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月次決算のスピードアップが強い会社をつくる
~ウォルマートよりも本社経費率が低い「サンエー」の経営~
本連載でも何回か紹介した沖縄の総合スーパー「サンエー」は、いまなお好調な業績を続けている。2003年8月中間決算は売上553億円で経常利益37億円と、総合スーパーとしては群を抜いて利益率が高い。なぜ、サンエーはこれほどの高収益を上げられるのか。サンエーの「数値重視の経営」を紹介することでその秘密に迫りたい。
「経営は数値に始まり数値に終わる」というのが、創業者の折田喜作さんから最初に教えられたことだと、後継社長の上地哲誠さんはいう。
「入社間もない頃に、毎日、仕入れと経費と売上だけは、ちゃんとノートにつけろと教えられました。仕入れプラス経費が売上より少なかったら必ず利益が出るのです。単純ですが、逆だと赤字になるということです。教えられた通りに月々の数字をグラフでつけていきますと、難しい経理でいろいろやるよりも、最終益がいくら出るのかがはっきりと分かるようになってくるのです」
先代社長は、このような単純なところからなじませて、仕入れた商品が在庫として残るとどうなるのか、損益分岐点とは等々、知っておくべき数値を理解させていったと聞く。
この「数値重視の経営」を象徴するのが、月次決算の早さだ。10年も前から、サンエーでは翌月2日には月次決算が出てくるようになっている。先代社長が、何よりこだわったのが、月次決算のスピードだった。ここ10数年、変化のスピードは速くなるばかりで、売れ筋商品の寿命は短くなるばかりだ。変化の実態を、客観的に見せるのが月次決算だとすると、経営者としては、1日も早く見たいと願うのは当り前だろう。ところが、10数年前は、経理部に正社員が20人いて、かかりきりでも翌月15日にしか月次決算は出てこなかった。
先代社長から、1日も早く月次決算を出すことを使命として課せられたのが、いま専務取締役を務める諸見明良さんだった。
「10店舗のころでしたが、10億円近くの情報化投資をして、1日でも早く月次を出せと指示されました。当時は、在庫を各店舗でチェックして、数字を経理部に挙げてきます。これを手作業で集計していたのですが、コンピュータ化してからは様変わりしました。いまは翌月2日には出てきますが、かかっている要員は正社員3名にパート6名です。当時に比べて売上は数倍にはなっていて、要因は減っているのですから、経営効率は本当によくなりました。ローコストオペレーションで知られるウォルマートの売上に占める本社経費は2%だと聞きますが、当社のそれは1.9%です。それと情報化によるシステム化を進めた結果、各店舗に事務職員は基本的にいなくなりました」
ちなみに、日本の流通企業の本社経費は3%を超えていると聞く。サンエーの高収益の原動力になっているのが、経理部に象徴される「小さな本社」だと考えれば間違いない。
筆者の知る他の流通企業の月次決算は、早くても翌月5日といったところだ。サンエーの翌月2日は、群を抜いて早いだけに、本土の同業者からの視察も結構多いと聞くが、諸見専務には、月次決算の早さを自慢する風はない。
「経費処理に対する考えでいくらでも月次は早く出せますし、当社の会計システムはどこででもやっていることで、ビックリすることではないと思います」
たしかに、その通りなのだろう。諸見専務は、その後の言葉は続けなかったが、筆者が推察するに、「サンエーのよさは、月次決算の早さを、経営に生かしているところにある」といいたかったのではないかと思う。
サンエーでは、翌月2日に出た月次決算をもとに、3日の午前中に各部門毎に分析会議を行って対応策を打ち出し、午後には経営幹部が集まって全社方針を決め、4日の早朝には、各店舗に散らばっている店長、部門長等々を集めて店長会議を行って、意志統一を図っている。
ここにサンエーの強さの本当の秘密があるのだ。いまは本当に消費者の気持ちは移ろいやすい。あっという間に嗜好は変わってしまう。消費者のニーズの変化の兆しを如実に見せてくれるのが、月次決算に出てくるデータなのだ。翌月15日に出てきた月次を参考に手を打っても、それは後手に回るだけのこと。スピーディーな月次決算が、サンエーを支えているとご理解いただきたい。
著者プロフィール
疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰- 日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp
[2004年2月25日 掲載]
- 第86回 組織を元気にするための処方箋
- 第87回 月次決算のスピードアップが強い会社をつくる
- 第88回 「提案力の強さ」が元気企業をつくる
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