「富士通総研経済研究所第18回フォーラム」についての所感
2006年2月28日(火曜日)
去る1月25日、富士通総研経済研究所第18回フォーラムが開催されたので、その結果を読者の皆様にご披露したい。
今回は、共通テーマは『日本経済 内外課題の解決策』と銘を打ち、第一部では国内問題、第二部では国際問題について研究員が報告した。
第一部では、住宅産業のリストラクチュアリングを取り上げた。住宅は、個人にとっても国家にとっても最大の資産だが、日本における住宅市場は、様々な面で欠陥を抱えており、その資産が十分に活用されているとはいえない。今回は、構造改革の課題ともいえる問題について、2つの研究が発表された。
1つは、米山秀隆主任研究員による「マンションの終末期問題と新たな供給方式」である。日本のマンションは、築後数十年たったものが多く、老朽化し劣化が続いているが、このままで放置されると、スラム化が起きたり、危険な崩壊の危険性が増したり様々な問題が深刻化する可能性が恐れが大きい。米山研究員は、そうした問題を鋭く分析し、老朽化した共同住宅を、オーナーと利用者が共同で合理的にリニューアルする仕組みをいくつか定款した。また、2つ目は、梶山恵司主任研究員による「木材関連産業の付加価値創造への道筋」というテーマの発表であった。日本では森林が活用されておらず、住宅の基本的な素材をめぐって、国産の木材の利用ならびに森林の保全に大きな問題が生じている。しかし、戦後に植林された多くは、これから手ごろな太さに成長し経済性も高まってくる。従って、そのようなタイミングを捉えて、森林の保全や木材市場の構造改革をすることにより、木材と住宅産業に新たな展望を開くことが出来るという提言であった。
第二部では、日本の直面する国際問題の中で最も大きな問題といえる中国との関係、とりわけ中国の市場をどうとらえるか、という観点から富士通総研の3人の中国人研究者が発表した。
1つ目は、朱炎主席研究員による「中国経済の対外依存構造の現状と課題」であった。経済発展に伴い、中国の対外依存が深まり、貿易資源などの分野で諸外国との摩擦を引き起こし、成長を制約するようになっている。中国が持続的成長に必要な環境を維持するには、国内の経済産業構造の調整が必要になるため、それらを踏まえて、日本からの投資企業の戦略も適切な変革が求められるという興味深い研究であった。
2つ目は柯隆上席主任研究員による「日本企業の対中投資 新たな選択」であった。これは、現在、中国経済が高成長を続けており、外国企業の投資が優位にひきつけられているが、国内には構造問題があり、サステイナビリティや事業リスクが心配される状況になりつつある。従って、日本などの外国企業の国際投資戦略としては、中国だけに偏らず、ベトナムやインドなど、広い視野から適切なポートフォリオを組んで投資を進めることが寛容であるという重要な報告だ。
最後に、金堅敏上席主任研究員は、「中国市場戦略の新展開」という報告を行った。中国市場は、中国に投資し進出する企業から見て様々なリスクが存在する。そうしたリスクに適切に対応してゆくには、中国の社会で、その企業の存在が認められ理解され受け入れられるための積極的な対応をする必要がある。それはすなわち、コーポレートコミュニケーションである。豊富なケーススタディを通じて、日本企業には多く改善すべき点があることを指摘し、貴重な示唆が得られた。
このフォーラムは、これまでのものとは形態を変え、外部の講師を招かず、研究所の研究員のみで内外の基本問題を一つずつ報告した。参加した聴衆からの声は、好評で、多くの方々から専門的な研究に基づくこれらの研究報告は有用であるとの評価をいただいた。
