Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

第4回 UDの理念を生かす経営を

やさしさこそ

UDは、地球上に生活するすべての人々の立場にたって、商品やサービス・環境等を作り上げて行こうとするものです。ユーザーすなわち生活者のことを真に思っていることが基本となります。単に売上を増やそう、利益を上げようとだけ思考していたのではUDは実現しません。
日本人の特質である気配りややさしさこそが、UDの理念にかなうのです。
“みんな一緒、みんな快適”の菓子店のように、店作りや商品づくりが意識せずにUDにつながっているというケースがみられます。

UDのマーケティング

日本のマーケティングの変遷を見ると、戦後の「作れば売れる」生産重視から、高度成長期には大量生産・大量販売のマス重視へ、さらに進んでモノ余りの時代になると顧客の求める商品を開発するという顧客志向へと視点が移ってきました。
低経済成長の下では「売る相手のことを知る」という考え方が重要になっています。これが市場細分化につながっていますが、「顧客志向」というと、どちらかといえば売り方やアフターサービスに重点が置かれていました。

バブルが崩壊してから、顧客ニーズが掴みづらくなり、それまでの「市場調査技法による科学的な調査・分析を用いれば、顧客のニーズが読める」という構造が怪しくなってきました。例えば、ヒット商品開発担当者でさえ、事前に顧客ニーズを読めていないことが多く、また、仮に読めたとしても、それを解決する技術力を持ち合わせないといった状況も生じています。例えば、ガンの特効薬へのニーズは明らかにあっても、その技術は完成していません。

1990年代後半以降、従来型マーケティングの限界説が指摘されるようになり、新たなマーケティング・パラダイムの誕生が期待されるようになりました。こうした中で、マス・マーケティングを打開する考え方として注目を浴びるようになったのが、顧客一人ひとりを捉えることを起点にした「ワン・トゥ・ワン・マーケティング」です。しかし、one(個人)の満足を追求するのはコストがかかり、地球資源の無駄につながる贅沢を求めるマーケティングだともいえます。

UDのマーケティングは違います。one(個客)の満足を追求するだけでなく、any(皆の)満足を目指しています。
「人にやさしい」商品やサービスを作り出し、提供するのがUDのマーケティングです。

理念を活かす経営

規模が大きければ、いくらトップがUDの重要性を訴えたとしても、企業を横断するUD推進体制を作らないとなかなかうまく動きません。そのため、UDの取り組みを全社活動とするために担当する役員をおいたり、全社的な委員会を設けるなどしています。 一方中堅・中小企業では、大げさにしなくても・・となり、とかく取り組みが甘くなり勝ちです。しかし、トップが号令をかければ、反応よく全社で取り組めるという身軽さがあります。 中堅中小企業のUD商品の開発事例には、次のようなものがあります。

(1) ペダル式ゴミ箱・・・エムアンドエムプロダクツ(岩槻市)

ペダルを踏み込むだけでフタを開閉できるゴミ箱。ペダルを踏み込めない方にもフタが開けられるようにフタには小さなハンドルが付いています。
このハンドルは向きを自由に変えられ「左利き」「右利き」に合わせられます。ウレタン系樹脂ハンドルを取り付けている場合はハンドルが体にぶつかっても変形し、衝撃を吸収しますので安全です。
また、子どもなど握力の弱い人でも開けやすいように滑り止めがついています。

(2) 大活字・点字併用の料理カード・・・(財)すこやか食生活協会(東京都港区)

視覚障害者、弱視者、高齢者の利用がしやすい料理カード。本タイプの料理手引書もあります。絵を見ることで子どもも参加できるノーマライゼーションのカードになっています。大活字・透明点字、カラー写真を併用し、より多くの方が利用できるよう配慮されています。
また、「SPコード」という2次元コードが付いており、読みとり機のスピーチオを使えば、音声で聞くことができます。レシピカードは「四季の惣菜 味な一品」シリーズが、今までに2シーズン分、合計8冊出ています。

