Skip to main content

Fujitsu

Japan

アーカイブ コンテンツ

注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2007-11月号 (VOL.58, NO.6)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2007-11

特集:「行政と地域社会の新たな協働の取組み」

本特集では,行政機関と地域社会が連携して,住民にとって生活しやすい,企業にとって経済活動が行いやすい社会を築いていく「行政と地域社会の新たな協働」に関する富士通グループの取組みを,ITによる行政内部の効率化,住民サービス向上,それを支える最新技術の三つの視点からご紹介いたします。


経営執行役常務
公共ソリューションビジネスグループ長
中村 巧
経営執行役常務 公共ソリューションビジネスグループ長 中村 巧 写真

行政と地域社会の新たな協働の取組み特集に寄せて(PDF)

国のIT戦略は,2006年にIT新改革戦略として新たな段階を迎え,2010年に「いつでも,どこでも,誰でもITの恩恵を実感できる社会の実現」に向けた取組みを推進しています。
IT新改革戦略の目指す社会のフィールドとは,サービスの利用者である国民,住民,企業とサービスの供給者である行政機関との接点にあるととらえることができます。
医療,安心・安全など生活に強く結びついた分野では,行政機関が単独でサービスを提供するのではなく,地域社会の様々な主体と連携して,より付加価値の高いサービスを提供することが求められています。多くの関係者が連携してサービスを提供するというフィールドに対して,そこでのプロセスを明らかにし,ITの役割を示すこと,まさに富士通グループの力を発揮できるところです。

特集:行政と地域社会の新たな協働の取組み 目次〕

総括

  • 行政と地域社会の新たな協働に向けた富士通グループの取組み
  • e-Japan戦略の総括と今後のIT政策

行政内部の効率化

  • 行政サービス向上と行政運営の効率化に向けた電子政府の施策
  • 英国公共セクターのシェアード・サービス最新動向とFujitsu Servicesの取組み
  • 業務システム最適化計画
  • 自治体内部事務の効率化に向けた取組み

住民サービスの向上

  • 住民満足度向上に向けた取組み
  • 行政の業務継続と地域社会における連携
  • 地域社会における安心・安全
  • ホームヘルスケアの実現に向けて -(株)ベストライフ・プロモーションの設立-
  • 地域中核病院と診療所との診療情報共有に向けた取組み

支える技術

  • 自治体システム共通基盤「InterCommunity21基盤」
  • 情報セキュリティの最適化への取組み
  • 個人情報を保護しながら公共情報を流通させる「情報コモンズ」の提案
  • クチコミ情報分析と行政への適用

ショールーム

  • イノベーション・ショーケース“netCommunity”

一般

  • カラー電子ペーパーと携帯情報端末“FLEPia”

特集:行政と地域社会の新たな協働の取組み


総括

日本は,ITを利活用することから,ITを構造改革に活用しようとする時代に入った。しかし,ITの恩恵,利便性に関する国民の実感は,まだ不十分との見方が強い。IT新改革戦略に代表される日本のIT政策においても,様々な課題が指摘されており,ITによって社会の構造を改革していくことが必要であると述べられている。一方,少子高齢化,安心・安全や健康志向の高まり,循環型社会への転換,地方分権など,大きな環境変化の中で,行政機関には,地域社会と連携して,住民にとって生活しやすい,企業にとって経済活動が行いやすい社会を築いていくことが求められている。
このような現状を踏まえ,「行政と地域社会の新たな協働」に関する富士通グループの取組みを,ITによる行政内部の効率化,住民サービス向上,それを支える最新技術の三つのテーマに分けて紹介する。

河合 正人

日本のIT政策については,政府のIT戦略本部により2001年の「e-Japan戦略」,その後の「e-Japan戦略II」が国家戦略として策定されてきた。さらに,現在は「IT新改革戦略」に沿った施策が展開されるとともに,イノベーションや生産性向上などの国家戦略やビジョンとも複合的に連関してIT政策が展開されている。
本稿では,これら一連の戦略の流れを概観し,その成果や課題を総括し,今後のIT政策を展望する。

