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導入事例
愛知県様
(愛知県建設部河川課、愛知県尾張建設事務所)

愛知県の河川管理システムに見る“防災思想“の新しい波

[2005年11月30日 掲載]

導入事例キーワード
業種: 地方自治体
ソリューション: 河川危機管理ソリューション、河川情報ソリューション、洪水予測ソリューション
ソフトウェア: 統合運用管理ソフトウェア Systemwalker
ハードウェア: LANインターフェース Catalyst6506、PCサーバ(IAサーバ) PRIMERGY、トランスポートシステム FLASHWAVE、リアルタイム映像伝送装置 IP-700II
課題と効果
1 河川の異常を事前に察知して災害を予測できる観測体制、システムを構築したい 光ファイバーネットワークの整備とIT機器により、画像などによる河川のリアルタイムな監視を実現した
2 効果的な河川情報を提供することで、住民の円滑で迅速な避難を確保したい 洪水予測システムやインターネット利用による河川映像のWeb公開で、住民への河川情報提供が的確に行えるようになった
3 河川情報を効率的に収集、集約し、効果的な災害対策に役立てたい 監視カメラ、情報コンセントの導入などにより、河川のさまざまな情報をすばやく収集、伝達できるようになった

近年の大規模災害の頻発、災害規模の拡大には目にあまるものがあります。自然災害の中でも特に水害は、その被害が広範囲におよび、被害も甚大です。昨年は台風が10個も上陸し、1時間に100mmを超える雨量を記録することさえ珍しくありません。私たちは今、未曾有の時代に突入しているのかも知れません。

平成12年9月、台風14号にともなう集中豪雨で愛知県が大規模な水害に見舞われたのは、まだ記憶に新しいところです。国土交通省(当時の建設省)は平成12年11月、東海豪雨により被害を受けた名古屋市北部を流れる庄内川と新川、そして名古屋市南東部を流れる天白川において、「河川激甚災害対策特別緊急事業(激特)」を採択。それを受けて愛知県尾張建設事務所では、新川・天白川に新しい河川危機管理システムを導入しました。

導入の背景

“治水”から“減災”へ

豊田 正博
愛知県建設部河川課 主査(企画グループ)

東海豪雨は死者7人、負傷者107人、住居の全半壊174棟、床上床下浸水は実に合計62,478棟という伊勢湾台風以来の甚大な被害をもたらしました。特に、甚大な被害に見舞われたのは、名古屋市北部を流れる庄内川、新川流域および、名古屋市南東部を流れる天白川流域でした。

こうした急激な河川の増水、洪水が日本各地で頻発する要因には、さまざまなことが考えられています。ひとつは河川流域の急激な土地開発によって、雨水の流入が予想を超えて増大したこと。さらには地球温暖化など広範囲での気象の変化による台風、雨量の増大などに、これまでの治水行政が追い付いていけなかったこと、などです。国や県など行政の災害対策は現在、そうした予測不可能な環境や気象の変化にどう対処して、自然災害、特に水害に備えようとしているのでしょうか。
愛知県建設部河川課主査(企画グループ)の豊田正博氏は「水害を未然に防ぐため、従来は堤防築堤、護岸整備などの治水対策が重視されてきました。もちろん堤防や河川の流路を統御することが災害対策の基本であることは、今も変わりありません。しかし、そうしたハード的な対策に加えて、ソフト面の対策にも目を向けよう、というのが新しい考え方です。すなわち河川情報をできる限り正確に、すばやく、多くの人に伝えることで、少しでも被害を減らそう。言わば“減災”という考え方が急速に拡がりはじめています」と言われます。

減災とは、河川情報をリアルタイムで住民に伝達することによって、少しでも的確な避難行動や早期の避難誘導に役立ててもらおうというもの。自然災害を完全に無くすことはできないなら、被害を最小限に抑えることを目指そう、という考え方。そしてその基本にあるのが“情報”です。

導入の経緯

災害情報を伝達する基盤整備の重要性

小島 哲朗
愛知県尾張建設事務所 維持管理課 課長

加藤 清隆
愛知県尾張建設事務所 維持管理課 主査(維持・防災グループ)

愛知県の災害対策は県防災局、建設部が主導しています。県の災害対策本部は、県内全域に張り巡らせた高度情報通信ネットワークの中核にあって、国との連携、市町村連携などを指揮しています。水害に対しては県庁内に“水防テレメータシステム(HANSII)”が備えられ、県内の各建設事務所とLANで連結し、また国土交通省、気象庁、名古屋地方気象台などの情報と合わせて対処しています。水防テレメータシステムは、県全域に設置された雨量計、水位計からのデータを県下9の建設事務所を経由して県統制局に集約し、そこで一元管理するシステムです。
県建設部の水防テレメータシステム(HANS)は昭和51年より整備が開始されました。平成元年より全県運用が開始され、その後、平成7年度より、老朽化対応を含めた処理能力アップ、Web化(HANSII)などのシステムの更新を進めているところです。

