富士通総研

  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. 島田前理事長メッセージ >
  4. 2005年6月 >
  5. 日本の商法改正と擬似外国法人の扱い

日本の商法改正と擬似外国法人の扱い

2005年6月23日(木曜日)

日本で5年ぶりの大商法法改正が今国会で改正法案が審議されている。様々な問題点が注目されてきた法案だが、この数週間、その法案に含まれる一つの条項が特に国際的に注目を集めている。それは、擬似外国会社に関する規定を盛り込んだ第821条である。

ここで、擬似外国会社とは何かについて簡単に説明しておきたい。旧商法第482条では、日本で事業を行う会社は、日本の法律に従って設立されることを要する。擬似外国会社はそうではなく、外国の会社だが、主として日本で営業するが日本の法律に基づいて設立されていない形で営業している会社のことで、例えば、本社が外国にあって日本には支店しかないような場合である。支店を設ける場合は、日本の法律に即さなくとも良い。旧商法の歴史は明治末にさかのぼるが、今回は5年ぶりの大改正で、会社に関する規定を総合的に改正し、はじめて「会社法」という体系ができたといわれている。

その中で、旧商法の482条を明確な文章に書き直す(現代化)が行われた。すなわち、新法第821条で、第一項、擬似外国会社は日本で営業することが出来ない、第2項、擬似外国会社が取引を通じて関係者に損害を与えた場合は、擬似外国会社の個人が賠償しなければならないと書いてある。

それら条項が新商法に含まれていたことが、関係者の注目をあびるようになったのが5月過ぎである。すなわち、商法改正案が衆議院に提出されたことから、5月の末に、改正案は衆議院を通過して参議院の審議にかかった。これはほどなく成立する予定である。

成立した日より、擬似外国会社は営業ができなくなることがわかった。小泉総理は、3年前に対日投資を倍増するという方針を世界に向けて発信し、世界中が注目している。これは、擬似外国会社を法的に締め出すという、小泉総理の戦略に逆行するという印象をあたえる。関係者の間で深刻な議論が行われている。新商法の規定自体には、法的には問題はない。日本は法治国家、主権国家である。これは当然の原則である。

問題は、まず第一に、そのような厳格な法律について影響をうける人々(外国企業)に十分な従前の説明が行われてきたかどうかである。外国側は説明がないという。法務省は、ホームページ等を通じて理解していてしかるべきとの方針である。法案になるまで見守らざるをえなかったのである。第二に、支店で営業するという形態は、大正時代から行われてきており、特に金融機関がそうである。当時の政府が、子会社を設立するよりも、支店で営業するように指導した結果である。日本政府の指導に従って、数十年間営業の実績を積んできた企業は、一編の法律で、今日から営業停止、といえるのか。

諸外国のACCJ(在日アメリカ商工会議所)、EBC(欧州ビジネス協議会)等各国外国筋は、日本の政府ならびに関係者そして対日投資委員会である私に対して懸命の働きをしており、数日間でもまだゆとりがあるので、その間に参院での法案修正ができないものかどうか要請している。

会社法案というのは、郵政民営化にかかわる問題でもあるので、日本政府としては、この閣議決定の済んだ法案を国会で修正することは政治的に極めて困難という状況にある。

商法第821条問題は、このようにして非常に難しい迷路に迷い込んでいる。法案そのものには法的正当性はあるものの、そのデリバリー、説明の仕方に大きな問題があったといわざるを得ない。

日本の現在の政治状況から、ただちに救済策を講じることができないとすれば、政治状況の展開を待って、近い将来に迅速に効果的に対応して、日本の国際社会における信頼の確立のために、政府議会ならびに政策関係者が全力をかけて努力する必要がある。

付記

その後6月28日に参議院法務委員会において本法施行後における外国会社に与える影響をふまえ、必要に応じ見直しを検討することとの附帯決議が付加された。