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導入事例
広島大学様

夜間遊休の教育用PC500台を資源に
仮想的なスーパーコンピュータ規模の計算機環境としての
「次世代キャンパスグリッド」を実現

[2005年11月16日 掲載]

導入事例キーワード
ソリューション: キャンパスグリッド技術(注1)
サービス: グリッド管理ミドルウェア「Systemwalker CyberGRIP」
ハードウェア: 教育用デスクトップPC「FMV」、グリッドサーバ「PRIMERGY」
課題と効果
1 国立大学法人化にともなう計算機予算の制約内で大規模計算処理環境を確保したい グリッド技術導入で大規模計算処理環境を実現
2 キャンパス内外に散在する計算機ユーザのニーズに応える大規模計算処理環境整備と教育用PCの十分な台数確保を両立させたい。 夜間空いている教育用PCをグリッド管理することで両者を両立
3 グリッドのオペレーションはできる限りシンプルにしたい グリッドポータルによってポータルサイトから容易にジョブを投入可能

広島大学様は、「世界トップレベルの特色ある総合研究大学」をめざす中四国地方のリーダー的存在の大学として広く知られています。世界トップレベルの特色ある総合研究大学(注2)に向けた長期ビジョン第1段階(ステップ1)として基盤整備を進める同大学では、情報通信基盤の整備充実にも力を入れています。その取り組みの一つが、世界的にも類がない教育用PC500台を研究用計算機へ夜間に切替え、仮想的なスーパーコンピュータ規模の計算機環境とする「次世代キャンパスグリッド」を構築しました。2005年4月より運用を開始したこのグリッドコンピューティング技術は、今後、他の多くの大学、研究機関における超高速演算処理環境の整備においても威力を発揮していくものと期待されています。

導入の背景

潤沢な予算で最先端の研究を目指す時代から「採算の取れる最先端研究」時代へ

石井 光雄
広島大学情報メディア教育研究センター教授

2003年7月に成立した国立大学法人法により、翌2004年4月からすべての国立大学は文部科学省の内部組織から、国立大学法人として独立。その結果、各国立大学法人は独自の裁量で予算配分ができるようになりました。
広島大学様における全学的IT施設の中核機能を担うのが、情報メディア教育研究センター(IMC)です。IMCはこうした状況の下、2004年より独立行政法人理化学研究所様と富士通株式会社と共同で次世代キャンパスグリッドに関する本格的研究を始め、2005年4月よりその運用を開始しました。
次世代キャンパスグリッドは、キャンパス内約500台の教育用デスクトップPCの遊休時間(主に夜間)を効率的に利用し、その他グリッドサーバ、研究用高性能計算サーバを融合することで医療、工学、バイオ、理学研究などの大規模なシミュレーション計算などのニーズに応えるものです。

次世代キャンパスグリッドの導入責任者であるIMC教授で工学博士の石井光雄氏は導入の背景について次のように語っています。
「2003年、やがて迎えるハイパフォーマンスコンピュータ(HPC)レンタル更新と、法人化にともなう予算配分の見直しを前に決断を迫られていました。残念ながら広島大学はスーパーコンピュータ導入予算を捻出できない状況でした。しかし世界最高レベルの総合研究大学を目指すにはスーパーコンピュータは欠かせない。学生のための情報教育用PCも増強したい。この難題に対する答えが、500台のPCと研究用高性能計算サーバの融合でグリッドコンピューティングを構築しスパコン並の高速演算環境を実現するという世界的にもまれな挑戦でした。キャンパスグリッドは『IT資源を効率的に利用して最先端研究を推進する』といえます」

