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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2014-3月号 (Vol.65, No.2)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2014-3

特集:「環境」

本特集号では,富士通グループの環境活動をテーマに,持続可能な社会の実現に貢献するソリューションや環境に配慮した製品開発,および社内外で実践している温室効果ガス排出量の削減など各種取組みを紹介します。


環境本部
本部長
竹野 実
環境本部
本部長 竹野 実 写真

環境特集に寄せて(PDF)

富士通グループは,グローバル企業として環境への配慮を全てのビジネスに関わる重要な共通基盤と位置付けて製品やサービスを開発・提供するとともに,ICTの活用を通じて,低炭素・資源循環・自然との共生など社会全体の環境課題解決に向けて取り組んでいます。

特集:環境 目次〕

総括

  • 富士通グループの環境戦略

社会・環境イノベーションを支える研究開発

  • 次世代スマートシティを実現する環境負荷低減技術

持続可能な社会の実現に貢献する先端グリーンICT

  • 持続可能な社会の実現に貢献するソリューション
  • ICTを活用した最適工場マネジメントソリューション
  • 大規模シミュレーションに基づく自然エネルギーの最適運用
  • 環境汚染の見える化による環境品質改善への取組み
  • ICT活用による生物多様性保全

環境配慮製品の開発と提供

  • 製品のライフサイクルを通じた環境配慮
  • 製品を支える先端環境技術
  • 富士通グループの環境に配慮した製品

バリューチェーン全体での環境配慮の追求

  • 工場・事業所における地球温暖化防止の取組み
  • 環境配慮型データセンターの推進
  • 先進的な環境設備の導入と運用
    ~地中熱採熱システム・新廃水処理システム~
  • 富士通グループのグリーン物流の取組み
  • 富士通グループのグリーン調達の取組み

特集:環境


総括

富士通グループでは,企業および社員の行動の原理・原則を示した「FUJITSU Way」の中に「環境」を盛り込むなど,環境を経営の最重要項目の一つとして位置付けている。また,ICTの力によるヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティの実現を新たなビジョンとして,ICTの新領域である,スマートシティ,エネルギー,水供給,交通,農業・林業・水産業,医療などの分野においても,人に優しい豊かな社会の実現,社会全体の持続可能な発展に貢献することを目指している。これらの考え方に基づき,2013年度からの「第7期環境行動計画」では,お客様や社会に貢献する活動を拡大するだけでなく,環境起点でのお客様アプローチを強化することで,ビジネスと同軸の環境活動を推進している。
本稿では,富士通グループの環境経営の枠組みと,それに基づいて実施している自らの環境負荷低減に関する取組みについて紹介する。また,お客様の環境経営や環境負荷低減を富士通のソリューションで支援する事例を取り上げる。

山口 泰弘, 永宮 卓也, 青山 信秀, 竹野 実

社会・環境イノベーションを支える研究開発

人口爆発による水や食料の不足,気候変動,資源・エネルギーの枯渇,水・土壌・大気汚染,生物多様性の崩壊などの環境問題が急速な勢いで加速している。これらの問題を解決し,持続可能で豊かな社会にしていくためにも,ICTの力を利用して地球環境保護と経済成長を両立したグリーン成長を達成する必要がある。更に環境のみならず,農業,エネルギー・スマートシティ,交通,医療,教育などの社会問題を解決するための研究開発を行っていく必要がある。富士通は,人に優しいヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティを実現し,持続可能性の限界を引き上げるとともに種々の情報を活用し,新たな価値を見出し,社会にイノベーションを生み出すことを目指していく。
本稿では,社会・環境に関するイノベーションを支える研究開発のうち,次世代スマートシティにおける環境負荷低減を実現する「M2Mを支えるエネルギーハーベスティング技術」「環境マネジメント技術」「環境観測技術」を紹介する。

渦巻 拓也

持続可能な社会の実現に貢献する先端グリーンICT

近年,世界は気候変動や生物多様性の損失など地球環境問題の深刻化や,人口増加による資源,エネルギー,食糧の供給問題,都市化に伴う社会問題の増加など,様々な課題に直面している。富士通グループは,このような課題解決への貢献を目指し,「ICTソリューションの提供による温室効果ガス(GHG)排出量削減」と「持続可能な社会の実現に貢献するICTソリューションの提供」を推進している。
本稿では,それぞれに関する富士通グループの考え方や取組み,具体的な事例について紹介する。ICTソリューションの提供によるGHG排出量削減については,富士通のICTサービス「グローバルコミュニケーション基盤」および「生命保険会社営業職員タブレット端末」の導入によるCO2削減効果など,最近の評価事例と国際標準化動向を紹介する。持続可能な社会の実現に貢献するICTソリューションの提供については,最近注目が高まっている農業分野の事例を紹介する。

