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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2002-9月号 (VOL.53, NO.5)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2002-09

特集: 「ライフサイエンス」

ライフサイエンス特集に寄せて(PDF)

特集: ライフサイエンス 目次〕

序論と解説

  • バイオ産業の動向とITへの期待
  • バイオ,蛋白,化合物の統合情報:ドラッグインフォマティクス

バイオDBシステムと遺伝子探索

  • 国立遺伝学研究所におけるDNAデータバンク:DDBJ
  • JBiCバイオDBシステム
  • SNPsカタログDBシステム構築と活用
  • 遺伝子探索支援システム:GeneDiscovery
  • 蛋白モチーフ自動抽出システム:SODHO
  • 疾患関連遺伝子探索へのIT適用の実際

蛋白質解析と化合物情報管理

  • 計算化学アプリケーションパッケージと蛋白質解析に向けた取組み
  • Cheminformaticsシステムの現状と今後の動向
  • P450と薬物代謝データベースと代謝物予測

ライフサイエンスの研究開発を支えるIT技術

  • バイオ文献活用基盤としてのXML検索技術
  • ポストゲノムプラットフォーム
  • 研究者・エンジニアのためのネットコミュニティ:NetLaboratory

解説

  • グリッドコンピューティング

特集:ライフサイエンス


序論と解説

ポストゲノムシークエンス時代に入り,バイオ分野は,21世紀の新産業として期待が高まっている。欧米をはじめ,アジア諸国もバイオ産業への取組みが活発化している。日本においては,バイオ関連5省庁の連携により「ミレニアムプロジェクト」が決定され,産官学が協力してバイオ産業の育成に取り組み始めた。
大量で複雑な生命情報をベースにするバイオ産業は,情報産業と言われる。バイオ産業に占める情報の役割は,重要性を増している。IT分野に強い日本が,バイオ産業において国際競争力を付け,バイオ産業の健全な育成を図るためには,強みであるITとバイオとの融合を積極的に推進し,バイオ産業全体の底上げを図るとともに,生物資源や人材が豊富で,大きな市場を抱える,近隣のアジア諸国との連携を推進することが不可欠であり,日本がアジアの情報基地となることが期待される。
本稿では,国内外におけるバイオ分野への取組み状況を述べるとともに,日本のバイオ産業の発展におけるIT産業への期待について記述する。

松浦 幸男

湯田 浩太郎

バイオDBシステムと遺伝子探索

日本DNAデータバンク(DDBJ:DNA Data Bank of Japan)は,1986年に国立遺伝学研究所の遺伝情報研究センター内に設立され,DNA配列の登録,研究活動を始めた。DDBJは活動開始時から米国のGenBank,欧州のEMBLとの3者で協力しながら,今日の国際塩基配列データベースを構築してきた。
1984年設置された遺伝情報研究センターは1995年に生命情報研究センターとなり,2001年4月には生命情報・DDBJ研究センターと改称され,DDBJの名前が公的センターの名前として取り入れられた。これは日本を代表する国際的な公的データバンクとしての位置付が明確にされたものであり,今後のDDBJのデータバンクとしての活動が日本のバイオインフォマティクスの飛躍的発展のかぎを握っていると言える。
また,国立遺伝学研究所のスーパーコンピュータシステムは国の共同利用機関に指定されており,VPP5000をはじめとするHPCシステムの利用を所外に公開するとともに,DDBJのDNAデータ登録,解析,検索サービスを全世界に向けて提供している。富士通は,このスーパーコンピュータシステムの導入から構築,運用までの業務を支援しており,また,DDBJのサービスの開発運用についてSE支援を行っている。
本稿ではこの国立遺伝学研究所のDDBJとサービスの概要と今後の展開について紹介する。

山口 政仁

JBiCバイオDBシステムは,バイオ産業情報化コンソーシアム(JBiC)が運用するバイオ研究者のための統合データベースシステムである。本システムはコンソーシアム参加バイオ関連企業の研究者を主たる利用者として,多様なバイオ関連データベースの共同利用を目指している。
本稿では,まず本システムの概要とその特長を述べる。つぎにそのシステム要件の一つである,複数の多様なバイオデータベースを横断的に検索するためのエージェント技術の適用とその効果について紹介する。また,もう一つの重要な要件である,共同利用システムにおける,秘匿情報のセキュリティの確保のための,内部データ暗号化とワンタイムパスワードによる検索・解析結果の取得の仕組みとその背景について紹介する。

