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導入事例
JA福光様

米の生産・流通過程の情報化により
品質確保と信頼性向上の実現へ

[2003年12月10日 掲載]

目次・要約

【導入の背景】
競争激化する米市場で生き残るために
米政策改革大網を受けた改正食糧法(注1)の施行により市場原理を導入。消費者の食に対する安全意識の高まり
【導入の経緯】
生産者の心と情報を消費者へ伝えるトレーサビリティシステム
(注2)
生産者の米作りに対する思いに応えるシステム作り。食のインフラづくりの中核となる生産履歴管理システム
【システムの概要】
市場を重視し売れる米作りへの第一歩
卸や小売店はIDとパスワードでアクセスすることにより米の栽培履歴等の情報をWebで見ることができる「ふくみつ安心システム」
【今後の展望】
第二ステップは農家の情報活用の促進、そして消費者への情報開示へ

米の市場競争時代を勝ち抜く、ブランド戦略の要として
JA福光様 米穀トレーサビリティシステム「ふくみつ安心システム」稼動

BSEや食品表示をめぐる問題などにより消費者の間に食の安全性に対する関心が高まっています。そうした消費者の声に応えるキーテクノロジーとしていまトレーサビリティが注目を集めています。トレーサビリティは商品の生産・流通過程を追跡する仕組みです。もともとは製造業で導入が進められていました。食の分野で普及したのは牛肉のBSE問題への対策からです。
2003年11月、富山県のJA福光様のもとで、日本の主食である米のトレーサビリティシステムが稼動開始しました。その名も「ふくみつ安心システム」。消費者へ安心を届けるシステムはブランド力を高める販売戦略の要としても大きな期待が寄せられています。「ふくみつ安心システム」の中核となるシステムは、富士通の生産履歴管理システムをベースに、JA福光様のニーズに合わせてカスタマイズしたものです。第一段階として卸・流通加工業者へ生産履歴情報を開示。生産者による情報活用の促進、消費者への情報開示といった次の段階に向けた歩みがすでに進められています。

導入の背景

競争激化する米市場で生き残るために

齊田 一除
福光農業協同組合 常務理事

富山県の最南端、石川県との県境に位置し、医王山山麓に広がる豊かな大地と透明感のある川に抱かれた福光町は、農地の90%以上が水田です。
「12月中旬から2月半ばくらいまで雪に覆われてしまう福光町に最も適した農作物が米です。だから米作りへのこだわりはとても強いものがあります」と福光農業協同組合 常務理事 齊田一除氏は話します。JA福光様では、営農指導から資材提供、カントリーエレベーター(注3)による保管・管理まで、「安全、安心、新鮮」を信条に米生産のすべてを支援しています。
いま日本の米作りは大きな転換期を迎えています。2002年12月に策定された政府の米政策改革大綱(注4)を受けた改正食糧法が平成16年度(2004年度)から施行。これにより段階的な減反や国の生産調整がなくなり市場原理が導入されます。市場を重視した売れる米作りが求められています。
「食品分野においていま消費者の間で最も関心が高いのは安全性です。米政策改革大綱でもその点が大きく取り上げられています。我々は安心・安全を基本に米の品質に徹底してこだわってきました。福光のコシヒカリのブランド名は「ふくみつ安心米」です。期せずして米政策改革大綱が発表される少し前に名づけました。また、消費者を招き田植えや稲刈りをするなど消費者との間で顔の見える関係も築いてきました。今まで一心に取り組んできたこと、これから取り組もうとしていることを消費者の皆さんにもっと知っていただきたい。トレーサビリティシステムの導入は今までの取り組みの一環であり、競争激化する米市場で生き残るための販売戦略の要になると考えています」(齊田氏)

導入の経緯

生産者の心と情報を消費者へ伝えるトレーサビリティシステム

山田 幹夫
営農部 部長兼農産物検査課長

JA福光様の考えるトレーサビリティシステムは、単に生産履歴等を情報公開するだけではなく、生産者の米作りに対する思いに応えるシステムであることが求められました。
「米は日本の食生活の中心です。米作りに情熱を注いでいる生産者の心と情報を伝え、生産者と卸、消費者の絆を深めていく、そんなシステムにしたい。そうした我々の思いや考え方に富士通がとてもマッチしていました。それが富士通を選択した一番の理由です。もちろん技術力や農業関係の情報力、Fsas(富士通サポートアンドサービス株式会社)のサポート力も大きなポイントになりました」とJA福光 営農部 部長兼農産物検査課長 山田幹夫氏は富士通を選択した理由について語ります。
富士通は、ITベンダーでは珍しく農林水産業向けの大きな組織できめ細かなお客様のニーズに対応しています。食のインフラづくりに貢献する中で培ってきた技術と情報力が「ふくみつ安心システムには、ITサーバにPRIMERGY C150、ファイアーウォールにNetShelter/FWを採用。高度なセキュリティを基盤に、優れたコストパフォーマンスと運用性、拡張性を実現しています。また、WWW公開サーバにデータを置かず、内部にトレーサビリティデータベースを設置することで外部からのデータ改ざんを防止。販売管理や産米管理(出荷管理)システムとも連携し、生産履歴情報に、品種、数量、検査等級、検査日、ロット番号、農薬・資材の購入歴、集荷・販売・流通の履歴などを加え、データベースの充実を図っています。

