓄積は日進月歩で効率性を高めており、膨大な情報を効率的に集約できるようになってきている。しかしながら、それらのデータを、多くの個人が適切に活用して、病気の予防や健康づくりに活かしているかというと、各国ではまだまだ多くの問題があり、かならずしも技術進歩は人々の健康増進や社会の医療費削減にはまだ十分に役立つところまでいってはいない。

世界各国では、多くの実証実験が行われているが、これが社会的に大きな成果を生むためにはまだ長い距離があり、多くの社会的、経済的、政治的な課題がその前途には山積していることが議論を通じてかなり明らかになった。

我々の会議の結果は、そうした課題を克服するために、国際的な標準化をどう進めるか、国際間の合意をどのように取り付けるか、そのために各国の利害関係者の意見をどうやって調整するかなどの問題を確認し、それらを重要な課題としてシアトルでの本会議にフィードバックしようということになった。

技術進歩を人々の幸せと社会経済的な成果に結び付けてゆくことが、いかに大切であるか、しかし、それがいかに複雑で膨大な作業であるかということが明確に解ったという意味で、この会議は有益な共通理解を我々にもたらしたと思う。

6月に予定されているシアトル会議には、富士通からは、政策推進本部政策企画部の宮本統括部長代理、ワシントン駐在事務所のオリーブ氏、富士通総研総研からは、根津専務と理事長の私が参加することになっているが、我々の問題の国際的な理解と政策的な前進がどれだけ進むか、興味のもたれるところである。