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クロストレーニングのすすめ
目指すべきは、情報とマンパワーが分断されない組織作り
組織の大小を問わず、部門横断的な戦略を持てなかったことで、苦境に陥る企業が目立っている。どうすれば部門横断的な戦略を持つことができるのかを「クロス ファンクショナル チーム」と「クロストレーニング」をキーワードに解説してみたい。
日産自動車再生に大いに貢献したのが、「クロス ファンクショナル チーム」だという。カルロス・ゴーンさんが意識的に部門横断的な組織を組んで問題解決にあたったことが良かったとされているわけだが、なぜそのようなチームを作らざるを得なかったのか。それはひとえに、日産の各組織がバラバラに機能していたからにほかならない。当時の日産は、居酒屋で酒のつまみにでてくる『タコの足のぶつ切り』状態だったのだ。社内で情報が分断されていたばかりでなく、マンパワーも分断されていたのに違いない。
これは何も日産に限ったことではない。厳しい状況に陥った際のソニーも全く同じ状況だったとの指摘もあるし、中小企業にも同様の現象が見て取れる。なぜ、多くの日本の企業組織が『タコの足のぶつ切り』状態になってしまったのだろうか。誤解を恐れずにいえば、筆者は、「組織づくりと、組織ごとの業績評価を強く意識しすぎた結果」だと考えている。
組織が組織であるためには、規律とルールを定めた上で、各自の役割を明確にしておく必要がある。ここまではいいのだが、そこに個人別の成果主義、部門別の業績評価が持ちこまれるとどうなるのか。
社員が優先するのは、自分の業績に直結する仕事で、次に部門の仕事、次に会社の仕事となってしまいがちなのだ。経営者からすれば、一番優先すべきは会社全体の利益で、次が部門で、最後にくるのが個人の利益なのは当り前のことだが、成果主義がいきすぎると、往々にして、これが逆転してしまい、『タコの足のぶつ切り』状態になってしまうのだ。
筆者は、個人別の成果主義、部門別の業績評価を否定しているわけではない。どんな素晴らしい制度でも、行き過ぎると弊害がでてくることを指摘しておきたいのだ。従来の日本企業は、年功序列でやってきた。しかし、この制度もいいところもあれば悪いところもある。年功序列の弊害が目立ってきたので、成果主義、能力主義の登場となったのだが、これが行過ぎて『タコの足のぶつ切り』状態になったのではないかと、筆者は考えている。
それでは、どうすればいいのか。
ひとつは、「クロス ファンクショナル チーム」だが、これは既に起きた問題の解決には役立つだろうが、それだけでは十分ではない。何より大事なのは、普段からの教育、人材育成だ。
『タコの足のぶつ切り』にならないためには、従業員同士がお互いの仕事を良く理解しておく必要がある。それだけに、社員教育に際しては、「相手の立場にたって、普段からものを考える」くせをつけさせるようにしていかないといけない。例えば、工場の人は営業の人の立場にたって、営業の人は工場の人の立場に立って――といった具合にだ。
そうした視点から、お勧めしたいのが、「クロストレーニング」の導入だ。社員に専門分野以外の仕事を、教育の一環として体験させてみればいい。必然的に、自分の仕事以外に理解をしめすようになる。
筆者が興味を持ったのは、アメリカの「サウスウエスト航空」(SWA)で行われた、『私の靴で歩いて』と名づけられた活動だ。
SWAは、9、11テロの後も順調に業績を伸ばす超優良企業だが、同社は、従業員同士が仕事をサポートし合うことで経営効率を高めてきたといわれている。そんな社風を象徴するのが「私の靴で歩いて」運動だ。これは企業文化を構築し伝承する活動の一貫として行われたものだが、SWAの社員は、休日に他の部署を訪れて、少なくとも1日6時間は他人の仕事をサポートするように求められるという。実に社員の75%が、この活動に自主的に参加したと聞くが、SWAには、競合の厳しいところには、社員がボランティアで、週末を二回返上して、「手助けに行く」計画もあるという。日本では、労働基準法の関係で難しいかもしれないが、SWAの企業文化に学ぶところは多いと思う。
著者プロフィール
疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰- 日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp
[2006年4月26日 掲載]
- 第108回 「明るく楽しい会社」づくりで蘇えった関ヶ原製作所
- 第109回 クロストレーニングのすすめ
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