八木 隆

行政内部の効率化

政府公表の「IT新改革戦略」(2006年1月 IT戦略本部)では,行政手続のオンライン利用の促進や行政事務・システムの最適化などを推進することにより,国民の利便性の向上と行政運営の簡素化,効率化,高度化および透明性の向上を図り,「世界一便利で効率的な電子行政」の実現を目指すこととしている。さらにIT戦略本部では,2007年4月に「IT新改革戦略 政策パッケージ」を策定し,今後のIT政策に関する基本的な方向性を明らかにするとともに,IT新改革戦略を加速し,また,新しい可能性を切り開く改革や創造のエンジンとなる政策を取りまとめた。
本稿では,ITの恩恵を国民が実感できる取組みの一つとして,「国・地方の包括的な電子行政サービスの実現」について具体的に解説するとともに,これまでに電子政府の実現に富士通が貢献した内容を踏まえ,行政サービス向上のための施策における富士通の取組みについて紹介する。

田中 義孝

英国では,2004年に財務省から発表された歳出展望に基づき,内閣府が中心となって公共セクターの効率化に向けた内部管理事務のシェアード・サービス導入の方針が示された。
これを踏まえ,公共セクターにおいても本サービスの導入が本格化している。これらのシェアード・サービス・プロジェクトにおいて,公共セクター特有の組織文化の壁・組織横断でのプロジェクト経験不足・予算・調達制度といった阻害要因をいかに克服するかを試行錯誤で取り組んでいる。Fujitsu Services(富士通サービス)は,労働年金省,北アイルランド政府,内務省,国防省などでの当該プロジェクトの支援経験から,これらを克服する「かぎ」として次の2点を強調している。一つは,ステークホルダが一体となったガバナンスの確立であり,もう一つは,ベネフィット実現に軸足を置いたプロジェクト運営である。
本稿では,この2点の重要性について具体的な事例と合わせて述べる。

David Tryon, Nick Woodward

自治体は,簡素で効率的な行政運営の実現,団塊の世代の職員が大量に退職する2007年問題への対応,業務システムの安全性・信頼性の確保などの課題に直面しており,これらの課題解決を目的とした業務システム最適化への取組みが求められている。しかし,現在,自治体で実施されている業務システム最適化は,システム経費や人件費の削減を主目的としたものであり,2007年問題への対応や業務システムの安全性・信頼性の確保に資する取組みが十分行われているとは言い難い。
本稿では,自治体における業務システム最適化の取組みを概観し,現状の取組み課題を確認した上で,最適化の実効性を高める富士通の業務システム最適化コンサルティングを紹介する。

中川 弘文

厳しい地方財政とより大きくなる地域のニーズのはざまで各自治体は事務の効率化と行政経営の高度化の推進を余儀なくされている。富士通では,こうした自治体の課題解決に応えるべく,2000年より文書管理,財務会計,庶務事務,電子決裁,人事給与などのシステムを統合した自治体向け内部共通事務支援パッケージ「IPKNOWLEDGE(アイピーナレッジ)」の提供を開始した。基本となる内部事務統合のコンセプトを各自治体関係者にも前向きにとらえていただくことができ,この7年間で約230の自治体で導入いただくまでになった。
本稿では,最初に簡単に自治体の状況を述べたあと,IPKNOWLEDGEで実現している事務効率化のための機能,職員の利便性に配慮した機能,システム運用の手間を軽減する仕組みなどを紹介する。

石塚 康成

住民サービスの向上

自治体は今,長年にわたる厳しい財政状況の中,事務効率化を進める一方,住民満足度向上を目的とした取組みが重要課題の一つとなっている。
減少する財源・職員数でいかに住民サービスのサービスレベルを維持・向上させていくのか,行政の経営手腕が問われる時期に来ている。
本稿では,こうした国や自治体の動向を踏まえ,富士通の「住民満足度向上」に対する取組みとソリューションの導入事例を紹介する。