塩原 立也

ポストシーケンス時代に突入し,遺伝子多型のなかでSNP(Single nucleotide polymorphism=1塩基多型)が注目されている。ゲノム上に一定の密度で分布したSNPは,疾患関連遺伝子探索や薬剤応答性分野の研究では非常に有用なマーカである。
公的サイトで運営されるSNP関連データベース(DB)には膨大な数のSNP情報が登録されており,その利用方法について様々な試みが行われている。
本稿では,新たな試みとして複数DBに存在するSNP情報を統合するSNPsカタログDBシステムの構築および活用方法について紹介する。

赤坂 英俊

GeneDiscoveryは,cDNAやゲノム配列について,機能解析を支援するシステムである。機能アノテーション情報の自動収集,独自技術の解析手法の搭載,および解析作業の自動化によって,バイオインフォマティクス分野の研究者の作業負担を軽減する。ゲノム創薬において,研究の大半を占める目的の化合物の探査作業に有用なシステムである。
DNA配列の解析として,ホモロジー検索およびLocusLink-dataをもとにした機能アノテーション情報の自動収集,アラインメント解析による機能保存部位の抽出,モチーフの検索が可能である。アミノ酸配列の解析として,アミノ酸変換のあと二次構造予測・柔軟性予測・疎水性予測・抗原決定基予測を利用し,蛋白質の抗原決定部位の予測が可能である。
本稿では,GeneDiscoveryシステムの役割と特徴について紹介する。

児玉 貞夫,酒井 広太

共通祖先を持つ相同蛋白のアミノ酸に共通して現れるモチーフと呼ばれる部分配列は,相同蛋白の分子進化の過程で保存されたものであり,蛋白の機能をアミノ酸配列から推定する上で重要な手がかりとなる。富士通は1990年より国立遺伝学研究所と共同研究を実施し,相同蛋白のアミノ酸配列間の保存プロファイル(配列パターン)を自動抽出しモチーフを自動推定する分子進化解析ソフト"SODHO"を開発してきた。当初のSODHOでは推定されたモチーフを正規表現系で表現していたため実利用上の制約があった。最近,正規表現系の隠れマルコフモデル化とモチーフ比較のための新規アルゴリズム開発を実現しSODHOをより実用的なシステムとした。現在,完全長cDNAプロジェクトなどから得られる未知・新規の蛋白からの目的蛋白探索に適用し成果を上げている。
本稿では,SODHOの実現技術および最近の成果について述べる。

内藤 公敏

マイクロサテライトマーカ(microsatellite marker:2~4塩基反復)やSNP(Single Nucleotide Polymorphism:一塩基多型)に代表されるゲノム配列上の多型マーカを用いた遺伝統計解析は,現在,疾患関連遺伝子探索手法の最も有効な研究手法の一つであり,その適用研究が進められている。
本稿では,徳島大学ゲノム機能研究センターとの2年間に及ぶ共同研究において経験した遺伝統計解析の理論と解析手順,IT(Information Technology)適用の実例を紹介し,その有効性および課題を具体的に述べる。また,遺伝子多型解析において重要な多型マーカについても解説する。

手塚 理,安藤 美紀,内藤 公敏

蛋白質解析と化合物情報管理

バイオ実験技術の進歩により,ゲノム情報や,様々な蛋白質のアミノ酸配列情報,構造情報が決定され,蛋白質の構造に基づく薬物の設計が行われるようになってきた。そして,蛋白質の様々な情報を計算化学の手法によって求め,それらを薬物設計に利用したいという要望も高まってきている。
本稿では,富士通が開発している計算化学アプリケーションパッケージMOPACおよびMASPHYCについて紹介し,MOPACを用いて蛋白質全体を分子軌道法で計算することによって得られた新たな知見や,MASPHYCによる蛋白質・水系の分子動力学シミュレーション,およびこれらの計算化学アプリケーション技術を創薬研究に有効活用するためのin silico screeningシステム開発への取組みについて紹介する。

