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第130回 経営の世界に教科書はない - マキオの経営に学ぶ…その1
小商圏・大型店・24時間営業・効率の悪い品揃えで大成功
鹿児島県阿久根市 ―― 人口が減るばかりの地方都市の大型店が、常識破りの24時間営業で大成功をおさめている。経営の世界には教科書はないことの証しとして、マキオ(店舗名 AZスーパーセンター)の経営を紹介する。
経営の世界で最も大事なことは何かと聞かれたら、筆者は『自社最適システムの構築』と答える。優良な経営者には共通する考え方、行動パターンはあるが、基本的には、経営の世界には教科書も公式もない。成功に至る道は無数にある。要は、自分たちの会社にとって、自社の社員にとって、自社の顧客にとって最適の仕組みを構築すればいいだけのことなのだ。
ところが多くの経営者は、流行や常識めいたものにとらわれてしまう。たとえば、流通業なら、集積人口の多いところがいい立地、品揃えでは売れ筋商品に絞り込めばいい、といった具合に…。しかし、本当にそれだけが正解なのだろうか。今回紹介するマキオ(店舗名はAZスーパーセンター)は、全く逆の戦略で大成功したというのだから、経営の世界は面白い。
マキオが流通業の常識に逆らうような形の店舗をスタートさせたのは1997年のこと。人口27,000人の鹿児島県阿久根市に、3,500坪の売り場面積を持つ大型店を24時間営業で開業したのだ。
なぜ、このようなフレームの店を考えたのか。同社の創業者でいまも社長を務める牧尾英二さんは、次のように答える。
「商圏人口の多いところは大手が出てきて厳しい競争を強いられます。ところが阿久根のようなところではライバル店は出てきません。とはいっても、阿久根には少なからず生活者がいて、日常の買い物に不便を感じています。だからこそ、24時間営業の大型店が必要だと考えたのです。」
品揃えにしても牧尾社長の考えは破天荒だ。
売れ筋ではなくても、お客さんが必要と思う商品は、1年に一個しか売れなくても置いてある。スタート時に16万アイテムだった阿久根店の品揃えは今では35万アイテムにまで増えている。
「先輩の大型店も最初の頃は、生活者のために使命を果たしたいとの思いがあったと思います。ところが時間と共に自社の利益を優先するようになって、効率を追いかけるようになったのではないでしょうか。そこで私は逆に、地域の生活者に貢献することを第一、利益は二の次と考えたのです。その結果できあがったのが、『小商圏・24時間営業・生活必需品フルラインの品揃え・低価格』の大型店といういまのフレームです。」
このAZは、開業時には賭けの対象になるほど、その将来が危ぶまれた。専門家であればあるほど、成功は覚束ないと指摘したのだが、結果はどうだったのか。
スタート時、損益分岐点45億円の店が初年度62億円を売上げ、その後も順調に推移し、2000年には約1,000坪を増床し、いまでは年商が100億円を超えるまでになっている。
なぜ、AZは成功したのか。
牧尾社長は、「小商圏の大型店、効率の悪い品揃えで、より安く売って、成り立たせるにはどうすればいいのか」 ―― 徹底的にシュミレーションしたという。そこで得たのは、徹底したローオペレーションをおこなえば、充分にやっていけるとの結論だった。
幸いなことに、阿久根市は地価が安い。建物も商業施設なのだから安全性さえ確保できれば豪華にする必要はない。イニシャルコストを同業他社よりも押さえ、ランニングコストについても可能な限り低くする仕組みを構築していったのだ。
紙面の都合でその取り組みは詳しくは書けないが、ここでご理解いただきたいのは、冒頭に書いたように、経営の世界には公式はないということ。牧尾社長の経営はまさにその証しである。
人口が少なければ大型店は成り立たない。田舎で24時間営業は成り立たない。回転率の低い商品を品揃えしていては経営が成り立たない。いずれも流通業の世界で当り前のようにいわれてきたことだが、全く逆の取り組みでAZは成功したのだから…。
そんなAZの最近の売上げの3割は、車関連だという。なぜスーパーで車なのかについては、次回に紹介する。
[2008年4月10日 公開]
著者プロフィール
疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰- 日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp
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