最近のM&A
2005年10月19日(水曜日)
最近日本の産業界とメディアを賑わせているのが企業のM&A(合併・吸収)というテーマである。日本ではこれまで、M&Aが日本の社会通念、慣行や社会文化に馴染まないと思われてきた傾向があった。ところが、ここ1~2年でにわかにM&Aが多方面において日本の企業社会の重要なテーマになってきている。それには3つの流れがあるように思う。
1つは、最も理解しやすい流れであるが、最近急速に力を伸ばして企業価値を高めているIT関連の急成長企業が、その資金調達力を利用して積極的なM&A活動を展開し始めたことである。ライブドアがフジテレビの買収を手がけたのが8カ月前(2月8日にニッポン放送株35%を取得)、最近では村上ファンドが阪神電鉄に、さらに楽天がTBSに話を持ちかけている。これら一連の企業は、流行の最先端を行き注目を集めている企業であり、これら企業が日本社会を賑わせたことで、M&Aが極めて身近なものになってきた印象を与えている。
2つ目の流れは、外国企業の対日直接投資である。これまでは日本国内で外国企業によるM&Aは進んでいなかった。小泉総理は3年前に、5年間で投資を倍増するという方針を表明し、その2003年1月の小泉総理大臣の所信表明演説における対日投資倍増宣言を受けて、対日直接投資委員会が市場開放や門戸開放の制度改革を進めてきている。こうした動きは地道なM&A活動を一般化する動きになる。
第3の流れは、全国の中小企業のM&Aである。全国の数百万の中小企業のうち、後継者問題で悩んでいる企業は多く、後継者難原因で廃業に至る企業も少なくはない。適切な後継者がいない場合、有力なスポンサー企業によるM&Aが企業の存続と活性化を進める上で重要な役割を果たす。また、そうした動きが全国各地で静かに普及しはじめている。
これらの流れが相乗効果をもって、急速にM&Aが日本の企業社会の一般的なテーマになりつつある。M&Aは、原理的には、より経営力のある企業が資源を十分に活用していない企業を合併吸収して経営改革をすることであり、資源の有効活用という意味で経済的なメリットが大きい。しかしながら、実際にはM&Aがそうした効果と望ましい経済的メリットを持つためには、敵対的M&Aであれ友好的M&Aであれ、それが企業価値を高める方向で活用される必要がある。敵対的M&Aに対しては、吸収される側の経営陣がポイズンピル(poison pill:敵対的買収がなされた場合、合併される企業側が他の既存株主に対し時価よりも安価に新規株を発行すること)などの買収防衛策を過度に適用して保身を図る場合もある。そうした行動は企業の潜在価値の実現を妨げるだけでなく、投資家にとってもメリットをもたらさない。
M&Aに対して適切な企業防衛策が整備されることが必要だが、それは企業価値を高める方向で設計される必要がある。経済産業省は今年5月、「企業価値研究会」報告でそうしたM&Aの正しい活用法ならびに防衛策の在り方について指針を発表しているが、現在の日本はこうした議論が始まったばかりであり、多くの関係者がいろいろなかたちで実体験もふまえながら学習しつつある過程である。
こうした学習を経て、M&Aに対する適切な理解が浸透し、日本の経済資源のより有効な利用が促進されることを期待したい。