桑村 佳代, 米田 剛

大地震,大規模水害,テロ,感染症などの大規模災害発生時にも,行政機能を継続させ地域社会の迅速な復旧・復興を支える必要がある。中央防災会議では,首都直下地震で想定される経済被害額は112兆円に及び,我が国の存続さえも脅かす規模になると想定している。この経済被害を軽減するためには,行政による公的な災害対策に加え,民間企業の自助努力による事業継続性の確保が不可欠である。
本稿では,地域社会の防災力向上に向けて,行政自身がいかに取り組むべきかを,中央省庁や自治体での先行事例を踏まえて紹介する。また,ライフライン企業や金融機関,地域の大手企業なども含めた様々な組織と地域社会でいかに連携すべきかについて提言し,戦略・計画策定時のポイントや定着化に向けたマネジメント支援について述べる。

新谷 洋人, 古川 博司, 下田 雅和

最近の犯罪や災害に対して,地域社会における安心・安全対策の重要性が高まっている。全国的にも各自治体においては,「安全・安心まちづくり条例」が施行されるなど,地域住民の活動を支援する基盤が整備されつつある。このような動きの中,富士通では,ICTを利活用した安心・安全のソリューションについて取り組んでいる。
本稿では,地域社会の安心・安全への取組みとして,アクティブRFIDタグ利用による登下校情報共有,および電子メールによる不審者情報等配信を行った実証実験と,住民安否情報システム構築の二つの事例を紹介する。

堺 雅徳, 山本 成美

高齢化・少子化社会の到来に向けて,医療費抑制に向けた国家施策も2006年6月成立の医療制度改革関連法に代表されるように,これまでの診療中心から予防医療に重点が置かれ始めている。富士通はこのような社会背景を受けて,予防医療・健康増進をキーワードに2007年2月に新事業会社「(株)ベストライフ・プロモーション(BLP)」を設立した。BLPは,一人一人が生まれてからその一生を終えるまで,「自分の健康を自分で守る」というコンセプトをもとに,国や自治体,医療機関,健診機関,ヘルスケア関連事業者などと連携することにより,住民や家族を意識した新しいサービスを提供していくこととしている。
本稿では,BLPが取り組んでいる個人の健康情報の管理と活用を自己責任において簡単に実現できるよう支援するサービスの概要について紹介する。

小齋 吾郎

近年,国の施策として医療機関の機能分化を推進しており,地域中核病院を中心に近隣の診療所を含めて地域一帯で患者をサポートできるよう,診療情報を共有する仕組みが求められてきている。このような背景の中,富士通は,地域中核病院に導入された電子カルテシステムの情報を診療所と共有することができる,地域連携システムを開発した。地域連携システムはWebシステムの技術を使ってServlet/JSPで開発しており,診療所ではインターネットブラウザのみで地域中核病院の診療情報を閲覧することができるようになっている。また,個人情報保護法の関心の高まりから,強固なセキュリティ対策が必須となってくるが,ネットワークとアプリケーションの両面から対策を施しており,堅ろう性を維持したシステムを実現している。
本稿では,この地域連携システムについて紹介する。

森田 嘉昭

支える技術

近年,自治体の基幹システムはオープン化,ダウンサイジング化が進められ,新しい問題が浮上している。一つは,ISV製品の積極的な導入に伴うアプリケーション資産の長期的な利用におけるTCO増大である。もう一つは,各システムの個別化によるセキュリティ対策の遅れと利便性の低下,およびマルチベンダ化によるシステム間連携の複雑化である。
富士通が提供する自治体システム実現を支援するソリューション体系「InterCommunity21(以下,IC21)」では,アプリケーションの長期的利用を保証するためのオープンフレームワーク「IC21基盤 Web版共通制御」を開発するとともに,自治体システムの全体最適を推進する「IC21基盤」製品を整備することで,これらの問題を解決する。
本稿では,自治体システムについて近年の国内動向,および共通基盤と呼ばれる考え方と,それに向けてのIC21基盤の取組みを紹介する。