山崎 誠也, 飯田 憲一, 清宮 悠, 井岡 紘子

昨今,製造業の課題の一つに,エネルギーコスト削減がある。この背景には,内部的な要因(生産台数の増産など)もあるが,外部的な要因(エネルギー料金の値上げ)が大きい。従来の製造業は,エネルギーコストを削減するためにエネルギー使用量の「見える化」など,様々な施策を実施してきているが,更なるエネルギー使用量の削減が難しくなってきていた。
本稿では,更なるエネルギー使用量を削減するために,従来では対策を実施できていなかった生産比例分エネルギーの対策に着目し,エネルギー使用量と生産台数との相関およびバラツキを見ながらエネルギーを削減していく手法,およびソリューション事例について論じる。また,エネルギーはもちろんのこと,品質,納期,原価,労働安全などといった,工場全体の課題を解決するためのスマートファクトリの実現についても論じる。

及川 洋光

太陽光発電をはじめとする自然エネルギーは,持続可能で豊かな低炭素社会実現の鍵として期待されているが,不確実な天候変化に伴って出力が大きく変動するため,需要に合わせた効果的活用が難しいという問題がある。例えば,太陽光発電は,電力需要が増大する昼間や夏季に,より多くの電力を出力するというピーク電力低減に適した性質があるものの,ピーク電力低減効果を高めるためには,予測困難な出力変動に適切に対応する必要がある。
本稿では,この問題の解決に向けて開発した蓄電池の最適運用技術について,富士通川崎工場内に構築した実証システムの運用結果に基づく検証結果を含めて紹介する。

仲尾 由雄, 谷口 剛

国内の環境汚染問題は鎮静化していたが,昨今,PM2.5(粒径が2.5 µm以下の物質)による健康への影響懸念など,新たな環境問題が顕在化し,その対策が急務となっている。現在PM2.5は,健康被害との関係性や,その動態など,まだ解明できていないことが多い物質である。富士通では,様々な品質の「見える化」をサービス提供しており,環境品質の見える化についても,より良いサービス提供のため,計測技術や成分分析技術の精度向上に取り組んでいる。PM2.5もこの取組みの中の重要なテーマの一つとして捉えている。
本稿では,現在のPM2.5問題についての課題を明らかにし,富士通の分析技術や見える化技術向上への取組みを紹介する。

木谷 晃久, 細田 忍, 清板 勝, 安田 匡志

経済活動を含めた私たちの生活は,生物多様性を基盤とした生態系からの恩恵によって成り立っている。しかし私たち人間活動の拡大により,生き物の生息域は狭められ,生態系を構成する種の数は加速度的に減少し,その影響によって人々の生活基盤が崩れ去りつつある。2010年に生物多様性条約事務局により発表された「地球規模生物多様性概況第3版」によると,いま世界の生物多様性は一部の分野で取組みが進みつつあるものの,現在も損失が続いており,今後10~20年の対応が重要とされている。このような地球規模の生物多様性の損失を止めるため,国や自治体,NPO,研究機関と企業が連携し,生物多様性保全に取り組んでいく必要がある。富士通グループは,2009年に「富士通グループ生物多様性行動指針」を策定し,自らの事業活動による影響の低減に努めるとともに,ICTを活用して様々なステークホルダーとともに生物多様性保全に貢献することを重点施策に掲げて活動を展開している。
本稿では,富士通グループの生物多様性保全への取組みへのICT活用事例として,市民参加型の生物調査を可能とした携帯フォトシステム・クラウドサービスと,絶滅危惧種であるシマフクロウ生息域調査への音声認識システムを紹介する。