紙谷 希,牟田 元,高橋 篤也

"Cheminformatics"とは,化学研究において派生する膨大な各種のデータをどのように解析・加工し,どのように蓄積・データベース化していくかをITの側面から支える技術の総称である。
本稿では,Cheminformaticsシステムがどのように進化・発展してきたかを述べ,現状の技術動向および問題点について明確にするとともに,これらの問題点を踏まえた上で今後のCheminformaticsシステムの方向性・富士通の今後の取組みについて述べる。また,Cheminformaticsと対で使われる"Bioinformatics"「生物情報工学」システムとの統合の重要性についても述べる。

萩原 稔

発見当初,特殊な酵素と考えられていたP450は,生物種を超えて広く分布し,多種多様な役割を演じていることが,最近までに明らかにされてきた。数百種類を超えるP450(CYP)の数分の一が,哺乳動物の異物(薬物)代謝酵素である。これらの基質特異性は極めて広く,異物代謝においてキーとなる酵素である。CYPには遺伝的多型(SNPs)があり,多型が,薬の効き方での,個人差の原因の一つとなっている。また,CYPが,化学物質による発癌にも,関連していることも指摘されている。このことが,医薬品の研究開発の場で,異物代謝酵素やそれらによる代謝反応のデータベースの構築が望まれている理由である。
本稿では,P450研究の歴史,P450による異物代謝について述べ,開発中のP450異物代謝情報データベースおよび代謝物予測システムを紹介する。

朝永 惇

ライフサイエンスの研究開発を支えるIT技術

ライフサイエンス分野では,ヒトゲノム解読を受けて,新たな研究フェーズ,ポストゲノム時代を迎えたと言われている。ポストゲノム時代の重要な研究目標の一つとして,遺伝子産物間の相互作用の解明が挙げられる。そのために収集・分析すべき実験データの量は,ゲノムの配列データに比べても桁違いに大きく,コンピュータによる支援が不可欠である。とくに,数値データの集合に過ぎない実験データを,生物学的知見に結びつけるには,言語情報の形で蓄積された知識資産を縦横無尽に活用する必要がある。本稿では,遺伝子産物間相互作用の解明における文献情報の役割について論じ,バイオ文献情報の活用基盤として開発したXML検索技術を紹介する。

仲尾 由雄,井形 伸之,小櫻 文彦

一連のゲノム情報の解読の後,バイオインフォマティクス分野の関心は,得られる大量のゲノム情報をどう活用し,どのような知見を得るかに移っている。このようなポストゲノム時代のバイオインフォマティクスを支え,研究開発を支援する環境として著者らは「ポストゲノムプラットフォーム」と呼ぶ統合ソリューションを提案した。このソリューションは高速・大容量なハードウェアプラットフォーム,これらに最適化されたバイオ基盤ライブラリ,高速な検索エンジン・XML関連ツール,バイオ向けに最適化されたブラウザ,さらにこれらの要素を連携して統合的なバイオ処理の実現を支援する統合ブラウザから構成される。著者らはポストゲノムプラットフォームのコンセプトに基づいて,これらの各要素の開発・整備を行い,実際のバイオ研究の現場で適用検証を行っている。本稿では,このポストゲノムプラットフォームの概要といくつかの構成要素について紹介する。

奥田 基,松本 俊二,市川 眞一

NetLaboratoryは「科学技術の発展と普及への貢献」を基本理念とした,研究者・エンジニアのためのネットコミュニティであり,Webによる情報発信やネット上でビジネスを展開するためのインフラの提供を行っている。バイオ分野の研究開発では,インターネットを通じて非常に多くの情報が提供されているが,これらの情報を活用するためのバイオDBシステムや,逆に外部に情報提供するためのWebシステムを構築しようとすると,様々な問題点がある。
本稿では,NetLaboratoryの概要とこのインフラを活用したネット上でのプライマー設計サービスとSNPsカタログDBサービスの例を紹介し,これらの問題点がNetLaboratoryのインフラを活用したアウトソーシングによって解決できることを示す。

南 多善

解説

岸本 光弘


---> English (Abstracts of Papers)