システムの概要

市場を重視し売れる米作りへの第一歩

木戸 正盛
指導特産課長兼農産物検査第二係長


狭田 豊
営農部 指導特産課 電算係長

「ふくみつ安心システム」の特徴は、情報開示の側面と営農指導支援の側面が表裏一体となっている点にあります。JA福光様が登録した卸や小売店はIDとパスワードでアクセスすることにより米の栽培履歴等の情報をWebで見ることができます。また、JA福光様の営農指導員は栽培履歴等の数値化された情報をもとに農家に対して個別にきめ細かな営農指導を行えます。そうした様々な取り組みの基本となるのが栽培履歴です。
「ふくみつ安心システムを前提として農家にはロット選択をしていただきます。ロットは、栽培指針に基づき生産過程が明らかなものを「一般ロット」、農薬・肥料を特定して生産されたものを「集約ロット」、実需者側の要望による特定資材を使ったものを「特別ロット」と3パターンに分けています。ロットを選択し記帳された栽培履歴は、各生産組合長が資材等の適正使用等をチェックし、さらにJA福光の営農指導員が検証を行い、コンピュータに入力する際に営農指導特産課が再検証します。「一般ロット」から「集約ロット」「特別ロット」へ、福光町農業の向かうべき道筋を示し、市場を重視した米作りに対する農家の皆さんの意識改革を進めることも重要なテーマでした」とJA福光 指導特産課長兼農産物検査第二係長 木戸正盛氏はシステム導入のもうひとつの重要なテーマについて説明します。
2003年8月の入力時、栽培履歴は100%提出されました。生産者の間での安心・安全に関する理解と関心の高さが表れています。生産履歴登録の徹底を図り、農薬取締法等(コンプライアンス)のリスク管理や品質判定による産地ブランド力の強化を実現する「ふくみつ安心システム」。それは市場を強く意識した売れる米作りへの新たな一歩でもあります。

[図] 「ふくみつ安心システム」全体イメージ


苦労したのは検証作業と情報開示の内容の検討

JA福光様の組合員は約3,621名。今回、「ふくみつ安心システム」に取り組んだ生産農家は約1700名。記帳された栽培履歴は2000枚以上に及びました。
「栽培履歴はOCRで読み込むのでそれほど手間はかかりませんでした。それよりも、二週間足らずで2000枚以上の栽培履歴をひとつずつ検証していく作業が大変でした。生産組合の検証作業協力がなければなかなか情報開示の体制はつくれなかったと思います。また、情報開示といった側面では個人情報に関することに頭と神経を使いました。どこまで開示できるのか。開示内容を決めるのにかなりの時間を要しました」とJA福光 営農部 指導特産課 電算係長 狭田豊氏は検証作業時を振り返ります。

今後の展望

第二ステップは農家の情報活用の促進、そして消費者への情報開示へ

すでに「ふくみつ安心システム」は第二ステップへと歩みを進めています。第二ステップは農家の情報活用の促進が大きなテーマとなっています。
「栽培履歴は農家の皆さんにとって日々の汗の結晶です。その大切なデータを情報開示する一方、農家の皆さんにも情報を活用していただきたいと考えています。Webで栽培履歴はもとより品種、数量、検査等級といった情報を手軽に閲覧でき、品質判定も農家の人自身で行えるなど、米作りに関する技術と意識向上の両面をサポートできるような機能拡張を行っていきたいと思います」(狭田氏)
現状では卸や小売店を対象に情報開示を行っていますが、将来的には消費者への情報開示も視野に入れています。米市場の競争時代の到来は、米作りへの情熱とこだわりをもったJA福光様にとって大きな可能性を秘めています。これからも米の新しい時代を拓くJA福光様の挑戦は続きます。
食の安心・安全は21世紀の社会基盤において最も重要なテーマのひとつです。富士通では農業分野で培ってきた技術とノウハウを駆使し、今後も先進のトレーサビリティシステムの提供等を通じ、食の安心・安全に貢献していきます。

【企業概要】

福光農業協同組合 (JA福光)

  • 所在地: 〒939-1661 富山県西砺波郡福光町天神241番地
  • 正組合員: 3,621人
  • 准組合員: 1,705人
  • 事業内容: 信用事業、共済事業、購買事業、販売事業、指導事業
  • ホームページ: JA福光直売所ホームページ

【お問い合わせ】

用語解説

注1: 改正食糧法
米政策改革大綱を受けた改正食糧法が平成16年度(2004年度)から施行されます。農業者を主役にした生産調整と消費者を重視した流通体制への転換方針が示されています。
注2: トレーサビリティ
英語のtrace(足跡をたどる)とability(できる能力)を合わせた言葉。測定器の検定など技術系の用語としては昔から知られています。また、商品の生産・流通過程を追跡する仕組みとして製造業ではすでにトレーサビリティシステムの導入が進められています。食の分野では牛肉のBSE問題への対策から注目を集めました。食の安心・安全を支えるキーテクノロジーとして、食肉をはじめ、野菜、米、魚など生鮮食品のほか加工食品も対象に、食のトレーサビリティへの取組みが広がっています。
注3: カントリーエレベーター
カントリーエレベーターは、大型乾燥機とサイロ(貯蔵施設)がエレベーターによりつながっている、籾の乾燥・保管施設で、米の品質保全と安定供給を目的としています。
注4: 米政策改革大綱
2002年12月、政府は米政策改革大綱を決定。21世紀の食料供給体制を築くために「米のあるべき姿」の実現を目指すもので、コメの生産調整(減反)配分を平成20年度までに廃止し、農業者や農業者団体が主体的に調整する体制への移行を柱とし、需要に応じた売れる米作りを促しています。

本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。