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「表の非合理化、裏の効率化」で躍進する「たねや」の経営
接客力の強化とローコストオペレーションとの整合性
滋賀県近江八幡市に本社を構える「たねや」グループの躍進ぶりが目立つ。和菓子を製造販売する「たねや」とバームクーヘンを中心とする洋菓子を製造販売する「クラブハリエ」を、著名百貨店を中心に展開していて、年商は130億円を超えるまでになった。その成功の秘密を解き明かす。
「たねや」グループの経営のあり方は、実に示唆に富んでいるのだが、筆者がとりわけ興味を持ったのが、「表の非合理化、裏の効率化」という考えだ。
菓子づくりは、製造現場に負担のかかる仕事だ。できあがった商品は、見た目もきれいだし、食べても美味しい。とりわけ和菓子は、日本の伝統文化そのもので、「匠の技」が生かされる世界だと思われる。
しかし、製造現場は、そんな姿とはほど遠い。かつて、饅頭を自動的につくる包餡機を開発したレオン自動機の林虎彦社長から、こんな話を聞いたことを思い出す。
「お菓子屋さんの職人さんは、技術を持っているとはいっても、単純な生産労働です。私は、単純労働の反復は人間のすることでないと考えて、美味しい饅頭を自動的に製造する機械をつくろうと考えたのです」
そんなレオンの機械を日本でいち早く導入したのが、「たねや」グループの山本徳次社長だ。
山本社長は、「負担を全部現場に押付けることが気に入らない」との考えを持っている。それだけに、林社長とも、「よく、まんじゅう談義」をし、レオンの機械を導入して、工場の効率化に取組んだというのだ。
機械でおいしいお菓子が作れるのかと、筆者なんかは考えてしまうが、それは素人の思いにすぎないようだ。
山本社長は、「機械でやらないとできない美味しさもある」と前置きした上で、次のように続ける。
「うちの工場は、見ていただくと、『えっ』と驚かれるぐらい自動化がすすんでいます。昨年は、無菌工場を完成させましたが、ここの商品は、滅菌消毒をする必要がないから本当に美味しいですよ。美味しさを追求した結果が無菌工場だというわけです」
ただし、山本社長は、「菓子職人の手の技」を否定しているわけではない。それは、たねや自らが、「職業訓練学校」を設立して、菓子職人の育成に乗り出していることが証明している。職人にしかできない仕事は徹底して職人にまかせ、機械化で美味しさの追求できる商品は、機械化して効率化を図ろうとの考えだと理解したい。
山本社長の効率化追求は製造工程ばかりではない。お客様に見えないバックヤードの仕事、すべてにおいて、徹底して効率化に取組んでいる。コンピュータの導入も、昭和56年と早かった。平成6年には、全店との間で、パソコン・ネットワークを完成させ、平成13年からは、全店舗の売場の様子が、本社のパソコン画面にインターネットで送信されるようになっている。
いま経営の世界では、効率化、ローコストオペレーションは、当り前の取り組みになっている。それだけに、山本社長と同様の取り組みを行っている経営者はいるだろう。山本社長と、そうした経営者との違いは、その先にあるのだ。
一般的に経営者は、効率化を考える場合、全部門同一のレベルでと考えがちになる。しかし、山本社長は違う。「裏の効率化」を標榜する一方で、「表は非合理化」でいいという。筆者は、ここに山本社長の経営の真骨頂を見る思いがする。
「お客様のお相手をする表、店頭では、徹底的に非合理化でいいといっています。時間をかけて商品の説明をし、徹底的にサービスをして納得してお菓子を買っていただく。接客で手抜きをしていてはだめですよ」
「表の非合理化と裏の効率化」――これが、たねやに競争優位性をもたらせていると考えれば間違いない。
著者プロフィール
疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰- 日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp
[2005年4月22日 掲載]
- 第98回 組織で機能させる経営
- 第99回 「表の非合理化、裏の効率化」で躍進する「たねや」の経営
- 第100回 中小・中堅企業にこそ競争優位性はある
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