(3) 電磁波防止機能付カード入れ・・・山陽プレス工業(東京都北区)

強い電磁波や磁気から、カードの記憶を保護。左手親指でカードを押し上げて、右手でサッと取り出す構造で、ケースから取り出す煩わしさを軽減しています。
UD商品・サービスであると宣言して市場に出したとしても、所詮は健常者が開発したものと受け止められがちで、敬遠されてしまうというケースにぶつかることがあります。
UDの定義や評価方法などもまだ固まっていません。
だからといって、高齢者や障害をもたれた方たちを無視して開発を進めて良いというものではないはずです。多くの方達の意見をくみ上げながら少しずつ改良を加えて行き、だれでもが安心して使える商品・サービスに育てていくという考え方・取り組み方が必要だと思います。

UDを企業活動に取り入れる

UDを取り入れるために、自社の事情に合わせながら、次のような進め方をするのがよいでしょう。

トップがUDを企業理念に取り入れ、UDへの取り組みを宣言する

UDが当たり前になる時代は必ず来ます。自社がそれに流されるのではなく時代を先取りすべく、UDを企業理念として取り入れことが重要となります。UDへの取り組みによって自社の存続発展を図るのだという強い意志が、トップの宣言になります。

社員教育を重ねて、社員も生活者であることを認識する

トップの宣言だけでは先に進みません。UDについて考える機会をつくり、教育を重ねながら自社の企業理念の理解・浸透と自分や家族も社会で生活する一員であることを認識してもらいましょう。UD委員会といった活動も有効です。

ユーザーニーズの確認を行う

やみくもに開発に進むのではなく、実態を深く知ることが必要です。開発しようとする商品・サービスにニーズがあるはずだと作り手だけで考えず、生活者の視点でニーズの確認をします。このとき、自社技術の棚卸しが必要になります。

既存の商品・サービス等をUDの目で見直す

既存の商品・サービスに対するユーザーの反応・意見やクレームなどを整理し、生活者の立場で見たときに改良・改善すべきことを探ります。この段階でユーザーやUD商品・サービスを求めるユーザー団体などとの連携が始まります。

UD基準を自社の商品やサービスに定める

はじめから完璧な商品・サービスはできません。自社の技術やマーケティング力などから、UDの理想に近づけ、さらに販売可能という基準目標を設定します。この段階ではUD推進団体や専門家などの参加が必要になるかもしれません。

ユーザーニーズの新たな収集とデータベース化を行う

UD基準を満たす製品やサービスの開発を行う

自社技術だけでは開発が難しい場合には、産官学や異業種との連携が必要になります。

ユーザーが参加する試作品の評価と改良を加える(繰り返す)

UDの考え方を盛り込んだマーケティングを展開する

ユーザーからの反応を収集し、フィードバックする

社内資源を使うだけでなく、広く外部と連携できるかどうかがポイントになります。
バリアフリー的な取り組みでも、UDの7つの原則に照らして、ユーザーの参加を求めながら、改良を進めていくのが近道でしょう。7つの原則にはガイドラインが付けられていますので、大きなヒントになります。

有限会社エムアンドエムプロダクツ
http://www.mm-style.com

財団法人すこやか食生活協会
http://www.sukoyakanet.or.jp

山陽プレス工業株式会社
http://www.sanyo-stamping-i.co.jp/

著者プロフィール

阿部 将美(あべ まさみ)
株式会社クロス・メディア・コンサルティング 代表取締役社長
1976年、中小企業診断士(商業部門)登録、近い将来にコンピュータがビジネスそのものの在り方を大変化させると予想し、1970年代にはパソコンを利用したビジネスゲームを開催。1983年 株式会社クロス・メディア・コンサルティングとして独立、中小企業大学校客員講師、中小企業事業団指導部登録指導員などを兼務しながら現在に至る。主な専門分野は、情報、マーケティング、新規事業・新分野進出、企画開発、創業支援。
http://www.ab-cmc.co.jp/

[2005年4月5日 掲載]

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