Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

人を活かす経営

馬渕モーター・馬渕隆一会長に学ぶ

超優良企業、マブチモーターの馬渕隆一会長に、久しぶりにお話を伺う機会があった。そのとき、開口一番にでたのが、「人を活かすことを考えないといけない」との言葉だった。その真意を馬渕会長の言葉を交えて解説する。

マブチは、創業以来、順調に業績を伸ばしてきた。2003年12月期の業績は、年商1057億円、経常利益256億円だというのだから、超優良企業といっていい。そのトップが、「人を活かす」ということについて反省しているというのだ。

マブチでは、早くから成果主義を導入し、人材育成にも熱心に取組んできた。その結果として、「人を活かしきれたか」というと、そうではなかったと馬渕会長は振りかえる。

「かつての私は、良心にだけ任せたら、世の中はうまくいかないのではないかと考えていました。だからこそ、成果主義を導入したわけです。しかし、成果主義だけで、本当に問題が解決するのかと考えた時に、むしろ、逆になるのではないかと、思えるようになってきたのです。

成果主義では、アウトプットができている人は評価され、できていない人は駄目だよとなってしまう。しかし、適材を適所に配属した上で評価しているのかどうかという問題があります。本人の適性を無視して仕事をさせて、駄目だ駄目だと低い評価で腐らせて、余計やる気を失わせているケースが多いのではないでしょうか。

ですから、これからの私は、マブチ社内で評価の低い人たちに直接話を聞いて、本当にその人の適性を見極めて、ジグソーパズルのように、ピタッと、適所にはめ込んでみることを仕事としたいのです。それが、その人を活かすということではないでしょうか」

馬渕会長は、こんな思いを打ち明けた後で、適材適所であっても問題があると指摘する。

「仮に適所にあっても、『あなたはなんの為に仕事をしているのか』と聞くと、『生活費を稼ぐ為』と答える人がいます。このレベルの人は、効率よく稼ぐことを考えて、『早く5時にならないかな』と思ってしまいます。こういう人は、仕事が楽しくないのですから、成長しません。確実に年と共に能力が落ちていくのです。それは、会社にとっても社会にとっても損失なのです。ですから、本人が必要とされていて、世の中の役にたてると――そういうところにまで考えが及ぶように、リードしてあげるということが、一番大事なことではないでしょうか。

山登りの嫌いな人に、30キロ、40キロの荷物を背負って山を登れといったら、文句ばかりをいって、おりて来たら、へとへとで死んだようになってしまう。ところが好きな人は、愚痴は一切こぼさないし、生き生きしています。やらされてか、自発的行動かで、物理的に消費するエネルギーは同じですが、結果は大きく変わるのです。

汗をいっぱいかくことがしんどいことなのか、心地よいことなのか、心地よいと感じるように導いた方がその人の為になるのです。これを企業が担わないで誰がやるんだということですよ」

最近は、成果主義を導入する企業が増える一方で、その弊害が指摘されている。企業経営において、成果主義が必要であることは論を待たない。やはり、成果を上げた人間はそれなりに評価されるべきだろう。

しかし、適材が適所に配属されない状況での成果主義は、「駄目な人間をつくるシステム」(馬渕会長)なのだと理解したい。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2005年2月8日 掲載]

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