導入事例
有限会社十和田湖高原ファーム様
豚肉の「トレーサビリティシステム」が日本初の運用を開始。
消費者と生産者の確かな信頼関係構築に活躍
[2005年2月17日 掲載]
| 導入事例キーワード | |
|---|---|
| 業種: | 食品 |
| ソリューション: | トレーサビリティシステム |
| 製品: | ICタグ、ハンディターミナル、ホストコンピュータ(PCサーバ) |
| 課題と効果 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 1 | 日本で初の試みとなる豚トレーサビリティシステム(注1)の実用化 | ICタグ、ハンディターミナル、ホストコンピュータで豚1頭1頭の確実な管理を実現 | ||
| 2 | 動き回る生き物にも対応できるICタグを開発すること | 豚に取り付ける耳標(ICタグ)は富士通と共同で試作をくり返し、体の成長や動きに対応できるタグが完成。 | ||
| 3 | 「生産者の顔が見える」仕組みを構き、消費者との信頼関係を確保すること | 他に先駆けて豚肉の生産情報公開インフラを独自に構築、消費者からの声がダイレクトに届くように | ||
| 4 | 伝票処理など一連のオペレーションを効率化したい | 従来紙伝票で処理していた履歴管理が電子化、毎日の更新はハンディターミナルからホストへ即時に可能 | ||
有限会社ポークランド様、有限会社十和田湖高原ファーム様(以下、敬称略)は、秋田県鹿角郡で隣接して農場を経営するグループ会社です。同グループは平成7年の設立以来、SPF豚(注2)の生産に力を注いで来ました。2つの農場で飼育される母豚は3,000頭、肉豚の出荷数は年間75,000頭にのぼり、ハイコープSPF豚(JA全農)を扱う農場では日本最大級です。SPF豚とは、生まれたときから豚特有の5大疾病が存在しないものを指し、スーパーなどの店頭で人気を博しています。同グループは平成16年11月より豚肉で日本初となるトレーサビリティシステムの運用に踏み切りました。そこには「安全な食品」を求める消費者と「食の安全」を追求する生産者が、IT技術によって「大きな安心」を共有できる、理想の関係が生まれています。
導入の背景
急激に高まる「食品の安全性」に対する関心

豊下 勝彦氏
代表取締役
トレーサビリティとは「情報を追跡可能にすること」を意味するもので、ITを活用した情報公開システムのことを指します。食肉でいえば、牛や豚を生まれたときから1頭1頭固有の識別番号で管理し、飼育から加工、さらに流通、売り場までの全履歴を公表する新しい仕組みです。
もともとBSEの発生や産地偽装表示事件などが相次いだことで、食品の安全性に対する関心が急激に高まり、生産地や飼育の詳細な履歴、流通経路を明らかにする必要性が顕在化しました。そうしたニーズに応えるため、富士通はITを活用したトレーサビリティシステムの開発・普及を積極的に推進しています。
現在農林水産行政においても、食品の安全性確保を急務の課題と位置づけ、補助金制度を設けるなどしてトレーサビリティシステムの普及を推し進めています。平成16年7月、有限会社ポークランドと、有限会社十和田湖高原ファームは、豚肉で国内初の「生産情報公表」JAS規格(注3)の認定を受けるとともに、同年11月より「トレーサビリティシステム」の運用を開始しました。
導入の経緯
農場から売り場まで、生産者の「顔の見える」仕組みをつくる
創業時よりSPF豚専門の農場経営を続けて来た同グループでは、健康なSPF豚飼育のために独自の飼育システムを構築。その延長として業界に先駆けて環境ISOの認証を取得したほか、BMW技術(注4)によるクリーンな環境保全型養豚などを実践して来ました。さらに今回、新たにトレーサビリティシステムを導入することで、「農場から売り場まで」顔の見える生産の仕組みを確立しようとしています。
グループ2社の代表取締役 豊下勝彦氏は次のように語ります。「私たちがトレーサビリティの導入検討を始めたのは平成15年の秋頃からですが、それ以前から生産情報のチェックを定期的に行っている取引先もあります。消費者の方々と一緒にこちらに来られ、給餌の情報などに相違がないか調べるわけです。ですから生産情報を公表することの重要性は、トレーサビリティという言葉が生まれる前から感じていました」
平成15年の秋といえば、牛肉の産地偽装事件が世間を騒がせていた頃。その頃より、ICチップを使った生産履歴情報管理の管理システムは、野菜などでは、実証実験などが開始されていました。豊下氏はそれを見たときに豚にも応用できるのではないかと直感したと言います。
システムの概要
ICタグの性能のよさと充実した関連機器で富士通を採用
すでに同グループで稼働しているトレーサビリティシステムは、豚の耳に小さなICタグを取り付け、このタグに個体番号を書き込んで様々な情報の管理を行います。これ自体まったく初めての試みであり、すべて手探りの状態でシステム作りがスタートしました。
「最初に候補に挙がったのは野菜の出荷箱に貼られているのと同じミニチップ。しかし水に濡れると使用できないなど、つねに動き回る生き物には不向きなことが判明。途中2次元バーコードなども候補に上がりましたが、最終的には耳に付けるICタグの性能のよさや、ハンディターミナルといった関連機器がどこよりも充実していたことで、富士通に開発をお願いすることになりました」(豊下氏)
