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“生活塾”の提案

2005年10月27日(木曜日)

日本は今、出生率が低下し少子化問題が国の大きな政策課題になっている。出生率は、全国平均で1.3を下回っている。日本のような国では、定常人口を維持するには出生率2.08ほどは必要とされている。現状の見込では、出生率の低下により日本の人口は、中位推計で2006年に1億2800万人でピークとなるが、その後は減少し続け、2050年には中位推計で約1億人、低位推計で9000万人台となると推測されている。

出生率の低下には様々な理由がある。統計的に見ると、結婚年齢が遅くなっていることが最大の理由のように見える。なぜなら、結婚した夫婦の出生率は2.0前後にあるからである。出生率の低下と人口の縮小は、高齢化とあいまって国の財政負担を増やし、経済社会の活力を弱めることが懸念されている。また、家庭生活を持つことは人間の本能的な幸せのはずであるが、それが営めない社会は不幸な社会と言わざるを得ない。現在、多くの政策関係者や市民団体、企業経営者などが少子化の問題を心配し様々な政策提案を行っている。

人々の出産と子育ては、3つの側面で大きく規定されているといえる。

第一は「男女の出会い」である。第二は「幼児の子育て環境」、第三は「低年齢児童の教育環境」である。第一の「男女の出会い」については、日本にはかつて結婚の仲介をするお仲人や世話をする人々が大きな役割を果たしていたが、社会が現代化し、そうした働きはほとんど無くなった。そのために、学校を卒業した後の男女の出会いの機会がもともと少ない日本では、結婚の成立が難しくなっている。

第二の「子育て支援環境」については、日本には約2万3000の保育所があるが、地方では保育所の余裕があるももの、都市では人口が多いため、サービスの供給が需要に比べて少なくなっており、若い夫婦にとって子育て環境が劣悪であると言える。

第三については、小学生などの子供の教育環境が劣悪である。特に大都市で働く若い家族は、母親が就業している場合には、帰宅が夜8~10時と遅くなっている。子供は、午後の早い時間帯に学校から開放されるため、親の目の届かないところで6~8時間にわたって一人で居ることになる。この時間帯に子供の多くが事故や事件あるいは劣悪な環境の中に引き込まれる恐れがある。

政府はかねてより放課後の児童の居場所として「児童クラブ」などを組織して、数時間子供の保護をしている。ただし、その数は限られており、現在では全国で1万1000箇所ある児童クラブで、数十万人の子供が世話を受けているが、児童クラブでの保護を必要とする子供の数はその何倍もある。

今回私自身が政府の内閣府特命顧問として小泉総理大臣に進言し、「生活塾」を全国普及させることを提案している。生活塾とは、熟年の男女すなわち仕事を退職した男性や子育てを終えた主婦に、子供たちを退校後に引き取ってもらい、親が仕事から帰ってくるまで、それぞれの思い入れを持ってしつけや教育をするという市民参加の子育て社会機能である。

小泉総理は以前より子育てに関心が深く、そうしたプロジェクトを推進するよう、激励された。この構想は近々に地域住民、政府担当者と地方自治体とが協力して委員会を作り普及を考えている。

日本のように、地域の子育て機能が弱化した先進社会では、それを政策が補わなくてはならない部分が増えている。こうした関係者の努力により環境が整備され、子供を心配なく育てることができる社会になってほしいと願っている。