導入の経緯

限られたCPU資源を最大限に利用するグリッドコンピューティング

村上 尚
広島大学情報化推進部広報グループ主査

2002年9月、情報システム専門委員会が立ち上がり、ネットワークサーバ、教育用端末、HPCの3部門のワーキンググループが、それぞれ必要とする計算機環境の詳細を決定。その後、限られた予算内で各グループの要望をおさめる作業が続きました。大学の役割は教育、研究、地域社会との協調。その意味で学生、研究者の双方に均等なコンピュータ資源が配分されるべきですが、人数面では学生が圧倒的多数をしめるため、調整作業のウェートは情報教育、リテラシー教育を担う教育端末部門に置かれます。限られた予算ではHPC部門の縮小がなりゆき。この流れを変えたのがグリッド技術でした。

2003年5月、学長からの最終的意見をトリガーに、次世代キャンパスグリッドは具体化に向けて動き出しました。
「学長からは『世界トップレベルの特色ある総合研究大学を目ざすからには、夢のあるコンピューティング環境を作らなければ』と声がかかりました」と、石井氏は当時を振り返ります。

限られた予算で最先端のコンピューティング環境を作る。まさにブレークスルーの役割を果たしてくれるのではないかと思われたのがグリッド技術でした。
とはいえ、当時、デスクトップPCによるグリッドコンピューティングは、ようやく一部の先進的研究会などで発表され始めた最先端の技術です。その先端技術を実現可能な領域にとらえたのはいくつかの先進技術でした。世界でも例のない500台ものPCを投入したグリッドコンピューティングで、リモート制御によってOSを一気に入れ替える技術、グリッドサーバによる計算ジョブの割り振り制御など、当時としてはほとんど唯一ともいえる技術で先進的かつ具体的な提案を行ったのが富士通だったのです。

教育用デスクトップPCのCPU資源をそっくりスーパーコンピュータ並の演算パワーに転用する画期的な技術が、従来であればHPCワーキンググループと教育用端末ワーキンググループが予算をめぐって綱引き関係に置かれるところを一転、相互補完関係に置き換えてしまったともいえるのです。

システムの概要

夜10時から翌朝7時まで「グリッドコンピューティング」でCPUを24時間利用できる

「キャンパスグリッド」は、学内500台の教育用PC(全720台)、研究用高性能計算サーバ、グリッドサーバから構成されて、教育用PC間はギガLANによりネットワーク化されております。

教育用PC500台は、午後10時にリモート制御によって電源を落とされ、その後一気にグリッド環境OSであるRedHut Linuxに切り替えられます。同OSは各PCのハードディスク内ではなく遠隔の専用サーバからネットワーク経由でロードされ、リモート制御による電源オフから約30分後には投入された計算ジョブについて実行可能な態勢が整います。ただし、これらは余裕を持ったスケジューリングで、実質的に教育用PC500台のOS切替えは数分で可能です。

500台のPCは4つのグループに分割運用されており、各グループに1台のIAサーバPRIMERGYを用いて管理しています。計算ジョブの割り振りはグリッド管理ソフトSystemwalkerCyberGRIPにより行われます。利用者は、あらかじめ登録をすることでウェブブラウザによるインターフェース(グリッドポータル)により手持ちのノートPCなどからも計算ジョブを投入できる仕組みで、きわめて簡単に利用できるシステムになっています。

グリッドコンピューティングに用いられたPCは、翌朝、自動遠隔操作によって計算ジョブを切り上げ、午前7時には自動的にもとのOS、WindowsXPに切り替えられ、計算途中のジョブはグリッド用ジョブ実行マシンに引き継がれる仕組みになっています。

[図] システム構成図

導入の効果

パラメトリック処理に威力を発揮するグリッド

2005年4月の運用開始以来、学内各研究者による「次世代キャンパスグリッド」利用は着実に進み、膨大な医用CTスキャン画像から類似の症例を高速検索するといったパラメトリック処理などで有効性が確かめられつつあります。
「マトリックスが何万行もある連立方程式を解く計算ジョブは本格的なベクトルマシン、スーパーコンピュータに任せるべきですが、たとえば無線アンテナの受信性能を明らかにするための、ある計算を100通り、1000通りのパラメーターで確かめるジョブであればグリッドに向いている。むしろ大学や企業におけるほとんどの計算ジョブがグリッド向きであることもわかってきました」(石井氏)