ICタグは何度か試作をつくるなど試行錯誤を経て、直径3センチ・厚さ5ミリほどの円形のものに決定。これは生まれてすぐの豚の耳に取り付けられ、一度付けられた後にはずされることはありません。当然激しい動きや、体の成長に対応できるものでなくてはなりません。
ICタグに書き込まれた個体番号は、ハンディターミナルをかざすことで読みとることができ、これにより1頭1頭が確実に識別できるようになります。個体番号で管理される情報はじつに詳細なもの。出生年月日・母豚のデータから始まり、どのような餌を与えられて育ったかという給餌情報、豚舎の移動状況、病気、薬剤の投与といったデータが、1頭ごとに連携するホストコンピュータに蓄積されていきます。これら一連の作業に専門のエンジニアは必要なく、すべて従来のスタッフにより運用されています。そして蓄積された情報は「生産情報公表」JAS規格とリンクし、信頼できる情報として流通、さらに消費者へと公開されていきます。

導入の効果
消費者との信頼関係構築にダイレクトな手応え
豊下氏はJAS規格の認定を受けた理由について、「生産情報を公表しても、偽装などの事件が起きると情報そのものの信頼性が疑問視されることになる。この問題をクリアするためには、第三者機関に認めてもらうしかないと考えました」と言います。もともと同グループが生産するSPF豚は、抗生物質などの薬剤をほとんど使わないものであることから、情報を公開することで逆に消費者から評価されることにもなります。しかし、情報公開は生産者から流通に、流通から小売りに、小売りから消費者に、一貫した仕組みで運用されなければ意味がありません。
同グループは「生産情報公表」JAS規格の認証取得に当り、JA全農グループと連携して環境整備を進めてきました。その結果、大手量販店との間で日本で初めて、同グループの豚肉を使用した生産情報公表豚肉の販売体制が整うこととなりました。店頭での販売は平成16年11月から既に開始され、大手量販店のホームページで生産者情報を見たという消費者から、直接問い合わせが来るようになったと言います。実際、抗生物質が使用されていないことに共感する声や、驚きの声も届くようになり、安全で質の高い豚肉の供給を目指す同グループにとって、ダイレクトに手応えを感じることができる貴重な場にもなっており、結果としてスタッフの意識高揚につながっています。
将来の展望
計り知れない可能性を持ったICタグの、さらなる有効活用へ
「単に品質を追い求め、豚を農場から市場に出荷して終わりという考えではなく、最終的に食べる側の立場で責任を持って食の安全性を追求したい」と語る豊下氏。またICタグで個体管理をすることは、情報公開のためのインフラとして機能する以外に、生産者としての活用メリットも計り知れないと言います。出荷した後の肉質の格付け情報をフィードバックすれば、格付けの高かった豚肉の履歴をたどり、どのような給餌がよい肉を作るのかなどのノウハウが蓄積可能になります。さらに蓄積されたデータは、種豚の品種改良にも大きな威力を発揮することに。
このように、年間75,000頭のデータが収集できるトレーサビリティシステムのメリットに大きな期待を寄せる豊下氏。今後は現在のシステムを富士通と共同で、より使いやすいシステムに改良していきたいと語ります。そして、将来的に可能であればICタグとGPSを連携させて、豚を完全放牧できれば、さらに理想的な飼育環境が実現できるとも。豊下氏は次なる挑戦に向けて夢を膨らませます。
富士通は先進技術と総合力を駆使して、お客様の挑戦を全力でサポートしていきます。
【会社概要】
有限会社ポークランド/有限会社十和田湖高原ファーム
- 所在地: 〒017-0201秋田県鹿角郡小坂町小坂字台作1-2/秋田県鹿角郡小坂町小坂字台作1-1
- 代表取締役社長: 豊下 勝彦
- 設立: 1995年(平成7年)2月/1997年(平成9年)6月
- 資本金: 1,000万円/1,000万円
- 従業員数: 26名/30名
- 事業内容: 健康で安全な十和田湖高原ポーク「桃豚」を生産。ハイコープSPF豚(JA全農)の養豚を手がけ年間75,000頭を出荷。
- ホームページ: 「有限会社ポークランド」ホームページ
【お問い合わせ】
用語解説
- 注1: トレーサビリティシステム
- 肉や野菜など生産物の履歴を追跡できる仕組み。食品の安全性確保を目指し、生産履歴を消費者に情報開示することが目的。万が一問題が起きた場合、段階ごとの原因調査、回収処理が容易。偽装や不正防止にも効果がある。
- 注2: SPF豚
- Specific Pathogen Free の略。豚の発育を妨げる特定の病原菌が無い豚のこと。特定の病原菌とはマイコプラズマ肺炎、豚赤痢、萎縮性鼻炎、オーエスキー病、トキソプラズマ感染症の5つ。
- 注3: 「生産情報公表」JAS規格
- 食品の生産情報を正しく伝えていることを、第3者が認証する新たなJAS規格。平成15年12月から実施された牛肉に続き、豚肉は平成16年7月から実施されるようになった。
- 注4: BMW技術
- Bはバクテリア、Mはミネラル、Wは水の頭文字で、畜産の廃棄物や食物クズ等を、バクテリアと水と鉱物の力で浄化する技術。自然の自浄作用をお手本に「よい水」「よい土」をつくり出す技術。
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