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著名ジーンズメーカーから注文が殺到 - カイハラの強さの秘密
~国内生産にこだわりながら世界的企業に~
日本の製造業も捨てたものではない――こんな思いを持たせてくれるのが、今回紹介する「カイハラ」だ。カイハラは、ジーンズの素材であるデニムの専業メーカーとして、知る人ぞ知る存在なのだ。素材メーカーだけに、その名が広く膾炙しているわけではないが、その企業体質は素晴らしいというほかはない。なぜ、カイハラが厳しい繊維業界の中で勝ち残ることができたのか。本連載88回で登場願ったエフピコと同様に「提案力」をキーワードに、その答えを紹介する。
カイハラ、国内でのブルージーンズ向けのシェアは50%を誇り、輸出比率は3割を超えている。リーバイス、リー等々の著名ジーンズメーカーが軒並み顧客に名を連ね、あのユニクロも、ブルージーンズ用のデニムは、カイハラから調達している。カイハラが、何より素晴らしいのは、製造業、それも生産拠点の海外移転が進むばかりの繊維業界にありながら、国内(広島県北部に7工場)だけの生産にこだわり、いまの企業体質を築き上げたところにあるが、その原動力のひとつが「提案力」なのだ。
デニムは、縦糸、横糸の太さの組み合わせ、染めの具合によって、様々な特徴を持つ商品になる。カイハラでは、常時400アイテムの生地を定番化して供給できるようにしている。そんなカイハラが、年間、300から350もの新しい生地見本をつくって、ジーンズメーカーに提案しているというのだから驚く。従来の、生地屋は、アパレルメーカーの要望を聞いて、商品を作って納めるというスタイルだった。注文に応じるだけに、単純な素材供給者にすぎず、価格訴求を強いられるばかりの存在だった。ところが、カイハラは違う。自らの手で新しい生地見本を作って、ジーンズメーカーに提案しているというのだ。採用されるのは、1割前後で残りは日の目を見ないと聞くが、このカイハラならではの提案が、顧客であるジーンズメーカーから高く評価されているのである。
「デニムは、もともと流通が短絡化したビジネスなんです。我々がデニムを売り始めた頃から、アパレルさんやブランドを持つメーカーに、来春はどうですか、といった話をしていました。流通として商社を通すものもありますが、基本的には、新しい商品の企画を立てて、直接お話をするようにしています。特に最近は、単純に生地を提案するのではなく、洗濯機に石を入れて洗ったらどう変化するのか、といった具合に、消費者に渡った後のことまで考えて、売りこんでいくようにしています」(貝原潤司社長)
社長がいうように、デニムは、流通が短絡化していたこともあって、ジーンズメーカーにダイレクトに提案できるという環境にあったのだろう。しかし、それは同業者も同じことだ。ところが、ライバル企業の多くは、カイハラほどの提案はしていない。なぜ、カイハラは、提案力を強く発揮できるのだろうか。
その答えのひとつが、カイハラならではの営業のあり方なのだ。
カイハラでは、営業マンの果たす役割が実に大きい。昭和45年の入社以来、一貫して営業を担当してきた貝原良治会長は次のように説明する。
「当社の営業は、ルートセールスが中心ですから、一度お取引が始まりますと、あとは、市場動向をお知らせするとか、新しい提案をするといった具合に、カスタマーサービスのほうが多いのです。彼らは、カジュアルウエアーの流行の発信地である原宿を中心に、エンドユーザーの嗜好がどう変化しつつあるのかを調査して、そのデータをジーンズメーカーにレポートし、また、当社の生地見本づくりに活かしているのです」
誤解を恐れずにいえば、カイハラは一介の生地屋さんにすぎない。生産コストの高い日本国内では、生き残ることさえ難しい事業分野といってもいい。それでも、発注先にばかり目を向けず、エンドユーザーの動向を徹底的に分析して、先手先手で新しい提案をし続けていけば、勝ち残れることを、カイハラは証明して見せたのだ。
著者プロフィール
疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰- 日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp
[2004年 掲載]
- 第92回 ユニクロの復活劇に思う
- 第93回 著名ジーンズメーカーから注文が殺到 ― カイハラの強さの秘密
- 第94回 製造業の知恵を小売業に、小売業の知恵を製造業に
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