運用スタート半年で課題も見えてきました。「グリッド技術というステージにはどのような演目、つまり計算ジョブが似合うかを示し、研究者を啓蒙していくこと」(石井氏)。まさに知の創造のためのステージがグリッド技術というわけです。
計算上では6GFLOPSのCPU搭載のデスクトップPCが1千台あれば、6TFLOPSの高速演算機能が得られるグリッドコンピューティング技術。広島大学様による「次世代キャンパスグリッド」技術有効性の実証は、これからの大学のコンピューティング環境の質を大きく向上させる可能性を示したといえるのです。

将来の展望と富士通への期待

シームレスなグリッドコンピューティングを目ざして

現在、深夜の教育用PC遊休時間を利用することで構築されるグリッドコンピューティング。近い将来、グリッド技術の存在をまったく感じさせない次々世代キャンパスグリッドが登場することになるでしょう。

「現状のグリッドコンピューティング用ミドルウェアはクライアントサーバ型であり、中央制御のためのサーバに障害が発生した場合には、システム全体の運用に影響を及ぼしてしまいます。また、当大学のように複数のキャンパスにまたがったグリッド環境を構築する場合には、中央集権的なアーキテクチャーではなく、制御用サーバ自体も分散して互いに協調して全体最適にジョブを実行することが求められます。このようなニーズを満たすための技術開発を、現在富士通研究所と共同で進めています。」という。(石井氏)

24時間、シームレスに働くグリッドコンピューティング技術が確立すれば、グリッド利用環境は学内から地域企業へと広がると考えられています。産学民共同研究のプラットフォームとして質の高いコンピューティング環境を構築することは、特色を持った大学、企業力を備えた大学として欠かせない要素となるものと思われます。「次世代キャンパスグリッド」の次のステージに期待が集まっています。
特色ある総合研究大学をめざす広島大学様。富士通は今後も情報通信技術基盤の整備により盤石なる研究基盤を築いてゆく広島大学の発展を支援してまいります。

【大学概要】

国立大学法人 広島大学

  • 所在地: 広島県東広島市鏡山1-3-2
  • 学長: 牟田泰三氏
  • 教育理念: 「平和を希求する精神、新たなる知の創造、豊かな人間性を培う教育、地域社会・国際社会との共存、絶えざる自己変革」
  • 学部(学科): 総合科学部、文学部、教育学部、法学部、経済学部、理学部、医学部、歯学部、工学部、生物生産学部
  • キャンパス: 東広島、霞(広島市南区)、東千田(広島市中区)
  • 研究: 文部科学省の「21世紀COEプログラム」採択5件
  • 2004年、法科大学院、外国語教育研究センター、宇宙科学センターなどを設置
  • 設立: 1949年(昭和24年)。2004年4月1日、国立大学法人法によって国立大学法人となる。東広島、霞、東千田にキャンパスを持ち、東広島キャンパスは国内でも屈指の広さを誇る。
  • 学生数: 昼間 10,432人、夜間 586人
  • 教員数: 教授 589人、助教授 461人、常勤講師 110人
  • ホームページ: 「広島大学」ホームページ

【お問い合わせ】

用語解説

注1: キャンパスグリッド技術
ネットワークに接続された複数のコンピュータを一つの巨大なコンピュータのように使用したり、多くのPCの遊休時間を利用して高速演算処理をさせる技術。「グリッド」は本来、送電線を意味する言葉で、ここでは送電線のコンセントから電力を利用するように計算資源を利用できることの意味に使っている。
注2: 総合研究大学
総合研究大学とは、全領域の学部教育プログラムを備え、充実した大学院教育が行われ、課程博士の学位授与状況が良好。活発な研究活動が行われすぐれた研究業績が見られる大学。

本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。