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「右手に感性、左手にそろばん」で、ファッションビジネスの雄に -その1
~在庫に厳しい目を向けて好業績企業に~
1980年代、DCブランドを展開して急成長を遂げた企業が何社もあった。ところが、その多くはいまはない。一世を風靡した「ヴァン」も、そのブランド名は復活しているが、企業は破綻している。そんな中で、サンエー・インターナショナルは、バブル崩壊以後も変わらず元気である。その成功の秘密はどこにあるのか。
ファッション業界を目指す若者たちが学ぶ専門学校の卒業予定者を対象とした「就職希望の企業」調査で、2002、2003年と連続して一位に選ばれたのが、「サンエー・インターナショナル」だ。
サンエーの2002年8月期の連結ベースでの業績は、売上高767億円で経常利益は52億円強だった。その企業規模や好業績、さらにはファッションスクール生の間での高い人気の割には、同社の認知度は高いとはいいがたい。読者の中にも、「サンエー・インターナショナル」と聞いて、具体的なイメージを持てる人は多くはいないはずだ。
しかし、同社が展開する、VIVAYOU、BOSCH、Pinky&Dianne、Callawayといったブランド名は一度ならず耳にされているに違いない。現在、24のブランドを持ち、全国で800店舗近くを展開し、変化の激しいファッションビジネス業界で、トップクラスの好業績を誇っている。同社は、知る人ぞ知る優良企業なのだ。何が成長の原動力になっているのかを、三宅正彦社長に聞くと次の答えが返ってきた。
「一番大きいのは、『右手に感性、左手にそろばん』という考えから、管理会計を取り入れたことではないでしょうか。1997年に、DCブランドのVIVAYOUを投入して以降、次々にブランドをつくり、直営店も出して順調に売れているのに、締めてみると利益が出てこないのです。当時は、服飾が好きな連中が入ってきて、みんな独立独歩、好き放題やっていたのが現実で、年商は80億円ぐらいありましたが、全員数字なんてわからないんですよ。そこで、81年だったと思いますが、当時社長だった兄が、『我々も管理会計や計数管理を勉強しようよ、企業になろうよ』といって、あるコンサルタントを連れてきたのです。83年までの3年間、全社員で一生懸命勉強会をやりましたよ。この時期に徹底して、そろばんの部分を勉強して、全体のレベルアップをはかって、家業から企業になったのが大きかった。管理会計をベースにした経営に移行することが出来たのが、生き残ることができた大きな理由のひとつではないでしょうか。ただ、毎日赤いジャケットを着て出社してくるような感性人間に、そろばんの勉強をさせるのは大変でしたよ」
1980年代のDCブランド全盛期に台頭した企業は、デザイナーが経営者というケースが多かった。デザイナーは、どちらかといえば「両手に感性」といった人間だ。こうしたタイプは、右肩上がりのいけいけどんどんの時代には、デザイナーの能力で会社をのばすことができる。しかし、組織が大きくなり、また環境が厳しくなると経営者としての能力の方が求められるようになってくる。そろばんにうといデザイナーが経営する企業が衰退し、「右手に感性、左手にそろばん」を持ったサンエー・インターナショナルが、長引く不況をものともせずに勝ち残ってこられたということだ。
81年からの3年間で管理会計を勉強し、84年から本格的に導入した結果、成長のスピードは上がったと聞く。なにがよかったのか。
ひとつは、数字が唯一のルールになり、事業部間の競争心がついたことにより、それぞれの事業が活性化したこと、ふたつめは、在庫に厳しい目を向けるようになったことだと、三宅社長はいう。
「たしか、1978年だったと思うのですが、『ヴァン』が倒産したんですよ。倒産の理由は、労働問題と在庫の多さだというんです。そのときに在庫を持っちゃだめだと、つくづく思いました」
そうした思いを持ちながらも、サンエー・インターナショナルでは、なかなか思いきっての在庫処分はできないでいた。それを管理会計の導入とともに、システム化していったのだ。在庫は「罪の子」と書くと聞かされたことがある。だれもが在庫は持ち越したくないのだが、思いきって見きれないのが現実だ。それをシステム化して処分してしまう。「商品が常に新鮮」――ここにサンエー・インターナショナルの強さの秘密がある。(この項続く)
著者プロフィール
疋田 文明(ひきた ふみあき)
有限会社 ABO
経営コンサルタント・元気塾主宰- 日本交通公社(JTB)勤務後、中小企業経営者を対象とした各種セミナーの企画・運営会社等々を経て、1979年に竹村健一未来経営研究会を企画設立し事務局長に就任。1986年に竹村健一氏のもとから独立。現在、フリーランスのライターとして活躍中。
http://www.hikita10.jp
[2003年10月17日 掲載]
- 第83回 「本業を続けるな、本業から離れるな、中身を変えていけ」で様変わり
- 第84回 「右手に感性、左手にそろばん」で、ファッションビジネスの雄に-その1
- 第85回 「右手に感性、左手にそろばん」で、ファッションビジネスの雄に-その2
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