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「失敗に学ぶ経営」…その2

いま売れている商品はやがて売れなくなる商品

一度成功を手にした企業が、時を経ずして衰退する例は枚挙に暇がない。前回は、成功体験を積み重ねることで、『傲慢』になり、失敗にいたる事例を紹介したがそれが理由のすべてではない。今回は逆のケース、『慢心』によって失敗する例を紹介する。

一時的にしろ、成功を手にする経営者は、基本的に真面目で汗水たらして働くことをいとわない。現場にも頻繁に顔を出し、顧客、従業員とのコミュニケーションも十二分にとれている。

ところが、事業が軌道に乗り出すと様変わりしてしまう経営者がいる。まず、お金に対する考え方が甘くなってくる。かつて、堀場製作所の堀場雅夫会長(日本におけるベンチャービジネスの旗手的存在)にインタビューしたときに、次のような話を聞いた。

「一度は成功した経営者の多くが次のステップで失敗するのは、資金面に問題があるように思う。それは、資金がタイトで苦労するということではなくて、資金に余裕ができすぎておかしくなるという意味からだ。仕事がうまくいくと思わぬお金が入ってくるようになる。銀行の融資も受けやすくなるし、株式の公開でもすればキャピタルゲインを手にすることもできる。創業の頃の、資金に苦労し、汗水たらして、自分の能力一杯のところで得たお金というのは大事に使いますが、逆に甘く入ってきたお金は使い方も甘くなってしまう」

結果として、経営全般に甘さが出てきて次のステップに進めない経営者が多いと堀場さんは指摘する。「ホリエモン」のお金の使い方なんかはその典型といってもいいだろう。

ヒット商品を手にした経営者も「慢心型」に陥るケースが多い。

どんな商品にも寿命の長さは別にして、間違いなく、『開拓』→『成長』→『成熟』→『衰退』という「製品サイクル」がある。

ところが、売れ筋商品を手にすると、需要を満たすことに追われ、次の商品開発にまで目が向かなくなってしまいがちだ。そんな状況の中でライバル企業が同種の改良された商品を手に新規参入を図るようになってくる。

結果、厳しい競争を強いられ、利益率が急速に落ち込んで経営危機に陥ってしまうのだ。
いま売れている商品は、やがて売れなくなる商品と考え、戦略的に次世代商品を開発し続けることのできる企業が失敗と無縁でいられるということだ。

いいときに慢心せずに次の手が打てる企業だけが持続的成長を手にすることができると考えたい。その証しとして紹介したいのが、コンピュータ制御の横編み機で世界シェア60%超を誇る島精機製作所の経営だ。

同社の飛躍のきっかけになったのは、1964年に開発した「全自動手袋編み機」だが、前年末には60万円の手形を落とせないような状況にまで追い込まれていた。たまたま100万円融資してくれた人があって、その恩に報いたいと一心不乱に開発したのが「全自動手袋自動編み機」だった。

同機の評価は高く、注文が殺到して危機を脱したのだが、今度は人手が足りない。高校の同級生に入社を要請しても反応がよくない。

「あの機械は線香花火のようなもので、ドカーンと当たっても、受注が一巡するとその先がない」といって、本人が了承しても周りが反対したという。

このとき同社の島正博社長は、「これはいいことを指摘してもらった」と考えて、資金的にも余裕のできた1965年に開発専門の会社を設立して、次世代商品の開発に計画的に取り組んできたのである。

全自動手袋編み機からコンピュータ制御の横編み機に展開、さらには1995年に無縫製でニット製品をあみあげる「ホールガーメント」を世に問い、盤石の態勢を作り上げたのだ。その島精機が、いまも満足することなく、機械を進化させ続けていることはいうまでもないだろう。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2008年1月10日 掲載]

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