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「明るく楽しい会社」づくりで蘇えった関ヶ原製作所

「人間主義」と「経済合理性」を同時に実現

「業績は体質の結果である」。ヨーカ堂グループを率いる鈴木敏文さんの名言だ。まさにその通りなのだが、多くの企業は目先の利益を求めて戦略に走る。たしかに、戦略なき経営は有り得ないのだが、戦略がもたらすのは一時的な繁栄にすぎない。継続して企業が栄えるためには、鈴木さんが指摘するように、「組織の体質」そのものが良くなければならないのだ。まず、「良い体質、良き企業文化」を確立し、結果として好業績を手にした最たる事例として関ヶ原製作所を紹介したい。

関ヶ原製作所の矢橋昭三郎社長が理想とするのは、「人間主義に根ざした明るく楽しい会社」だというが、これは社員の願いでもあった。同社は、1985年のプラザ合意後の急速な円高のあおりをうけて、2期連続での赤字を余儀なくされた。そんな状況の中で社員の中から出てきたのは、次のような言葉だったと言う。

「利益は二の次でいいではないか、給料があがらないのなら、せめて、明るく楽しい会社にして欲しい。どんなことでも我慢するから、仲間から犠牲者を出すことはやめよう」

この言葉に勇気付けられた矢橋社長は、社員とともに、理想とする会社づくりにチャレンジすることになった。まず、社員と経営陣が徹底的に話し合い、意見をぶつけ合う中で、でてきたのは、関ヶ原製作所を、「楽しい会社」にするために何を成すべきかを、全員が主役となって考えようということだった。同社が、「ニューセキガハラ活動」と名づけた、企業活性化への取り組みは、次のようにしてすすめられた。

まずは、社員の中から選抜されたメンバーによって、『広報』『全社行事』『日常活動』『教育』の4つのワーキング・グループをつくることから、この活動はスタートをきった。メンバーは4グループ合わせて16名で、任期は1年(半年毎に半数を入れかえる)。このワーキング・グループが中心となって、社員手帳や社内報の発行、社内運動会や駅伝、マナーやモラルの向上運動が企画され実行に移されていった。

次に、終業時間後に経営トップと社員全員が語り合う「ニューセキガハラ懇話会」を定期的に開催し、そこで提起された問題を可能な限り経営課題としてとりあげ、文字通り、「全員が主役」の経営を具現化していったのである。

結果はどうだったのか。関ヶ原製作所ならではの企業文化が確立されていく過程で、業績そのものも伸び、88年度には黒字に転換、今期は年商130億円で営業利益21億円を見こめるまでになった。

『楽しい職場づくり』『人間主義』などという、書生っぽい考えでは、企業再生できない、好業績をあげられないとの指摘もあるだろう。しかし、関ヶ原製作所は、それを成し遂げてみせたのだ。

利益は『経済合理性』(関ヶ原製作所では『経営合理主義』と呼ぶ)が生み出してくれるものだ。ところが、『経営合理主義』と『人間主義』は、一般的には、相反する対極の概念と位置付けられている。この相反する概念を同時に実現させることは、困難だと思われる。ところが、関ヶ原製作所では、人間主義をベースに良き企業体質を作り上げ、結果として好業績を実現させたのだ。関ヶ原再生の過程を筆者なりに解説すると次のようになる。

楽しい職場を作るために何が必要なのかを考えると、イベントをただ楽しんでいるだけでいいのかとの思いが出て来るようになる。業績が伸びなければ会社は生き残ることができない。生き残るために、私たちは何を成すべきなのか、私たちに欠けているものはなになのか、じゃ自分たちは何を勉強すればいいのか、組織はどうあるべきなのか、技術に対する考えはどうあるべきなのか、社会とのかかわりはどうあるべきなのか――といった問題意識が自然と発生してくるのだ。

そうした問題意識を常に引き出し、社員全員が、その答えを出すことを積み重ねていく過程で、関ヶ原製作所では、人間主義と経営合理主義が、徐々に相容れるようになり、元気印企業になったと考えれば間違いないだろう。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2006年3月9日 掲載]

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