一方、先の東海豪雨を受けて尾張建設事務所では、平成12年度から、河川危機管理システム整備(平成12~16年度)を実施することになりました。こうした建設事務所と県との連携について、愛知県尾張建設事務所維持管理課長の小島哲朗氏は「尾張建設事務所は、新川と天白川において、国交省による河川激甚災害対策特別緊急事業(激特)の採択を受けて、河川情報を収集するシステムを構築することになりました。尾張建設事務所にも県と同じHANSIIが設置されていますが、その他にも独自の水防システムが構築される必要がありました。それはこの事務所の管轄地域が、名古屋市とその周辺市町という、県内でもっとも市街化が進んでいる地域だからです」と語ります。

新川、天白川の両河川における河川危機管理システムの整備にあたっては、減災の考え方に基づいた災害情報の収集と伝達に主眼が置かれました。

尾張建設事務所同主査(維持・防災グループ)の加藤清隆氏は「河川のリアルタイムな画像情報を、いかに早く、多くの人に伝達するか、それが河川危機管理システム開発の第一目標でした。その基盤に光ファイバーネットワークシステムを採用したのは、この方法が画像などの大容量データを伝送するのにもっとも優れていると判断したからです。」と言われます。

今年、平成17年6月、新川の激特事業区間では約46キロメートル、天白川では同じく約28キロメートルにわたり、光ファイバーケーブルによって連結された河川危機管理システムの基盤が完成しました。

システムの概要

ITを活用した高度な河川管理と水防のための情報システム

平成12年度から16年度の5年間におよぶ激特事業には、堤防の強化、河床の掘削、橋梁の改築と補強など、ハード面の整備が含まれています。「しかし本事業がこれまでの治水対策と一味違うのは、経験に基づいてソフト面の対策を強化していることです。」と加藤氏は言われます。そのソフト面の対策とは、以下の通りです。

  1. 光ファイバーネットワークの整備
  2. 河川監視カメラの設置
  3. 情報コンセントの設置
  4. 関係機関への情報提供
  5. 住民への情報提供

[図] システム構成図

新川、天白川ともに、すべての情報収集機能を光ファイバーケーブルによるネットワークで連結しています。ネットワークによって収集された情報は、速やかに尾張建設事務所のLANネットワーク経由で新川/天白川危機管理システム、水防テレメータシステムに集められます。そして一般公開Webサーバからインターネットを通じて住民に提供されます。これにより住民は、居ながらにして河川の画像をタイムリーに得ることができます。住民自らがあらかじめ情報を取得することで、自主的な避難等の判断を援助します。

<監視カメラの設置>
新川流域には合計16基、天白川には合計6基の河川監視カメラが設置されています。監視カメラは24時間、365日、常に河川の状況を尾張建設事務所のモニターに映し出しています。そして、同様に画像がWebで公開される仕組みになっています。監視カメラは事務所から遠隔操作することができます。従来、河川情報といえば河川の水位や雨量の情報が発表されるだけでした。画像によるリアルタイムな情報は、災害対策上ばかりでなく、住民にとっても防災や避難の判断材料として大いに役立つはずです。

<情報コンセント>
現場に設置された光ファイバーケーブルに接続して、現場映像などを送るための入り口が情報コンセントです。現場に直接職員が出向き、現場からパソコンやビデオ映像、電話などの音声データを尾張建設事務所に伝送するための設備です。新川には12個所、天白川には7個所設置されています。

将来の展望

これからも拡がっていく防災ネットワーク

尾張建設事務所の河川危機管理システムは、減災の思想を実現化したものとして、各方面から注目を集めています。加藤氏は「まだまだ充分とは言えませんが、それでも減災への取組みに一歩踏み出したシステムと思っています。」と言われます。

小島氏は「河川管理の高度化と言っても、われわれはまだ緒についたに過ぎません。河川映像や情報のWeb公開も、その効果については未知数です。皮肉なことに、このシステムが本当に有効であるかどうかは、実際に災害が起こってみなければ分からないからです。しかし河川情報を可能な限り収集し、公開することで、確実に住民の災害に対する意識は高まっていくと確信しています」と言われます。
未来の防災を見据えた愛知県の挑戦を、富士通はこれからも支え続けます。

【概要】

愛知県尾張建設事務所

  • 所在地: 愛知県名古屋市中区三の丸二丁目6番1号三の丸総合庁舎(5階・6階)
  • 管内市町村: 名古屋市・瀬戸市・春日井市・小牧市・尾張旭市・豊明市・日進市・清須市・愛知郡(東郷町・長久手町)・西春日井郡(豊山町・師勝町・西春町・春日町)
  • 組織: 総務課・用地課・維持管理課・建設一課・建設二課・建設三課・建築住宅課・都市公園出張所・新川東部浄化センター出張所
  • ホームページ: 「愛知県尾張建設事務所」ホームページ

【お問い合わせ】

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