次世代ブレードサーバに向けた高速伝送技術
省エネ・省スペース化でデータセンターのグリーンITに貢献

データセンターのグリーンITが進むなか、富士通研究所は、高速伝送技術によってブレードサーバの高性能化・省電力化・高密度化を可能にする、10ギガイーサネットスイッチブレードと高性能バックプレーンを開発しました。
バックプレーン伝送がブレードサーバの性能を大きく左右
散在するサーバ群を集約し、一括管理するデータセンターでは、サーバに複数のOSやアプリケーションを実行できる性能が求められます。そのため、サーバの仮想化技術(注1)やCPUのマルチコア化、さらには、グリーンIT推進のための省電力化・高密度化はサーバシステムに欠かせない仕様となりつつあります。
CPUやメモリなどを搭載するサーバを複数接続した「ブレードサーバ」は、データセンターにおけるサーバ要件を満たすプラットフォームとして、現在もっとも注目されています。
ブレードサーバの性能を高め、かつ、複雑化するシステムを効率的に運用していくには、I/O(入出力)の高速化が不可欠です。こうした背景から、複数の基板を相互接続するための通信路となる「バックプレーン(注2)」や、サーバ間の伝送を中継する「スイッチブレード」では、高速大容量化が進んできました。現在の主流は1ギガbpsや3ギガbpsですが、10ギガbpsの高速バックプレーンを採用したブレードサーバも、すでに登場してきています。

高速バックプレーンに伝送損失補償の壁
高速バックプレーンの実現で大きな課題となるのが、伝送損失の補償と、高速送受信回路の省電力化・高密度化の両立です。バックプレーンはブレードサーバの背骨とも言うべきもので、ブレードサーバの中央に位置します。そのため、バックプレーンが物理的に大きいと、バックプレーンが筐体内のエアーフローを妨げてしまい、サーバシステムの冷却効率、電力効率に大きく影響してしまいます。
バックプレーンの高速化には、データ伝送時に次のような課題があります。
伝送路での損失が大きくなる
バックプレーンを通った後の信号は、配線が長くなるにつれて伝送路での損失が大きくなり、例えば配線60cmの場合、10ギガbps成分が30dB以上損失し、符号間干渉(注3)によってデータが受信できないといった現象も生じてきます。ノイズが発生しやすくなる
回路の密度を高めることで信号線同士の間隔が狭くなり、クロストークや反射(注4)などのノイズが発生しやすくなります。

安定した高速伝送を実現するには、ノイズを増幅せず、伝送損失を補償する「受信イコライザ(注5)」が必要になります。従来の高速バックプレーンでは、「デシジョン・フィードバック・イコライザ(DFE)」と呼ばれる受信イコライザが採用されていました。
しかしこの従来技術は、ノイズの補償には適しているものの、伝送路におけるデータ損失を補償するためには、DFE回路を多段に重ねる必要があります。結果的に回路全体の消費電力と実装面積を増大するため、高速送受信回路の省電力化・高密度化が困難となっていました。
10ギガbps伝送を省電力、高密度に実現
そこで富士通研究所は、伝送損失の補償に比較的適している「リニアイコライザ(LE)」と呼ばれる受信イコライザに着目。リニアイコライザとDFE回路1段により、双方の長所をうまく利用することで実装面積を小さくし、バックプレーンの省電力化・高密度化が可能な受信回路を新しく開発しました。
新しい回路には、10ギガbpsバックプレーン伝送に必要な損失補償性能を備えるために、受信イコライザを動的に制御する回路も新たに開発しました。この新しい制御回路は、伝送されてくるデータの要素から「どの程度の損失か」を検知し、ひずみを最小化して調整する処理の自動化に成功しました。また、計算量の少ない新たな制御方式を開発することにより、制御回路の実装面積を小型化しました。
以上の技術の伝送性能を、実際のバックプレーンを用いて評価したところ、10.3ギガbpsの安定した伝送がおこなわれました。また、多段のDFE回路と同等の低いビットエラー率(注6)となり、15から35デシベルまでの伝送損失に対して、動的に受信イコライザの補償強度が制御されることも確認しました。
上記の評価がおこなわれた受信イコライザは、従来の多段DFE回路と比べて、受信回路部分における実装面積は2分の1、消費電力は4分の1になりました。
■ 従来方式と新たに開発した高速送受信回路のLSI集積効果
| 従来方式 | 提案方式 | 比較 | |
|---|---|---|---|
| 実装面積(mm2) | 0.442 | 0.214 | 1/2 |
| 消費電力(mW) | 440 | 110 | 1/4 |
業界最高クラスのブレードサーバ「PRIMERGY BX900」に採用
高速送受信回路を多数搭載した新しい10ギガイーサネットスイッチLSIにより、業界最速、省電力、最小の10ギガイーサネットスイッチブレードを開発しました。
さらに、高速伝送技術を用いて、10ギガbpsの伝送が可能なバックプレーンを実現しました。

ブレードサーバは、サーバやスイッチを再構成しながら長い期間運用されるため、このバックプレーンでは、10ギガイーサネットだけでなく、InfiniBand(注7)やファイバーチャネル、さらには次世代40ギガbpsイーサネットなど、さまざまな高速インターフェースに対応しています。
現在、富士通ブレードサーバの最新上位機種「PRIMERGY BX900」に、10ギガイーサネットスイッチブレードとこの10ギガbpsバックプレーン技術を採用しており、10U/18スロット高密度実装で、業界最高クラスの省スペース化・省電力化を実現しています。
次世代データセンターの統合ネットワークに向けて
富士通研究所の高速伝送技術の研究・開発は、すでに10年前から始まっていました。そして2001年には、10ギガイーサネットが次世代データセンターに欠かせない技術になると考え、Fujitsu Laboratories of America, Inc.(注8)と共同で、10ギガイーサネットスイッチプロジェクトを立ち上げました。その技術は、PRIMERGY BX900の10ギガスイッチブレードと高速バックプレーン技術にも活かしています。
こうした長年にわたる高速伝送技術は、ブレードサーバのみならず、富士通のほかのコンピュータプラットフォームの高性能化を支えています。
富士通研究所では、来たる次世代データセンターの統合ネットワークに向け、これからもさまざまな先端テクノロジーの研究・開発に注力してまいります。
注記
- (注1)サーバの仮想化技術とは :
- 1台の物理サーバで複数のOSを同時に動作させる技術。複数の業務システムを仮想サーバ上で動作させ、アプリケーションに必要なサーバ資源を柔軟に割り当てることが可能になる。
- (注2)バックプレーンとは :
- サーバなどの回路基板を多数接続する通信用の回路基板の一種。「ミッドプレーン」と呼ばれる場合もある。
- (注3)符号間干渉とは :
- ISI(Inter-Symbol Interference)。信号のひずみ。
- (注4)クロストークや反射とは :
- クロストークは隣接した配線間への信号の漏れ、反射はコネクターなどの伝送特性の乱れによるノイズ。いずれも、信号の高速伝送において妨げとなる。
- (注5)受信イコライザとは :
- イコライザは「等化」の意。受信信号のひずみを取り除く。
- (注6)ビットエラー率とは :
- BER(Bit Error Rate)。一定時間内で伝送されたデータ(ビット列)に含まれる誤りデータの比率。
- (注7)InfiniBand とは :
- 複数のコンピュータ間およびコンピュータと周辺装置との間を高速接続する次世代インターフェース規格。
- (注8)Fujitsu Laboratories of America, Inc. とは :
- 米国カリフォルニア州、株式会社富士通研究所の米国拠点。
[2009年7月1日 公開]
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