導入事例
ソニーマーケティング株式会社様
高精度、高性能な需要予測と納期回答
生命線となるソニーマーケティングの戦略システムを富士通と構築
[2004年7月27日 掲載]
| 導入事例キーワード | |
|---|---|
| 業種: | 流通 |
| ソリューション: | 販売系SCM(DCM)(注1) |
| 製品: | GLOVIA/SCP、PRIMEPOWER、ETERNUS、Interstage |
| 課題と効果 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 1 | 短い製品ライフサイクルの中で、確実に利益を確保する | 正確な需要予測による適正な需要情報を立案。機動力と柔軟性のある体制作りを実現 | ||
| 2 | 受注を効率化すると共にサービスレベルを維持する | 受注と同時に納期を回答かつ納期を遵守。正確な納期回答と納期を遵守することにより、顧客満足度の向上を目指す | ||
| 3 | 短期間でハイパフォーマンスなシステムの構築 | トータルソリューションベンダー富士通に依頼し、2システムをわずか2年で構築。1日10万件のオーダーにそれぞれ0.1秒で物流リードタイムを加味した納期計算 | ||

デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、DVDレコーダ、薄型テレビ・・・・、成長が著しいデジタル家電(注2)市場。ソニーは、このデジタル家電のリーディングカンパニーとして、新たな市場を切り拓いてきました。しかし、市場ニーズの急速な変化と技術革新により製品のライフサイクルは短期化し、デバイスの価格変動により安定した利益の確保が困難となっています。そこで、ソニーマーケティング様が構築したのが、製造や物流と連携した新販売系SCM(注3)システム「需要情報作成システム」と「引当・納期回答システム」です。量販店などの実売状況や関連情報により、精度の高い需要予測を実現。適正かつ効果的な販売戦略を立案できる、機動力と柔軟性のある仕組み作りに成功しました。また、オーダーを受注すると同時に正確な納期を瞬時に回答し、かつ納期を遵守することで、サービスレベル(注4)を向上させています。
導入の背景
デジタル家電に求められる機動力と
柔軟性のあるプラットフォーム
ソニーはデジタル家電のリーディングカンパニーであり、国内でその製品のマーケティングとセールスを担当しているのがソニーマーケティング様です。このデジタル家電には、日本の製造業が経験したことのない、いくつかの特徴があります。
その第一は、市場参入が簡単で極めて競争が激しいこと。特殊技術に秀でたベンチャー企業が市場に参入することもありますし、海外ベンダーが競争に参加して来ることもあります。第二は、技術革新や需給のバランスによって、部品となるデバイスの価格が激しく変動することです。例えばHDDや液晶パネルの価格が上昇すると、製品の利益を圧迫したり、利益の確保ができなくなったりします。第三は製品の陳腐化が早く、ライフサイクルが短くなっていること。大量生産した製品が陳腐化してしまうと、膨大な量の不良在庫を抱えることになります。
従来、いち早く大量に作って大量に売ることが、成功のポイントでした。しかし、デジタル家電の場合、不用意な大量生産や不良在庫は企業の存続さえ危うくします。売れないと判断したら、即座に生産をストップする、デバイス在庫を別の製品に展開する、新たな製品を企画する、などの対応が早急に必要になります。ここに正確な需要予測の必要性があります。そして、それをベースにした機動力と柔軟性のある生産体制が不可欠となるのです。
導入の経緯
短期間でハイパフォーマンスなシステム構築の必要性から富士通を選択