前沢 夕夏, 畠山 義彦, 斎藤 睦巳, 廣田 福太郎

環境配慮製品の開発と提供

富士通グループでは,製品の環境配慮設計を推進し,製品のライフサイクル全体を見据えた環境負荷の低減に取り組んでいる。節電・省エネ技術による消費電力の削減,省資源化,リサイクル率向上,化学物質管理による有害物質の排除などを目指して,1993年度より製品環境アセスメントを実施している。また,富士通グループの環境配慮型製品であるグリーン製品の開発に加え,環境配慮においてトップ要素を持つスーパーグリーン製品の開発や,環境効率ファクターを導入して製品の環境効率向上を目指した取組みなど,環境負荷を低減するだけでなく,より高いパフォーマンスを備えた製品をお客様に提供することを目標に活動を推進してきた。更に,2013年度からは,特に製品の「エネルギー効率向上」と「資源効率向上」を重要テーマと位置付け,環境配慮型製品の開発を推進している。
本稿では,富士通グループにおけるこれまでの環境配慮設計の取組みの概要と,第7期富士通グループ環境行動計画(2013~2015年度)における,製品のエネルギー効率および資源効率の向上の取組みについて紹介する。

柳川 昌史, 武者 祐太, 川田 宏幸, 篠村 理子

現在のものづくりにおいて環境配慮は必須であり,富士通研究所では製品を支える先端環境技術の開発に取り組んでいる。塗料などに含まれる揮発性有機化合物(VOC)は,地球環境保全のために削減が求められている。これまで,VOCを含まない水性塗料をICT機器に適用するのは,高い乾燥温度と高度な塗膜性能が必要であることから,困難であった。この課題に対して,塗膜となる樹脂にコア・シェル構造のエマルジョンを適用することにより,ICT機器向けの塗装性と塗膜性能をクリアし,有機溶剤の使用量を約80%削減した。また,VOCと並んで有害性が懸念されるフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)は,日本・米国・欧州において規制されており,欧州RoHS指令では,次期規制候補物質として検討されている。しかし簡易な受入検査方法では,規制値に対する検出感度が不十分であり,更に試料成分の影響を受けるため検出することが困難であった。この課題に対して,試料中のフタル酸エステル類を分離して濃度を高めることができる蒸気捕集法を開発した。この方法で作製した試料を,FT-IRで分析することにより,元の試料におけるフタル酸エステル類の含有の判別下限を従来より1桁向上した1 wt%程度にでき,受入検査への展開を可能とした。

竹内 文代, 野口 道子, 尾崎 光男, 木村 浩一

富士通グループでは,気候変動・エネルギー問題および資源の有効活用といった様々な社会課題の解決に貢献するため,製品の環境配慮を推進し,社会基盤(インフラ)からオフィス・家庭まで製品・サービスをグローバルに提供している。今回は,環境に貢献する優れた製品として社外および社内の表彰制度において受賞した中から,UNIXサーバ:SPARC M10,コンテナ型データセンター:FUJITSU Datacenter Product Modular Data Center,ATM(自動預金支払機):FACT-V X200,汎用型蓄電システム:FPSSオフィスⅠ型,ルームエアコン:「ノクリア」Xシリーズの五つの代表的な製品を取り上げる。UNIXサーバは,「平成25年度地球温暖化防止活動環境大臣表彰」において,技術開発・製品化部門で環境大臣表彰を受賞した。コンテナ型データセンターは,「グリーンITアワード2013」において,審査員特別賞を受賞した。また,そのほかの製品は,富士通グループの表彰制度である環境貢献賞を受賞した。
本稿では,これらの製品で開発・採用した新技術,および省エネ効果などの環境に配慮した設計の概要を中心に紹介する。

恩田 真子, 松田 岳久, 加文字 克, 福田 博, 杉山 慎治, 御代 政博

バリューチェーン全体での環境配慮の追求

先進国の温室効果ガス排出量の削減目標を定めた京都議定書の第一約束期間(2008~2012年)が終了し,2013年度以降の新たな国際的な枠組み構築のための交渉が行われている。日本では東日本大震災以降,原発問題も含めたエネルギー・環境政策が見直されているところであるが,産業界においては自主的な2020年までの削減目標を設定し,活動を継続している。
本稿では,富士通グループの工場・事業所における地球温暖化防止の取組みとして,温室効果ガス排出量削減の目標の設定と実績,従来から継続しているファシリティ設備を中心とした対策に加え,生産プロセスにおける省エネ技術開発,再生可能エネルギーの導入推進などの活動事例について紹介する。

