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医療改革:情報システムの効率化とサービスの向上をめざして

2005年12月20日(火曜日)

医療改革が国の政策上の大課題になっている。その背景として、医療費が高齢化の進展と共にうなぎのぼりに増大していることがある。2003年度の国民医療費は31兆5375億円であり、この数字は保険支給対象の医療費のみであるため、自由診療や国民のそれ以外の様々な医療費負担を合算すると、おそらく国の一般会計税収44兆円(2005年予算)よりもはるかに高い金額になると推察されている。政府は、かねてから医療費の加速度的な増額を押さえるために、総額抑制策を導入しようと努力してきたことは11月11日(火曜日)の本コーナーで既に触れたところである。

医療費の管理について、官邸と経済財政諮問会議は、マクロの経済指標に連動させて医療費の増大を抑制すべきだと主張してきたが、医療現場や厚生労働省は、マクロ経済指標に連動させることには無理があり、多くの医療項目のコストを踏まえて様々な手法によってこれを管理すべきだと反論してきた。結果的には、一定の目標年次を定めて総額を管理していくという中間的な妥協案がとられることになった。

前回は、そうした管理策の一つとして医師や医療機関、製薬メーカ、患者が合理的に行動すると医療費を抑制せざるを得なくなるようなミクロのインセンティブを組み込むことが重要と提案したが、今回は、もう一つの重要な視点を中心に医療費の抑制策を考えてみたい。

それは、医療の情報化を活用して、医療提供システムの効率性を高めることによって、サービスの内容を向上させつつコストを抑えるという考え方である。今日、日本の医療界では、政府の医療情報化の行動計画(アクションプラン)などを踏まえながら医療の情報化が進められている。ところが、情報化が組織間で重複したり、また情報化の意味が現場で掌握されていなかったり、あるいは、そもそもITを活用する以前に、医療情報そのものが整備されていないなどの様々な欠陥や問題点がある。それらの問題を、情報化の適切な活用によって解決してゆくことが医療サービスの内容を高めることにもなり、また総コストの削減にもつながる。以下、3つの例示をして見たい。

(1)医療情報とITシステムの統合化
政府は現在、健康・医療情報のIT化を進めているが、それらが様々な政府内の部局で相互に十分な連携無しに進められているため、重複投資などによるコストがかさみ、またサービスの質も向上しないという状況が見られる。例えば厚生労働省は、生活習慣病対策、地域保険者統合・再編による保険者機能の強化、社会保険庁から政府管掌健康保険業務の分離、レセプト電算化・オンライン化、被保険者資格確認、医師の資格確認などの分野で医療システムの情報化を進めているが、各局バラバラに進められており、相互の連携が取れていない。IT化は、組織横断的に情報を共有することで、国民へのサービスの質も高まると同時に、管理コストの削減も期待できるはずであり、真の統合化が求められる。

(2)地方自治体への医療行政業務の委譲
今回の医療改革で、政府は地方自治体に出来るだけ多くの医療行政業務を委譲し、地域で総合的自己完結的なシステムが整備されることを期待しているが、IT化の前にどのようなサービスを地域住民に提供するか、そのためにはどのような仕組みが最も適切かといった基本的な課題が十分に整理されていないために、適切なシステム構築の展望が明確になっていない地域が多い。IT化の前に、サービスの内容とその提供体制を的確に確認し、それを最も効率的に提供できるITシステムを設計する必要がある。

(3)特定疾病分野(ガン)での情報整備
多くの疾病分野で、情報の調査と集積が不十分であるために、患者が深刻な危険にさらされている。その最たる例がガンの分野である。どのようなガンが、どのような段階にあるときは、どのような医療機関や医師による、どのような治療が必要であるか、あるいは効果があるかといった情報が十分に調査もされておらず、情報の蓄積も整理も遅れている。そのために、深刻なガンを抱えた患者が、緊急な困難に直面している。こうした分野で必要な情報を早急に調査し、整理し、提供する体制を整備する必要がある。

以上、行政の縦割りや医療行政のあり方についての理解不足や情報そのものの欠如などの例を指摘したが、医療改革によって医療サービスの質を高め、医療コストを削減するためには、これらの例にみられるように、そもそもどのような医療サービスを人々に提供すべきか、そのためにはどのような組織や仕組みが必要なのか、それを効率的に運営するためにはどのような情報システムが望ましいのかといった、医療情報の基本的な課題を正確に理解し、早急に取り組みかつ解決する必要がある。