Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

「失敗に学ぶ経営」…その1

成功は失敗の父、失敗は成功の母

ここ数年、日本では「失敗学」が話題になっている。アメリカには、失敗から学ぶことを目的としたフェイリア・マネジメントという言葉があると聞く。しかし、失敗に学ぶことの大切さは紀元前の中国でもすでに説かれている。『漢書』に「前車の覆るは後車の戒め」とある。覆った車の轍は後車の戒めになるとの教えだ。ところが、人間は同じ轍を踏んで失敗を繰り返してしまっている。なぜなのか。過去の経営上の失敗振り返ることで、そのわけに迫ってみたい。

20年近く前、天才企業家ともてはやされた二人がいる。ひとりは、アスキーの西和彦さんで、いまひとりは、ソフトバンクの孫正義さんだ。このふたり、経営者としては見事なまでに明暗が分かれてしまった。孫さんの今の活躍ぶりは周知の通りだが、西さんは経営者としては退場を余儀なくされてしまった。

西さんはなぜ躓いてしまったのか。その理由は、西さんの次の言葉に集約されている。

「お金と時間が無限にあるように思えた」

天才企業家と評価されるまでになった西さんのもとには、様々な案件が持ち込まれるばかりでなく、資金も集まってくる。必然的に、先のような思いが出てきたのだろう。西さんは、映画制作、半導体事業へと事業を拡大し、結果、1992年に経営難に陥り、最終的には経営者の座から降りざるをえなくなってしまったのだ。

同じタイプの経営者にハウステンボスの神近さん、リクルートの江副さん、ダイエーの中内さんがいる。

いずれも一世を風靡した経営者だが、最終的には失格の烙印を押されてしまった。なぜ彼らは失敗してしまったのだろうか。

推察するに、成功を重ねることで、知らず知らずに、自分は何でもできると思い込むようになった、からではないかと思える。

厳しいかもしれないが、成功を積み重ねるにつれて傲慢になり、覇道を歩むようになってしまったのだ。力に任せての経営には無理がある。無理は一時的に通用しても長続きするものではないということだ。

今は亡き、CSKの大川さんは、「西君はロマン派、孫君は算盤がたつ」と評価されたと聞く。経営者にとってロマンは大事なものだが、算盤がなければ経営は成り立たないと考えたい。

以上は、「成功が失敗の父」になった例だが、「失敗を成功の母」にするためには、どうしたらいいのだろうか。

「成功というものは、99%の失敗を土台にしている」

この言葉を残した本田宗一郎さんは、まさに、失敗に学ぶことで偉大な経営者になった人だ。

「失敗は将来の収穫の種」と言った本田さんが、何よりも大事にしたのが、失敗後の取り組みだ。失敗をそのまま放置しておいたのでは、成功は覚束ない。本田さんは、失敗した後に反省しろという。これは科学的に失敗の要因を分析しろ、という意味だ。反省後にまた失敗を恐れずにチャレンジさせる。また失敗するかもしれないが、そのときにはまた反省してチャレンジしろ、と本田さんはいう。

ところが、失敗を成功の母とできない経営者は、逆の態度をとってしまいがちだ。

一応は、本田さんと同様に、「失敗を恐れずにチャレンジしろ」とはいうのだが、失敗が発覚したら様変わりしてしまう。

反省もなにもなく、一喝してしまう。ひどくなると、降格だ、ボーナス減額だという。これでは、失敗が顕在化しないし、成功の母には永遠になれない。

日本の企業社会では、一度失敗すれば、二度と浮かび上がれないような風潮がいまだに見受けられるが残念でならない。本田さんタイプの経営者が増えることを心から願っている。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2007年12月13日 掲載]

ジャーナル最新のテーマ

今月のテーマ ものづくり PLMソリューションでグローバル時代を勝ち抜く 次世代の開発設計・製造環境の構築をご支援します 続きを読む


今月のアンケート 最終集計結果公開中 2008年8月26日集計 9割が「夏休みアリ」!皆さまの休暇の過ごし方を大公開! 気になる結果は?


お客様の声をお聞かせください

富士通ジャーナルに掲載している記事やコンテンツについてのご意見・ご感想を、ぜひお寄せください。

ご意見・ご感想フォーム いただいた、お客様の声


お寄せいただいたご意見・ご感想については、富士通からの回答をお約束するものではありません。ご了承ください。
なお、富士通からのご回答を必要とするお問い合わせについては、
富士通ジャーナルに関するお問い合わせをご利用ください。