角野 夕一, 北嶋 雅之, 石川 鉄二, 川口 清二, 金光 英之

環境配慮型データセンターという言葉が登場し,業界で様々な活動が始動したのは2007年頃からである。2011年の東日本大震災を経て,データセンターは社会インフラとしての重要性が改めて再確認されるとともに,電力料金の値上げが深刻なインパクトとなった。このような経緯で環境配慮型データセンターの推進は,長期視点で取り組むべき重要テーマとなってきた。富士通はこの推進に向けて,ICTの環境特性とセンターファシリティ機能のギャップに着目した省エネ技術革新,多様な事業・環境条件で運用されている100以上のALL FUJITSUデータセンターで目標を共有した環境パフォーマンス向上の推進,環境パフォーマンス評価方法の標準化への貢献の三つの軸で取り組んでいる。
本稿では,これらの取組みについて紹介する。

小林 賢造, 永薗 宏, 金光 英之, 井ノ久保 淳一

プレスリリース西日本地区のメインデータセンター「明石システムセンター」に新棟を開設

製造・開発拠点における自然エネルギーおよび資源リサイクルなどの更なる高効率な環境負荷低減技術の普及は社会的に求められている企業の義務である。しかし,これらの新規技術の導入はその拠点の立地環境,事業形態などの特性により様々な導入制限があり,そのため環境負荷低減の効果や,費用対効果も大きく左右される。特に,富士通長野工場のようなプリント基板製造のユースポイント(製造・開発プロセスなど)とディスチャージポイント(廃水処理,廃棄物など)の安定運用を両立したシステムの構築は拠点操業においての絶対条件である。この厳しい条件の中で工場施設運用を担う富士通ファシリティーズでは,この課題を踏まえつつ地中の熱をエネルギー源にして製造ラインに直接利用できる「地中熱採熱システム」と,同じく製造から排出される銅廃液中の銅資源を従来とは異なった方式を用いて高効率で回収・リサイクルできる「新廃水処理システム」を製造拠点として国内で初めて導入した。
本稿では,この二つの新技術の性能とともに技術選定,基本設計,試運転の導入プロセスの中で富士通長野工場の特性に合わせてシステムの能力を最大限に引き出した改善内容および課題克服のノウハウについて紹介する。

矢澤 靖史, 森 祐一, 滝沢 政人, 矢澤 正浩, 橋爪 正明

2006年4月に「エネルギーの使用の合理化に関する法律」の改正(通称:改正省エネ法)が施行され,輸送事業者だけでなく荷主事業者も物流における省エネ対策への取組みが強く要求されている。富士通は,一定規模以上の貨物輸送(年間輸送量3000万トンキロ以上)を発注する「特定荷主」であり,毎年,輸送CO2 排出量の実績,省エネ計画などの報告が義務付けられている。こうした状況の中,富士通は,グループ全体でサプライチェーン全体にわたる物流に伴う環境負荷の削減活動,すなわちグリーン物流活動を積極的に推進しており,様々な施策に取り組んでいる。また,第7期環境行動計画では,富士通グループの輸送業務(国内輸送,海外域内輸送,国際輸送)について,グループ全体で「輸送における売上高あたりのCO2排出量を2015年度までに2011年度比4%以上削減する」ことを目標とし,グローバルでのグリーン物流活動を展開している。
本稿では,この目標達成に向け,富士通グループが注力している「モーダルシフトの拡大」「積載効率向上による車両台数削減」などの具体的な取組みについて,事例を交えながら紹介する。

丹羽 和彦

富士通グループでは環境保全を経営の最重要事項の一つと位置付け,全ての事業領域で計画的,継続的に環境活動を展開している。資材調達においても同様で,グリーン調達活動の推進により,お取引先を通じたバリューチェーン上流の環境負荷低減を目指している。2001年のグリーン調達活動スタート以来,納入品の法規制遵守と,お取引先の環境活動推進の二面を考慮しており,どちらも重要と考えている。このため,お取引先における環境マネジメントシステム(EMS)の構築推進から始まり,その後,法規制動向に対応した規制化学物質非含有の徹底や製品含有化学物質管理システム(CMS)の構築に取り組んでいる。また国際的な環境問題の動向を考慮してCO2排出削減,生物多様性保全,水資源保全を活動テーマに順次加えている。また富士通グループは,活動を要求するだけではなく,お取引先において適切な対応ができるよう様々な形で支援し,ともに活動を推進することを重視している。
本稿では,富士通グループのグリーン調達の主な取組みを紹介する。

若杉 敏, 並木 崇久, 篠原 健祐, 大沼 英子


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