Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

継続して栄える組織はここが違う

『貞観政要』が説く、「守成」の難しさ

ワールドの創業者、畑崎広敏さんは、経営は継栄でなければならないという。まさにその通りだと思う。しかし、ダイエーを例にするまでもなく、これほど難しいこともない。ではどうすれば継続して栄える組織はできるのだろうか。

継続して栄えることの出来る組織にはいくつかの共通項があるが、その第一として挙げておきたいのは、「いいときに慢心しない」こと。逆にいえば、「いいときに慢心した」組織が、その後衰退してしまうのだ。

事業が軌道に乗るまでは、多くの経営者は、頭を下げることも厭わず、謙虚に人の意見も聞き、一生懸命仕事にも取組むものだ。問題は、一時的に成功を手にした後にやってくる。

そんな話は中国の古典にもみることができる。徳川家康が好んで読んだと言う『貞観政要』(中国、唐の太宗と家臣たちとの政治上の議論を集大成し、分類した書)に次のような記述がある。

「昔からの帝王をみると、困難なとき、危機のときには賢者を任用し部下の忠告も受け入れるものです。しかし、安楽な状態になると、『必ず寛怠を欲す』。すなわち、気がゆるんで楽をしたいと思うものです。安楽な状態に依りたのんでこの『寛怠を欲す』になりますと、直言がうるさくなりますので、臣下もついつい恐れて何も言わなくなります。そうなると、日に月に徐々にすべてが頽勢に向かっていきまして、ついに危亡に至ります。聖人の『安きに居りて危きを思う』理由はまさにこのためだと思います」(山本七平著『帝王学』)

これは天下を守る(守成)ことがなぜ難しいのかを、聞かれたときの魏徴の答えだが、企業経営にも相通ずるものがあると筆者は思う。

堀場製作所の創業者堀場雅夫さんの話も紹介しておこう。

創業のころの堀場さんは、銀行からお金を借りての経営がいやでいやでたまらなかった。銀行からの借入れがあれば、新しい投資の度にお伺いを立て、了解を得ないと実行に移せなかった。そこで、1日も早く無借金経営にしたいと考え、一生懸命に頑張り、10数年後には念願かなったのだが、その途端に業績が悪化したという。

「借入れがあったときは、新しい案件に投資するときには、銀行を説得しなければならないので一生懸命に考えたものです。それにリスクも考えて慎重に行動していました。ところが、無借金になりますと、自分の責任でやればいいのだから、『俺がいいと思えばいいんだ、俺がやりたいからやる』と、いままではやらなかったようなことにまで手を出すようになってしまっていたのです。結局、コスト意識が薄れて減収減益です」

堀場さんは、いち早くこのことに気がつき、悔い改められ、その後の業績は回復したと聞くが、多くの経営者は、リカバリーできずに衰退していってしまうのだ。

若き起業家が、一度は成功を手にしながら、その後敗北してしまうのも、同じような理由からだと堀場さんは指摘する。

運良く、上場でもできれば、キャピタルゲインを手にすることができる。上場までは資金調達に四苦八苦していたのが、思わぬ大金を手にするとおのずと甘えが出て来る。甘い資金が手に入ると、その使い方も甘くなってしまうと堀場さんは言うのだ。

企業経営では、ここでいいと思ったときから衰退が始まるのだ。「いいときに慢心せずに次なる手を打つ。悪いときに悲観しないでさらなる手を打つ」――これが継続して栄える道だと指摘しておきたい。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2005年7月27日 掲載]

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