富士通総研

  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. 島田前理事長メッセージ >
  4. 2006年1月 >
  5. 2006年の年頭にあたって

2006年の年頭にあたって

2006年1月17日(火曜日)

2006年は日本経済にとっても日本そのものにとっても、大変重要で且つおもしろい年になりそうである。第一に、今年は4年続いた小泉政権の最後の年であり、小泉改革の総仕上げの年になること、第ニに小泉政権後の政権が決まり、その政権によって日本の今後の将来の方向が決まってくること、第三に昨年来株価が好調な基調を続けており、大方の見方でもこの景気の好調はさらに加速することが予想されていることなどがある。

景気展望

景気の展望については、日本経済は、輸出増大が投資拡大を呼び起こし、雇用状況を改善し、所得が増加して消費が伸び始めるという好循環に入ってきており、その循環は今年さらに強化されると見込まれる。昨年の全般は中国経済やアメリカ経済の不確定性、エネルギーコストの上昇などがあり、景気回復がスローダウンしたが、今年はそれらの条件もある程度克服して、景気回復が促進されると多くの専門家は見ている。その根底には、企業のR&Dを始めとするたくましいイノベーションの努力があり、またそうしたイノベーションを支える競争市場条件の整備が、総合的に政府の構造改革政策によって進められたことがある。これらの条件を好感して、株式市場も強気で推移しており、景気の先行指標としての株価の動きはこの景気回復が底堅く進展することを示唆している。

小泉改革の総仕上げ

小泉政権の改革作業は、最終コーナーに入った。改革のペースは昨年の9月11日の選挙以降、飛躍的に加速している。小泉政権は、「改革なくして成長なし」をスローガンとして4年前に発足し、バブル崩壊の後遺症と闘い、金融危機を克服し、将来に向けての大きな改革に取り組んできた。

しかしながら、発足後3年間ほどは、野党ばかりでなく自民党の中にも抵抗勢力が根強く、改革の努力は様々な側面で遅滞させられた。その象徴が郵政民営化であった。小泉総理が当初から最も重要な課題として国民に公約し、その公約を掲げて自民党の総裁として党の信任を得てきたにもかかわらず、昨年の夏に参議院で民営化法案が否決されるという事態にまでなった。

小泉首相は、これを逆手に捉えて、国民に直接真意を問うた9月の衆議院選挙で歴史的な大勝を勝ち得た。選挙戦で自民党の抵抗勢力を公認しなかったばかりでなく、戦略的に彼等の選挙区に対抗馬を立ててその多くを落選させ、かつ主要メンバーの除名まで断行した。しかも、都市部を中心に80人を超える小泉チルドレンと呼ばれる新人議員を登場させた。そうした地殻変動を自らの力で惹き起こした小泉総理は、自民党が296議席、自民・公明で衆議院の3分の2をこえる327議席を勝ち取り圧倒的な支配力を確立し、独裁的とまで言われるような指導力を発揮し始めた。

過去3年間の懸案であった郵政改革、公的金融の改革、地方分権における三位一体改革、公務員改革、医療費改革、などが矢継ぎ早に達成された。3年分の懸案を3ヶ月で実現するほどの改革ダッシュである。今年9月の任期終了までに、さらにいくつかの改革を付け加え、小泉時代の改革は仕上げとなる。

ただその内容を子細に見ると、改革は当初の趣旨を十分に活かしきれていないものが少なくない。したがって、改革の経済的効果は、多くの分野で限られており、初期の意図を実現するにはさらなる改革の強化が必要と思われる。

小泉総理が行った経済改革の効果が限定的であるのに対し、最大の成果はおそらく政治の側面にある。小泉改革によって、旧田中派支配の戦後政治体制は完全に終焉し、官邸主導の政策形成機能が形成された。おそらくこれが小泉改革の最も明確な成果であるように思う。

次期政権の課題

ポスト小泉時代を、どの政権が担うかによってこれからの日本が大きく規定される。昨年10月に編成された新内閣で、小泉総理はポスト小泉時代を意識したと思われる有力な候補を幾人か重要閣僚に据えた。安倍晋三氏、谷垣禎一氏、麻生太郎氏らが主要候補と目されている。閣外では福田康夫氏が重要なダークホースと考えられているが、閣内で当初から小泉政権の最重要ポストを担ってきた竹中平蔵氏もさらに有力なダークホースとも言われている。誰が次期政権を担うかはこれからの推移によるが、誰が首相になっても、さらに大きな改革の課題に取り組む必要がある。それは、日本の経済社会の全体を規定する人口動態がいよいよ減少局面に入ったというメガトレンドがあるからである。

人口減少と高齢化のメガトレンドの結果、社会保障費を中心として財政赤字が拡大し、労働力が減少し、貯蓄率が低下し、人口減少によって疲弊する地域が出始めている。これらの深刻な課題に新政権は強力な政策によって取り組まなければならない。社会保障費の大宗を占める年金や医療の改革も不十分であり、労働力の減少を食い止める手立てもまだ構築されていない。貯蓄率の低下は、日本の戦後の発展を支えてきた資金循環の構造を根底から変える可能性があり、それらへの対応策も準備されていない。

また、国際戦略にも大きな課題がある。小泉政権は日米機軸を強化し、かつてないほど良好な日米関係を築いたという成果を挙げたものの、靖国神社問題などにからんで日中間系、日韓関係の政治交流を機能不全に陥れ、また国連改革でも貴重な機会を活かすことが出来なかった。次期政権は、日米関係の重要性を十分に踏まえつつも、中国、インド、ロシア、ブラジルなどの目覚しい台頭によって多極化、流動化する世界で、国際社会の信頼を得、期待にこたえ得る新たな舵取りを迫られる。

これらの要素を鳥瞰するだけでも今年の日本にとって、今年はまことに面白くまた注目すべき年になるだろう。