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ポケットティッシュ生産量日本一の『イデシギョー』の経営に学ぶ

攻めの経営で勝ち残る

多くの中小企業は、同業の大手企業との厳しい競争を強いられている。「うちは規模が小さいから勝ち残れない」と嘆く経営者もいる。そんな経営者に紹介したいのが静岡県富士市にあるイデシギョーの経営だ。

豊富な水資源を持つ富士市は、伝統的に製紙業が盛んなところだった。ところが今は、地場の中小メーカーの3分の2が廃業を余儀なくされ、生き残った企業の多くも激しい価格競争の中で、まさに正念場を迎えていると聞く。そんな環境にありながら、果敢なチャレンジ精神で勝ち残ってきたのが、イデシギョーなのだ。

いまでは、年間450億円を売上げ、ポケットティッシュの生産量で日本一を誇るまでになったイデシギョーだが、井出純一会長が、事業に携わり始めた昭和30年代半ばの頃は家業そのもので、年商も500万円程度にすぎなかった。そんなイデシギョーが、地場の製紙業界の雄と評されるまでになれたのは、なぜなのか。理由はいくつもあるが、特筆しておきたいのは、同社ならではの積極的な設備投資だ。

厳しい価格競争を強いられている製紙業界で勝ち残るためには、最新の生産性の高い設備が不可欠になってくる。ところが多くの中小メーカーは、資金面の問題もあって、設備投資に積極的になれないでいる。しかし、イデシギョーでは、会社の小さな頃から積極的に設備投資を行ってきた。

「利益が出たら、ドンドン新しい機械を買いました。他の会社は、株を買ったり土地を買ったりしていましたが、うちは違います。株も土地も買わず、全部機械に投資してきました。利益を税金として支払うのなら、設備投資をしたほうがいいじゃないですか。半分は税金で設備投資できるようなものですから…。いっぺん守りに入って見たいと思わないでもありません。金利が上がると聞くと、そろそろ借り入れの返済に回した方がいいのかなとも考えますが、だめですね。戦争だって守りで勝つことはありませんから、攻めないとね」(井出純一会長)

イデシギョーでは、毎年10億円程度の設備投資を行っているが、毎年8億円から10億円程度の減価償却がある。それだけに、10億円の設備投資をしても借り入れが大きく増えるということはないのだ。

ただ、お金に物をいわせての設備投資だけでは、大手企業との競争に負けてしまう。イデシギョーの素晴らしさは、設備導入前後の取り組みにあるのだ。

「機械はお金を出せば買えますが、単純にメーカーが作った最新の設備すればいいというものではありません。創意工夫と徹底的に使いこなす現場の力が必要です。既存の機械を、うちの現場から技術や発想を出して、日本に一台しかない機械に仕上げてもらいます。メーカーがやれないと言ってもチャレンジさせます。そうするとできるんです。機械を変えないとつまらない。プラスアルファーをいくつ出せるかですよ。徹底的に納得しないと最終支払いはしませんが、メーカーも次の発注につながると考えて真剣に取り組んでくれます。問題は設備したものを社員がいかにして使いこなすかです。現場では、稼働率は一時間単位で管理して改善を加えているし、年間5千円でも一万円でもいいからコストをダウンさせられないかと考えています」

イデシギョーは、設備投資には積極的だが、社員は増やさない。ひたすら生産性を上げてコストを下げて価格面での競争力をつけてきたことで大企業との競争にも負けることはなかったのだ。製紙業界は、地場の中小企業と、王子製紙、日本製紙といった大手会社が、勝ち残りをかけて厳しい競争を展開している。そうした構図は、多くの業界で見られるが、イデシギョーの経営には、中小企業が大企業に負けないためのヒントがあると思えるのだがいかがなものか。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2007年3月8日 掲載]

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