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ユニクロの復活劇に思う
~過去の成功体験にこだわらないユニクロの経営~
ユニクロが元気を取り戻してきた。ここ1,2年、既存店の売上げが二桁ベースで落ち、その経営に疑問符がつけられたが、ここにきて見事にリカバリーしつつある。なぜ、復活をとげることができたのか。それは柳井正会長の、状況を冷静に見極める目と、融通無碍ともいえる経営戦略があってのことなのだ。
柳井会長は、創業以来一貫して、組織の成長度合いに応じて経営のありようも変わるべきだと認識して、そのときどきに最適の手法を考えてユニクロをリードしてきた経営者だ。
過去、ユニクロは何度も壁にぶち当たっている。その都度、過去の成功体験を否定することで、壁を乗り越えてきた歴史を持っている。紙数に限りがあるので詳しくは書けないが、象徴的なことを紹介しておきたい。
1984年の一号店開業以来、順調に業績を伸ばしてきたユニクロは、97年の秋から既存店の売上げが落ち出した。売上げで1000億円前後の頃だ。1000億円まで、柳井社長は、トップダウンが一番効果的だと考えてユニクロをリードしてきた。従業員には、マニュアルを遵守することを徹底していた。97年、この経営スタイルに限界を感じた柳井社長は、躊躇することなく方向転換を図ったのだ。
97年当時の経営に危機意識を持った柳井社長は、マニュアルでの社員教育から、自分で考えて行動を起こし成果を上げられるプロフェッショナルな社員を育成する方向に転じ、一方で、7人の取締役のうち5人を入れ替えてしまったのだ。5人のうち4人が外部からのスカウトだが、当時その理由を聞かれて、柳井社長は次のように答えている。
「スカウトしたのは、いずれも全社的なものの考え方ができ、それを実行に移せる人たちです。うちで過去役員をやってきた人たちは、売上げ1000億円までだったからできたのです」
ちなみに、このスカウト組の一人が現社長の玉塚元一さんだ。
この経営者チームによって、急成長を遂げたユニクロだが、先にも書いたように、減速を余儀なくされた。この減速ぶりを見て、ユニクロが疑問視されたのだが、それはおかしいと筆者は思っている。なぜなら、急成長のとき、柳井さんは、「いまはブームで異常な状態、売上げが半分になっても利益の出せる体制」だと、冷静に判断していた姿を筆者は知っているからだ。
いずれにしても、いまユニクロが再び勢いを取り戻すことができたのは、過去の成功体験にとらわれない、ユニクロの経営スタイルゆえのことだと指摘しておきたい。
ユニクロの成功は、商品数の絞込み、単品大量販売がもたらしたといわれる。フリースを年間850万枚売ったという実績が物語るように、その指摘は正しい。フリースはターゲットを限定せずに販売したことで成功したともいわれる。商品数少なく、ターゲットを限定しない単品大量販売が、ユニクロの成功体験とすれば、今回の復活劇は、それにこだわらないことで成し遂げられたものだ。女性用下着、水着の販売などはその最たるものだろう。
ユニクロには、「スポクロ」「ファミクロ」という二業態の店舗を三ヶ月で撤退した歴史がある。最近も、野菜の販売から撤退した。そうした意味では、成功後の失敗を余儀なくされているのだが、その後の対応が見事だった。
柳井さんは、これまでの経験から、「事業は大体失敗する。それを前提に改善する」という経営哲学を持っているだけに、無謀なチャレンジをすることはない。過去の失敗も屋台骨を揺るがすほどのものではなかった。計画どおりに進めればそれでよし。壁にぶち当たれば撤退もするし、仕組みを変えて再度のチャレンジを試みる。ここにユニクロの真骨頂がある。
多くの経営者は、一度身につけた経営スタイル、それも一度は成功したやり方を変えたがらないものだが、それでは、継続して栄えることはできない。かの織田信長は、「生涯、同じ戦法は二度と使っていない」というではないか。
著者プロフィール
疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰- 日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp
[2004年8月1日 掲載]
- 第91回 価格政策の見直しが元気印企業への道
- 第92回 ユニクロの復活劇に思う
- 第93回 著名ジーンズメーカーから注文が殺到 ― カイハラの強さの秘密
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