富士通総研

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サービス・イノベーションへの構想

2006年3月17日(金曜日)

富士通総研では、いくつかの組織的な研究のひとつとして、サービス・イノベーションを掲げている。サービス・イノベーションをどのような事柄として捉え、どのように研究を進めどのような成果を生むかについて現在研究プロジェクト参加者の間で議論が行われている。今回は、その議論の過程で我々が検討しつつあるひとつの構想について報告したいと思う。

サービス・イノベーションを研究する価値がますます大きくなっていることについては1月25日に指摘した。今回は、その「サービス」という概念と「イノベーション」という概念をどのように理解するか、あるいは定義するかについてコメントしたい。

サービスの概念については、いわゆる「サービス産業」や「消費者サービス」などという、世間で広く使われているサービス概念よりも、さらに踏み込んだ、より本質的な概念として我々はとらえたい。世間で言われている一般的なサービスの概念は、サービスの提供を受ける個人や顧客が、物ではない無形の役務提供を受けて満足するものであり、それをサービスと名づけているが、我々はむしろより本質的に「主体間の情報交換」という行為としてそれをとらえたいと考えている。

顧客が無形のサービスを受けて、満足度が高まるという現象の核心は、サービス行為が、それを提供する主体から受け取る主体に情報を移転させる過程(プロセス)を通じて付加価値が創出されることと考えることができる。例えば、より質が優れている、あるいはより安い商品がどこにあるかを教えてくれるサービスは、まさにそうした情報の伝達に他ならない。旅行の案内や、医療行為における診断、学習塾の指導などに共通していることは、出し手から受け手への情報の移転である。
このようにサービスの概念をより本質的にとらえると、通常理解されているサービスよりも理論的にはより一般性ならびに普遍性が高いものであることがわかる。上記のように考えたサービス活動は、実は通常ものづくりと言われている活動においてもその大半を占めていることがわかる。

例えば、世界に冠たるトヨタ方式は、ものづくりの優れた方式と理解されているが、上記のように考えると、その大半は「情報の伝達と共有」という意味でのサービスのひとつのあり方であると再定義することもできる。トヨタ方式のイノベーションは、それまで世界の主流であったフォード生産方式を超える不連続的なイノベーションとされている。それは、フォード方式が工場現場で処理される何万点という部品の流れを、中央の集中的なシステムで制御しようとしたプッシュ方式であったのに対して、トヨタ方式は、現場の生産過程で後工程の担当者が前工程の担当者に、必要な部品を必要な時に必要なだけ請求するということで無駄を排除し、最終工程から発信される情報が、その前その前へと将棋倒し的に最前工程まで流れるというプル方式を採用した点にある。すなわち、ものづくりの代表とされる自動車産業においても、その産業活動の本質は、このように情報の出し方と受け方との間の情報交換の仕組みとして理解することが出来るのである。我々の定義では、これもサービスである。

そうした情報の出し手と受け手、そのかたちや効率が変わること、そしてその結果、生産性が向上し品質が高まり、満足度が高まるということがイノベーションなのである。

すなわち、サービス・イノベーションとは、情報の出し手と受け手の間の、情報共有のされ方、認識のされ方、さらにより多くの情報を、より効率的に収集し、整理し、解釈し、認識し、それを関係主体の行動の指針にする、そうした仕組みが改善され、改革されることと理解することが出来る。

サービス・イノベーションを考察するに当たって、我々は、現在の段階では、概念の本質をこのように抽出し、そうした概念に基づいて具体的なデータの分析に取り掛かろうと考えている。我々のサービス・イノベーションの研究については、また進展があり次第、このコーナーで中間報告をさせていただきたいと思っている。