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『情報公開』でよみがえった本多電子

情報をお金に代えることで危機から脱出

経営とは、継続して栄える『継栄』でなければならない、と指摘した経営者がいるがまったく同感だ。一時的に繁栄を謳歌した企業が、あえなく衰退してしまう姿を、筆者はいやというほど見てきた。繁栄の後、危機的状況に陥った企業が、再びよみがえるケースは、数少ない。その数少ない企業のひとつが、今回紹介する本多電子だ。

いまから20数年前、筆者が経営にかかわる世界に足を踏み入れたころ、本多電子は、「トランジスタ型の小型レジャー用魚群探知機」が、アメリカで売れに売れて、異色の中小企業として、たびたびマスコミに取り上げられていた。

筆者には、当時のイメージが強く残っており、その後も順風満帆に歩んできたと思いこんでいたのだが、現実は違っていた。

最近、同社の本多洋介社長にインタビューする機会があったのだが、一時は危機的状況に陥っていたと聞かされた。

1987年10月19日のブラックマンデー以降、急速な円高の進行とアメリカの消費の落ちこみによって、当時売上の7割を占めていたアメリカへの輸出が半減したというのだ。

本多電子は、創業以来、『超音波』にかかる技術で商品を開発してきた会社だ。発信された超音波が、なんらかの物体にぶつかり、はね返ってきた際の状態を測定すると、調査対象の場所や距離・規模・形状などを知ることができる。この超音波の特性を活かしてつくられたのが、「魚群探知機」だった。この主力商品の魚群探知機が売れなくなったのだ。

まさに危機的状況に陥ったわけだが、いまは見事なまでによみがえっている。なにがそれを可能にしたのか。理由はいくつもあるが、特筆しておきたいのが本多電子ならではの『情報公開』だ。

「アメリカで魚群探知機が売れなくなって、考えたのは、超音波の分野で多角化をはかるということでした。しかし、全てを社内でこなそうとすれば、人もいるし、設備も必要になるのですが、それはできない状況でした。そこで、お金は出せませんから、情報を出す。『情報をお金に代えよう』という考え方が自然に出てきたのです。具体的には、本多電子は、技術開発に特化していこうということです。技術開発以外のところは、協力頂ける相手を探さないといけなくなってきます。本多電子がどういう技術を持っていて、それが相手先にどう役に立つのか。興味を持っていただくには、わが社の情報を公開する必要があるということです。そうした考えから、積極的に情報発信をするようにしてきたのです」(本多社長)

超音波には、無限ともいえる可能性があるが、異業種の技術者や異分野の研究者には知られていないことが多い。だからこそ、展示会や学会で、みずから情報を発信してその可能性を公開しようと考えたというのだ。

研究開発型の企業にとって、情報を公開することはリスクが大きいと思えるのだが、本多洋介社長の考えは違う。

「当然、特許はとって情報発信します。ただ特許は100%ではありませんし、稀にですがマネされることもあります。それでも、そのリスクよりもメリットのほうが大きいと考えています」

3年前には、8000万円を投じて東京ビッグサイトで展示会を開催しているし、いまも毎月のように500万円から1000万円をかけて、東京、大阪、海外で、情報を発信しているという。2004年9月期決算で年商46億円で、経常利益4億1千万円の会社としては、これだけの情報発信費用は過剰とも思える。しかし、これがあるからこそ、本多電子はよみがえるばかりでなく、さらに強くなったのも間違いのない事実なのだ。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2005年10月13日 掲載]

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