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第128回 致命的な失敗をおこさないためにトップのあるべき姿
『ハインリッヒの法則』に学ぶ
2回にわたって失敗に学ぶ経営について書いたが、今回も失敗関連の話を…。どんな人間も失敗とは無縁ではない。問題は、致命的な失敗かどうかだ。では、致命的な失敗をおこさないためにはどうすればいいのだろうか。
『ハインリッヒの法則』というのがある。労働災害の世界ではよく知られた法則だが、一件の重大災害の陰には二九件のかすり傷程度の軽災害があり、その陰には三百件のひやり・はっとがあると統計的に指摘されている。この法則を唱えたハインリッヒは、「98%の労働災害は予防できたはずだ」といっている。
要するに、ひやり・はっとの時点で、適切な手を打ってさえおけば、重大災害が発生する確率は限りなく小さくなるということなのだが、これがなかなか出来ていないのが現状だ。
大きな事故(失敗)の前には必ずといっていいほど、小さな兆候がある。しかし、これがなかなか表に出てこない。平成14年の三菱重工業・長崎造船所でおこった火災事故を例に考えてみよう。
あれは、ベテランの溶接工がルールを無視して、溶接作業をやった結果、11万3千トン級の豪華客船が燃えて大災害になったのだが、兆候は、一度ならずあったという。
同僚は、再々ルール違反を指摘していたし、直属の上司にも報告していた。ところが、年下でもあった上司はベテランに気遣ったのか、上層部には報告していなかったのだ。もっと問題なのは、同じ船の中でそれまでに4回失火事件があったことだ。
三菱重工業ほどの大企業になると、安全管理には万全を期していたに違いない。ところが、現場で起こっているひやり・はっとが、問題視されず、何の手も打たれていなかったのだ。これは、三菱重工業に限らず、経営の現場では、どこででも起きている現象といっていいだろう。
ものづくりの現場ばかりではなく、経営上の失敗もなかなか表には出てこない。なぜなのか。筆者は、報告を受ける上層部のほうに問題があると考えている。上司は、失敗を恐れずにチャレンジしろ、とはいうものの、現実に失敗の報告を受けると叱責してしまう。そんな事が続くと、当事者ならずとも萎縮し、次は報告したくないとなってしまうのだ。
何よりも自社の現場で起きている失敗について聞きたいという松下電器の中村邦夫会長は次のようにいっている。
「失敗談を聞きたいのに、現場は逆に失敗談を聞かせたくない。そこで僕は怒らないことに決めたのです。部下がネガティブな情報を報告に来たとき怒ったりしたら、二度と僕のところに悪い話をしにこなくなる。その失敗が大きな失敗であるほど怒ってはいけない。そもそも大きな失敗については、経営陣に責任があるわけだしね。だから腹が立つことがあってもグッと我慢、我慢。怒られても平気な顔をしてまた報告に来る幹部は、10人の内ひとりいるかいないか……」(週刊ダイヤモンド2007年2月10日号)
まさに真理をついているといっていいだろう。「失敗を成功の母」にするためには、トップが失敗に寛容でなければならないのだ。
多くの経営者に、「皆さんの会社には、普通の社員が譴責を恐れずに失敗を報告できるような雰囲気がありますか」と聞くと、大多数は、「ある」と答える。ところが、同じ会社の社員に聞くと、「失敗を報告できるような雰囲気はない」といいます。確かに、多くの経営者は、失敗に寛容でありたいと普段は考えているのでしょう。ところが、経営者とて感情のある人間だから、失敗の報告を受けると、我を忘れて激怒してしまうのだ。
中国で最高の統治者といわれた唐の太宗は、諫言を受けるときには、本当に柔和な表情で接するように気を配っていたという。トップたるもの太宗のようでありたいものだ。
著者プロフィール
疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰- 日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp
[2008年2月14日 掲載]
- 第127回 「失敗に学ぶ経営」…その2
- 第128回 致命的な失敗をおこさないためにトップのあるべき姿
- 第129回 『常識的な経済合理性』の追求で持続的成長を
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