松下和夫氏
ISS部
統括部長
プロジェクトの発足は2001年の4月。ソニーマーケティング様が開始したプロジェクトでしたが、関係するグループ企業の参加が不可欠と判断し、生産を担当するソニーイーエムシーエス株式会社(EMCS)、配送を担当するソニーサプライチェーンソリューション株式会社(SSCS)も巻き込んだ、ソニー全体のビッグプロジェクトとなりました。
新プラットフォームの核となる戦略システムが「需要情報作成システム」と「引当・納期回答システム」です。「需要情報作成システム」は、販売数量を予想し、EMCSでの生産を調整します。また、受注を完全にオンライン化するため、従来のように営業担当者が納期を答えることができません。このため、お客様から注文を受けると、その場で納期を回答するシステム「引当・納期回答システム」を構築し、サービスレベルを維持しています。
「『需要情報作成システム』と『引当・納期回答システム』は極めて独自性が強く、DCMの生命線を握っているシステムです。当初ERPパッケージの採用を計画していましたが、これを撤回して独自にシステム構築をすることにしました。このときにベースとなったのが『ASCA』です」。「ASCA」はパソコン「VAIO」の販売の際に構築したSCMシステムで、ソニーグループ内のベストソリューションに選ばれたほど、優れたシステムとして知られています。そして、このASCA構築に協力したのが富士通であり、今回もパートナーとしてシステム構築に参加しました。
「富士通にはビッグプロジェクトをまかせるに足る十分な実績と信頼感がありました。また、今回は極めて短期間でハイパフォーマンスなシステムを構築しなければなりません。それには、ハードやOS、ミドルウェア、アプリケーションに至るまでトータルに提供できる富士通がベストな選択でした」と、同社ISS部 統括部長であり、今回のシステムリーダーであった 松下和夫氏は語ります。
2002年4月には富士通の採用を決定。翌5月から「需要情報作成システム」の構築に入り、翌年2003年4月から稼働しています。「引当・納期回答システム」は2002年11月からシステム構築に入り、2004年5月にカットオーバーしました。
システムの概要
受注システム(ERP)とリアルタイムにリンクし正確な納期を回答
「需要情報作成システム」では量販店の協力を得て、実売データを収集。これに在庫情報や各種関連情報を加え、個々の製品ごとに33週先までの需要を予測します。この予測データを製造を担当するEMCSに転送して、生産を調整します。
「引当・納期回答システム」は、工場での生産予定や国内に散在している在庫から、受注の際に納期を回答します。在庫がなかったら工場の生産計画を見て、その完成日を確認。それでもない場合は、新たに類似製品を再検索。さらに、パソコンとディスプレイなどのようなセット品の場合、それぞれに引き当て、遅い方を納期とします。これら引き当て対象となるデータベースは1,000万件にも達し、1日10万件のオーダーに、それぞれわずか0.1秒で物流リードタイムなどを加味した納期計算をしています。
このパフォーマンスを得るため、32CPU、メモリ104GBの極めて高性能なUNIXサーバを冗長構成で用意しました。もっとも安易にハードウェアに性能を依存したわけではありません。「システム化にあたって、新たなビジネスモデルを完成させ、これを可能にするシステム全体のアーキテクチャーを確定しました。その上でアプリケーションを組み、ハードウェアを増強していくとリニアに性能が上がっていく仕組みにしました。このようなステップを追った構築が、今回のプロジェクト成功の秘訣といえるでしょう」と、(松下氏)。

将来の展望
オールソニーのサービスのシナジーを
最大化するユビキタス・バリューチェーンへ
「戦略システムであるが故に、ビジネス環境の変化に対応して、機能の改善や追加が必要となります。進化が必須であり、それにノンストップで対応していかなければなりません。1日10万件のオーダーがストップしたら、その被害は測りしれません」と、松下氏は今後の課題を語ります。
また、最終的にはユビキタス・バリューチェーンを目指しているといいます。「今回はハード製品のサプライチェーンでしたが、ソニーグループの商品はハードウェアばかりではありません。映画や音楽そして保険もあります。これらオールソニーのサービスのシナジーを最大化できるよう、ソニーのエレクトロニクスビジネスの基盤を完成することで、真のバリューチェーンとなることができるでしょう」と、大きな夢を持っています。
今回の「引当・納期回答システム」は「GLOVIA/SCP」のパッケージ製品として、販売することも決定しています。チャレンジャーとして、新たな市場造りをしてきたソニー。その挑戦を、ITの側面から富士通が支援しています。
【会社概要】
ソニーマーケティング株式会社
- 所在地: 〒108-0074 東京都港区高輪4-10-18
- 代表取締役社長: 宮下 次衛
- 設立: 1997年4月1日
- 資本金: 80億円
- 従業員数: 約3,600名(2004年4月1日現在)
- 事業内容: 日本国内における、ソニー商品のマーケティングとセールス
- ホームページ: ソニーマーケティング株式会社ホームページ
【お問い合わせ】
用語解説
- 注1: DCM
- Demand Chain Managementの略。刻々と変化する市場の需要状況に対応するため、小売店舗における商品の品揃え・発注の最適化を図るための、流通業における新しい経営管理手法。
- 注2: デジタル家電
- 従来のアナログ家電に対するコンシューマー向け電気製品。文字どおりデジタル製品であり、高度に集約された半導体を主な部品としている。そのインパクトは大きく、「新・3種の神器」と呼ばれる薄型テレビ、DVD、デジタルカメラを中心に、デジタル家電が日本の景気を牽引している。
- 注3: SCM
- Supply Chain Managementの略。原材料や部品の調達から製造、流通、販売に至るまでの供給の流れをサプライチェーンととらえ、そのビジネスプロセスの全体最適を目指す経営手法。または、これを実現する情報システム。
- 注4: サービスレベル
- お客様に提供するサービスの品質のこと。そのレベルを目標値として設定し、保証するSLA(サービスレベルアグリーメント)という考え方もある。
本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。
