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第3回 日本的経営とユニバーサルデザイン

みんな一緒、みんな快適

「UD(ユニバーサルデザイン)ということをやっているといろいろな方からおっしゃっていただけますが、実はこの言葉を知ったのは3年くらい前のことです。」

郡山に本店のある菓子店の話です。
「父の時代、その前の時代から似たようなことをベースに、“みんな一緒、みんな快適”を考え方の基本としながらいろいろなことをやっておりました。」
本店では、150年前から毎月1回「朝茶会」という、できたてのお饅頭とお茶と梅干し、それに季節の和菓子をいくら食べても無料の催しをやっています。これは井戸端会議や出会いの場を大切にしたいという思いを続けているものです。

UDのスタートは、元気だった先代が糖尿病で足を切断して車いす、という過程から段差を無くしたトイレをある店に作ったことです。その後、さまざまな失敗を通じて、「みんな一緒、みんな快適」にたどりつき、誰でも違和感なく同じ気持ちで過ごせるトイレとは何かを考えて試みたのだそうです。
最初のトイレは、男女のトイレにバリアフリートイレがあるようにしたために、これが逆にバリアになって、何となく冷たい感じを与え、ほとんど使われないという結果になったそうです。「これは違う」ということで、自分たちなりに誰でも違和感なく、同じ気持ちで快適に過ごせるトイレを考え始めました。
「男の人も女の人もお年寄りもお子さんも身体に障害のある人もみんな一緒ということです。」

お子さんのおむつを替える設備を作ったり、子供にも手が届く手洗いにしたり、福島市などへ新たに出店するたびに、改善を加え、気がついたことを次の店でやってみよう、トイレだけでなく、歩道から段差なしで店に入れるようにしよう、お子様の絵本コーナーを設けてお母様がゆっくり買い物できるようにしよう、など店作りや商品づくりにまで「みんな一緒、みんな快適」はつながっていきました。
「健康におけるユニバーサルとはどうあるべきか。お菓子にとってどうなのだろうか、考えています。たとえば糖尿の方のために、食物繊維を入れたお菓子を増やしています。」
普通の方が食べても、糖尿の方が食べても同じようにおいしくて、なおかつ糖尿の方が食べても安心です。これもUDの実践といえます。

UDは高齢者や障害を持つ人々をはじめとして、「誰にでも」、「安全に」、「自然に」使えるものです。
UD商品は高齢者や障害を持つ人々を中心にユーザーの支持を着実に集めつつあります。また、高齢者や障害を持たない人々にとっても使いやすく考慮されたものが多いために、商品開発におけるスタンダードの1つとなるものとみられています。UDを取り入れる動きは、真の顧客志向にかなうものといえます。UDと真剣に取り組む企業にとっては意外に儲かる話になっているといえるでしょう。

二十一世紀はこころの時代

今世紀はハードではなく、ハートの時代といわれています。
人にやさしい経営は、地球人類の精神世界に通用するはずです。UDが注目されるのは、いま高齢社会を迎えて、バリアフリーという考え方をさらに一歩進め、障害を持つ人を含めた誰でもが便利に使えるものづくり、さらに、地球環境まで含めた“やさしさ”への取り組みが大きな課題になっているからなのです。
日本人のこころは人類共通のこころに通じるはずです。また、企業は人びとの幸せづくりのためにこそ存在するはずです。この両者に共通する因子は、日本人の気質といわれている「こころくばり特性」です。
「みんな一緒、みんな快適」を実現しようとするお菓子店は格好の事例となります。

勘違いのデザイン

注意が必要なものがデザインです。
使いにくいデザインは自然に淘汰されていくだろう(淘汰されるのですが・・)などと、呑気に思っているととんでもないことになります。淘汰と同じ以上のペースで使いにくいデザインが現れるのです。
人類は失敗を学んで発展してきたはずなのですが、失敗して売れなかったデザインの商品が、またどこかで同じようなデザインとなって再現されることが多いからです
。 デザイン業界は、過去の失敗例をことごとく「再発明」する性格があるのではないかと勘ぐらせます。
各地で取り組まれている街づくりをみてみましょう。
商店街を通る歩道がカラー化されて街の雰囲気を盛り上げています。しかし、歩道の途中で色が変わっている誘導ブロックがあったりします。弱視の視覚障害者は色を頼りに歩くので、途中で色が変わらないことが望ましいのに・・。また、レンガを組み合わせてただ置いただけの歩道は、角が飛び出て高齢者を転ばせたりします。
さすがに、雨が降ると滑って危ない歩道は少なくなりました。しかし、表面の仕上げがタイルを貼ることにより処理されている歩道は、車いす・ベビーカーなどではごつごつして振動が伝わりやすく移動しにくいものです。

まだまだ、最近の失敗

「今日○ービスエン○に行ってきました。1階2階はきらびやかな一流ブランド店がいっぱいでした。」
これは関西方面でのデザイン失敗を訴える声です。
「きれいです。しかし、施設としては最悪でした。5階のレストランフロアのあちらこちらに立っている看板は“足元注意!段差があります”。なぜかこのフロア、数メートル毎に通路に段差がついているのです。みんな店を見ていて足元なんか見ていないから、転ぶ人が続出したと見られ、現在、段差はすべて不格好な黒い板で埋められています。」
「もちろん通路の端には車椅子が通れる程度のスロープはあります。だったら、すべてスロープにすべきだったのに、設計者の完全な失敗ですね。」
「これだけではありません。トイレのマークをオシャレで小さいものにしたため、場所がわかりにくく、わからない人が続出したのか、現在“化粧室”というデカイ文字とおなじみのマークを書いた紙が、あちらこちらにテープで貼ってある状態なのです。」

いかがでしょう。
「みんな一緒、みんな快適」のお店と比べてみてください。

「気配り・やさしさ」が日本的経営の神髄

「気配り・やさしさ」は薄れつつあるとはいいながら、日本的経営の神髄であるといえます。その意味ではUD経営は日本人がもっとも得意とする世界ではないでしょうか。

著者プロフィール

阿部 将美(あべ まさみ)
株式会社クロス・メディア・コンサルティング 代表取締役社長
1976年、中小企業診断士(商業部門)登録、近い将来にコンピュータがビジネスそのものの在り方を大変化させると予想し、1970年代にはパソコンを利用したビジネスゲームを開催。1983年 株式会社クロス・メディア・コンサルティングとして独立、中小企業大学校客員講師、中小企業事業団指導部登録指導員などを兼務しながら現在に至る。主な専門分野は、情報、マーケティング、新規事業・新分野進出、企画開発、創業支援。
http://www.ab-cmc.co.jp/

[2005年1月25日 掲載]

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