砂田 敬之, 森永 景介

現在,電子自治体の基盤整備などにおいて,セキュリティの重要性が認識され,条例やポリシー,ガイドライン整備も進んでいる。一方で,情報セキュリティ対策が徹底されていないという声はなくならない。これは,「場当たり的な対策」「限られた予算」などが原因として挙げられる。これらの問題解決には,セキュリティ対策の機能的な整理が重要であると考え,セキュリティのあるべき姿と指針を示した富士通の「エンタープライズセキュリティアーキテクチャー(ESA)」を策定した。ESAは,アイデンティティマネジメント,証跡管理など八つの機能で整理している。これが,セキュリティ対策における最適化作業の基準となる。システム構築あるいは機器調達の際に,ESAとの適合性をチェックすることで,組織の情報セキュリティは整合性が取れ,投資の有効性と効率性を確保するための枠組みが確立される。本稿ではESAの内容を紹介し,自治体への適用について述べる。

鈴木 拓也, 塩崎 哲夫, 奥原 雅之

個人情報保護法の全面施行以降,個人情報保護の風潮の高まりによって,公共性のある情報が公開されず様々な社会問題が起こっている。個人情報を保護する必要性を否定するものではないが,社会で共有すべき情報が公開されない状況は民主主義社会の存亡にもかかわる重大な社会問題である。
現在,国民が司法へ参加する裁判員制度が実施に向けて着々と進んでいるが,裁判所の判決文の公開は一部のみにとどまり,研究者の間でも重要な判決文が入手できないという問題が起こっている。判決文は社会全体で共有すべきものであり,国民一人一人がいつでもアクセスできるものでなければならない。
本稿では,判決文を題材に個人情報を保護しながら公共情報を流通させる技術の社会的意義を明らかにし,それを実現するコンセプト「情報コモンズ」を提案する。

榎並 利博

近年,インターネットの普及により一般の人達が簡単に情報を公開することが可能となってきている。これらの情報を使うことにより,企業と消費者,または行政と市民の間の情報の伝達をより活発にすることができると考えられる。しかし,これらのデータの多くは文書で書かれているため,それらを機械的に扱うのは難しく,それらの情報を利用するためには人が一つずつ読まなければならないのが現状である。
この課題に対して著者らは,テキストから評判を表わす表現とその評判の対象となる特定の対象物の対を抽出する技術を開発し,マーケティングの分野に適用している。
本稿ではこの技術のマーケティングにおける適用例を紹介し,またこの技術が行政と市民との間でどのように適用が可能かを論じる。

高橋 哲朗, 内野 寛治, 岡本 青史, 松井 くにお

ショールーム

近年,少子高齢化,環境問題,グローバル化など,大きく変動する社会の中で,ITの役割は業務効率化のためのツールから,構造改革の原動力や成長のエンジンとして期待されるようになった。
富士通は,このような社会の潮流や,政府のIT施策を幅広く長期的な視点でとらえ,2000年12月の開設以来2万人を超えるお客様に来館いただいたショールーム「netCommunity(ネットコミュニティ)」を2007年5月に移転・リニューアルした。活力ある豊かな将来社会の実現とそれを支える新しい仕組み,富士通の先進技術を紹介するイノベーション・ショーケースnetCommunity(東京・内幸町)として新たなスタートを切り,多数のお客様に来館いただいている。
本稿では,新しいnetCommunityのコンセプトやコンテンツについて紹介する。

嶋本 典子

一般

ここ数年,電子ペーパーに対する期待と各社のたゆまぬ技術開発の結果,電子書籍や携帯電話や時計などのモノクロ搭載製品が増えコンシューマ市場が立ち上がった。富士通はカラー市場のニーズを想定し,コレステリック液晶を素材として研究開発に取り組み,2005年に世界初のカラー電子ペーパーを発表し注目を受けている。この度,実用域である8型と12型の開発が完了し量産準備が整ったことから,携帯情報端末ユビキタス・コンテンツ・ブラウザ「FLEPia(フレッピア)」のサンプル販売を開始した。このサンプル販売はカラー電子ペーパーを用いたビジネスを検討されている多くの企業のお客様に評価いただくことを目的としている。
本稿では,カラー電子ペーパーの動作原理とFLEPiaの機能について紹介する。

蔭山 芳明, 吉原 敏明, 菅野 竹洋


---> English (Abstracts of Papers)