人々に希望を与えたマラソンランナー 高橋尚子
2005年11月25日(金曜日)
マラソンランナー高橋尚子が快挙を成し遂げた。
高橋尚子は、2000年のシドニーオリンピックのマラソンで金メダルを獲得し、一躍日本の国民的ヒロインになった。彼女のチャーミングな笑顔、明るい人柄、積極的な姿勢が多くの人々を魅了した。女子マラソンの金メダルは、もちろん日本のオリンピック史上初めての快挙であった。
しかし、2003年の東京国際女子マラソンでは、最後の上り坂でエチオピアのアレムに敗れ、アテネオリンピック代表の座を逃し、栄光の舞台から去らざるをえなかった。多くの人々は彼女の時代は終わったと思った。
その後高橋尚子本人は懸命に走り続けたが、成績が振るわず体を壊し、彼女を育て世界の舞台にデビューさせた小出監督とも別れ、練習パートナーらと「チームQ」を結成し、孤独の鍛錬に励んだ。しかし、ケガや不運に見舞われ、新人が次々と登場し、彼女は大スターと言われながらも忘れかけられていた。
しかし、今年11月20日の東京国際女子マラソンで、彼女は多くの人々の予想を覆し、他の走者を大きく引き離しトップで優勝したのである。実は彼女はふくらはぎなど右足の3か所の筋膜に炎症を起こしており、医師は「全治1カ月で、マラソンは勧められない」とストップをかけた。しかし彼女は、「ここまで頑張ってきたのにこんなことでやめるなんて冗談じゃない」と医師の警告を振り切り、このレースに臨んだのである。
高橋尚子は表彰台に立つと、観客に感謝の言葉を述べるとともに次のように心境を語った。
「今暗闇にいる人や悩んでいる人、一日だけの目標でも3年後の目標でも、何でも目標を持つことで、一日一日が充実すると思います。どうか夢を持って一日を過ごしてほしいと思います。24時間という時間は、皆さんに平等に与えられたものです。もう二度と来ないこの時間を精一杯、そして充実した楽しいものにして下さい。」
彼女の快挙、表彰台で彼女が心をこめて語ったコメントは、多くの国民に強いインパクトを与えた。インパクトというよりも明るい希望を与え、自信を取り戻させたに違いない。有名なスポーツ選手がカムバックをしたり、逆転優勝を飾ることはしばしばあるが、このようなコメントは珍しいだろう。明日への夢を失わずにがんばる、まさに彼女がこの2年間日本やコロラドで辛苦に耐えて努力していた心境を吐露したものに違いないが、ともすれば思うようにならない自分の人生を、他人や社会のせいにして後ろ向きの悲観に陥りがちな多くの人々に、彼女は勇気と希望の光を投げかけてくれたと思う。彼女は今度こそ正真正銘の国民のヒロインになった。Qちゃん(高橋尚子の愛称)、おめでとう。
