サービスイノベーションへの胎動 - 日欧共同シンポジウムについての所感 -
2005年12月15日(木曜日)
このほど(12月14日)、富士通総研とベルリン日独センターの共催で、ドイツ経済研究所および経済広報センターの協力を得て、日欧共同シンポジウムを開催した。テーマは「規制緩和とイノベーション~日本企業の新たなビジネスチャンス~」であり、年末であったにもかかわらず、経団連開会の国際会議場を埋め尽くす多くの聴衆が参加した。聴衆の大部分は、海外投資などに関心を持つ企業人であった。
プログラムの構成は、まず、グローニンゲン大学経済学部教授・米国コンファレンスボードコンサル事業部長であるファン・アーク教授による、「生産力の国際比較」から始まり、続いてドイツ経済研究所イノベーション部長のヴェルバッツ教授は、「ヨーロッパ市場における規制緩和とイノベーション」、FRI安部主席研究員は「サービス分野のイノベーションを促進するサービスサイエンス」、Elisa研究開発副社長のヴァルタリ氏は、「欧州におけるICTと企業サービス」、新生銀行の八城取締役会長は「銀行業のイノベーションとITの役割」、最後は、FRIシュルツ主任研究員は「欧州における投資機会」であった。
会議を通じていくつかの新しい知見が報告され、また、新しい課題が明らかになった。ファン・アーク教授は、サービスの生産性において、米国の過去十年間の伸びが著しく、欧州と日本はそれに比較して出遅れた傾向があるとことを詳細なデータ分析で立証した。ITの活用の仕方の違いにその原因がありそうだというのが教授の推察である。ヴェルバッツ部長は、ヨーロッパにおいて、規制緩和が様々な形で進行し、それが企業のイノベーションを促進していることを報告し、安部研究員は、サービスの分野でサービスサイエンスという概念のもとで画期的なサービスの効率と質の向上が米国を中心に検討されており、それを日本でも受け止める動きが出てきているとした。ヴァルタリ氏は、モバイルの普及が、欧州において情報革命を起こしつつあることを報告した。八代会長は、経営にとって情報技術は重要な役割を果たすが、もっとも重要なものは、それを理解して適切に活用しようとする経営者の能力と戦略であることを強調した。最後にシュルツ研究員がEUに移行した欧州で、低くなった国境を越えて、物流・人流が新たな画期的な動きを生んでおり、それを支える情報技術とあいまって、総合的なサービスの市場が広がりつつあることを明らかにし、それは日本企業にとっても大きな投資機会を提供するものであることを示した。
この会議を通じて浮かび上がってきたメガトレンドの一つが、情報化時代における対企業サービスの新たな展開である。企業は、情報の流れを的確かつ効率的に管理することによって、その生産性を飛躍的に高めることが出来る。安部研究員が報告したサービスサイエンスは、そうした情報技術に基づくサービスの革新を科学的に解明しようという接近法であるが、情報化時代のサービスイノベーションは、これから世界各国の産業界を巻き込む次の大きな産業革命になる可能性がある。この会議は、日欧における最近の産業界における動きの中にも、そうした次の時代への画期的な転換の兆しがあることを示唆してくれた。
