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BSE騒動にも負けない松屋フーズの元気な経営

~三ケ月にひとつの新メニュー開発で顧客の支持を得る~

昨年、アメリカで発生したBSE(牛海綿状脳症)の影響を受けて牛丼業界が苦境に陥っている。業界の雄である吉野家、松屋フーズでは、アメリカからの牛肉が輸入禁止となって、一部店舗を除いてメニューから牛丼が消えてしまった。吉野家の苦悩ぶりはご承知の通りだが、意外や意外、松屋フーズはBSE騒動の後も元気なのだ。その理由を、同社の瓦葺利夫社長の声を交えながら解明する。

若干のずれはあるが、松屋フーズ、吉野家ともに、二月中旬から牛丼(松屋は牛めしと呼ぶ)を販売できなくなった。当然、悪影響はでているが、その度合いが、吉野家と松屋フーズでは違う。吉野家は二桁の落ち込みだが、松屋フーズは、「多少影響が出ている」程度だという。なぜ松屋フーズは、BSEの影響を大きく受けていないのか。

松屋フーズと吉野家の根本的な違いは、メニュー構成にある。牛丼一筋の吉野家に対して、松屋フーズは、「牛めし」「定食」「カレー」と三本柱で構成されているのだが、この違いは、実質的一号店(昭和43年7月)となった江古田の立地がもたらしたものなのだ。

「あのころは、吉野家さんも1軒しかなかったのですが、あそこの店と私どもの江古田の店は、どう見ても同じマーケットとは思えなかったのです。江古田は、昼間は一次的に学生で込み合っても、そのあとはもぬけの殻のような状態でした。しかし、あのへんはベッドタウンですから、夜は独身のサラリーマン戻ってきます。この人たちを相手に定食とカレーを出すことを考えたのです」(松屋フーズ・瓦葺利夫社長)

現在、松屋フーズは、全国で約600の店舗を擁し、年商約550億円を上げるまでに成長したが、その強さの秘密のひとつは、三本柱のメニューを持ち得たところにあると考えて間違いない。ちなみに、アメリカのBSE問題発生以前、松屋フーズでは売上げの50%程度を牛めしが占めている。とすると、吉野家ほどではないにしても松屋フーズもダメージを受けそうなものだが、その影響が軽微なのは、同社ならではの、絶え間ない商品開発へのチャレンジにある。

いま牛丼業界では、「豚めし・豚丼」が主力メニューになりつつあるが、その先鞭をつけたのが松屋フーズであり、同社が「豚めし」を完成させたのは、くしくもBSE問題が発覚した日だったのだ。ということは、BSEに関係なく、「豚めし」の開発は進んでいたのだが、ここに松屋フーズの真骨頂があるのだ。

瓦葺社長の考えを紹介しよう。

「定食なんかはとくにそうですが、出るメニューと出ないメニューがでてきます。出ない商品は、食材が在庫になりますから鮮度の問題が出てきて、ますます駄目になってしまいます。ですから、出ない商品を切って、新しい商品を開発してメニューに入れていく必要があります。それと、その時点で出ている商品も、より価値観を上げるためにブラッシュアップしていかないといけないのです」

そうした考えを持つ瓦葺社長は、本社内に商品開発室を設け、自らが中心となって、三ヶ月間に最低ひとつは新しいメニューを開発するようにしているという。松屋フーズのそうした姿勢を知る消費者は、BSE問題に関係なく、同社の「豚めし」を受け入れてくれる。結果として、BSEの影響が軽微ですんでいるのだ。

牛丼一筋の吉野家とは違って、三本柱で成長してきた松屋フーズが、「牛めし」一筋に移行してもおかしくない出来事があった。それは牛肉の自由化だ。吉野家は、自由化後、さらに「牛丼一筋」で多店舗化を図っていったのだが、松屋フーズはかたくなに三本柱を維持してきた。その理由を瓦葺社長は次ぎのように説明する。

「当時、すでに牛丼といえば吉野家というブランドイメージができていました。そんな状況の中で、『牛めし』に特化してもいい結果はでないのではないか、慣れている部分でマーケットに訴えていってほうがいいと考えたのです」

吉野家と違ったブランドイメージを持ち得たことで、松屋はBSE騒動にも負けない強い体質を持ち得たのだ。

著者プロフィール

疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰
日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp

[2004年5月17日 掲載]

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